トヨタ・ブレイドのライバル車はコレ【ライバル車はコレ】
団塊世代を狙うクルマ対決 2007.03.29 試乗記 トヨタ・ブレイドのライバル車はコレコンパクトボディに2.4リッターエンジンを積んだ、豪華装備の「トヨタ・ブレイド」。団塊世代をターゲットにした“大人ハッチ”のライバル車とは。
トヨタ・ブレイド(2.4リッター/224万7000円から277万2000円)
■“格”が違うハッチバック
トヨタの最新欧州戦略車でもあるオーリスをベースに、「より大排気量のエンジン」と「より豪華な装備」を惜しげもなく投入し、2BOXボディの持ち主でありながら「トヨタ・クラウン」や「トヨタ・マークII(現マークX)」クラスからのダウンサイズ派の団塊世代ユーザーにも訴求しようとするニューモデル――。
と、こんな風に紹介すると開発陣の顔が思わず曇ってしまう姿が想像できるもの。が、実際“ありてい”に表現すればこんな説明も決して的外れとは言えないのが、2006年12月に発売のブランニューモデル「ブレイド」だ。
基本的には同ボディのオーリスが、1.5もしくは1.8リッターエンジンを搭載するのに対して、こちらは同じ4気筒ユニットながら2.4リッターを搭載して“格”の違いをアピール。
どうしても「大きなヴィッツ」に見えてしまうオーリスに対し、派手なグリルやフェンダー上部にまで回り込んだヘッドライトなどで外装面を差別化し、インテリアでも基本デザインはオーリス同様ながら、ダッシュボード前面やメーターフード、ドアトリムなどにスエード調表皮を貼り込むなどで、上級感を強調する。
「小ぶりなボディに大きなエンジン」を詰め込んだので、加速能力の高さはいわずもがな。乗り心地はややかためだが、リアにウィッシュボーン式サスを奢ったそのフットワークの能力には侮れないものがある。
【ライバル車 その1】トヨタ・マークX(2.5リッター/247万8000円から341万2500円)
■デザインで勝負
ブレイドの上級グレード「G」のFF仕様車の価格は250万円強。この価格では、さすがにクラウンには手が届かないものの、マークXの最廉価バージョンである「250G Fパッケージ」には価格がラップすることになる。
クルマの価値はサイズでは決まらない、と、頭では理解をしていても、マークXの全長がブレイドよりも50cm近くも大きいとなると「やはりこちらの方が立派に見える……」と実感。思わずこちらへとなびきそうになる御仁は、現実にすくなくないかも知れない。
そもそも、“ヨーロッパでの大衆”を狙ったオーリスをベースに、豪華な化粧を施したのがブレイドである。一方、もともと「日本市場で立派に見える」ことを念頭にデザインされたのがマークXでもあるのだから、そうした感覚で見れば、結果、顧客がこちらへと流れてくれるのはある面「狙い通り」でもあるわけなのだが……。
と、一見ブレイドよりも“格上”と見られるマークXのベーシックグレードではあるが、この価格帯のモデルとなると上級仕様に対して走りの機能面で劣る部分はなくても、やはり装備面ではちょっと寂しい。
たとえば、標準状態ではラジオも装着されず、ホイールもスチール製+樹脂キャップという情けなさ。そんな状態のマークXにラップをさせてくるとは、“同胞”でありながらもブレイドの価格設定はなかなか巧みだ。
【ライバル車 その2】ホンダ・クロスロード(2リッター/222万6000円から291万9000円)
■ブレイドの充実装備には及ばず
250万円という予算で辺りをグルリと見まわすと、「こんなのも買えるのか」とフと目に留まることになるのが、ホンダ発の「クロスロード」。2リッターというエンジン排気量はブレイドのそれよりも随分小さいものの、「そもそもの欧州戦略車を日本市場向けに仕立て直した」ブレイドに較べると、あくまで基本から日本専用車として開発しているところが、こちらの決定的な強みになりそう。
実際、奇しくも全長×全幅サイズはブレイドと殆ど変わらない。しかし、すっきりした視界感や取り回しのしやすさでは「こちらが上」と感じる人が多いはず。
これまでミニバンに慣れ親しんできながら、「もう子供も家を出ていったしサードシートは必要ないか」と、1度はそう割り切った人も、いざというシーンを考えたら、とあくまで“緊急用サイズ”ではあるこのクルマのサードシートの存在に、再度魅力を覚える可能性もあるだろう。
250万円でお釣りがくるFF仕様の最上級グレード「20Xi」であれば、全列をカバーするサイド・カーテンバッグやキーレス・エントリーなど装備も充実。ただし、惜しむらくはESC(ホンダ名“VSA”)が4WD仕様にしか設定されていない事。この点では全仕様がそれ(トヨタ名“VSC”)を標準装備とするブレイドに明確に軍配が上がる。
(文=河村康彦/写真=広報写真)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。