トヨタ・ブレイドマスターG(FF/6AT) vs マツダ・スピードアクセラ(FF/6MT)【短評(後編)】
ブレてるぞ!(後編) 2007.09.19 試乗記 トヨタ・ブレイドマスターG(FF/6AT)/マツダ・スピードアクセラ(FF/6MT)……356万8950円/285万4864円
3.5リッターモデルの「トヨタ・ブレイドマスター」に試乗。好感が持てる乗り心地を実感したリポーターだったが……。
隅々まで「スポーティ」
「ブレイドマスター」が良くできたプロダクトであることは理解できるものの、何を訴えたいのかいまいちわからないのだった。それは、狙いがはっきりしている(しすぎている?)「マツダスピード・アクセラ」に乗って試乗会に出掛けたからだろう。このクルマ、エクステリアからインテリア、そしてエンジンルームから足まわりにいたるまで、いたる所に「スポーティ」と大書してあるかのようなわかりやすさを持っている。
室内には少しくぐもった重低音の排気音が満ち、ずっしり手応えのあるステアリングホイールを握り、がっちり重いクラッチを踏み込んでギアを1速に入れる。そうするともう、走り出す前なのに「おいらヤル気だぜ」というムードがびんびん伝わってくる。走る前から主張する、ってことはつまり、それだけ主張したいことが多いことの現れだ。
すぐ慣れるけれど最初はちょっとミートポイントがつかみにくいクラッチを慎重に操作してスタート、エンジンは意外と温和な性格で、乗り手を油断させる。ところがどっこい、3500rpmを超えるとターボユニット特有の前方に吸い込まれるワープ感覚が襲う。ヘビーウェットの路面でも、シャシーは2.3リッター直4ターボが発生する最高出力264psと最大トルク38.7kgmを見事に使いこなし、フル加速してもDSC(ダイナミック・スタビリティ・コントロール)が出動することもない。
「料金所からの加速で、回転を上げてドンとクラッチを繋いだらホイールスピンするばかりで前に進みませんでした」と、同行したNAVI編集部の吉岡卓朗記者は口をとんがらせるが、よい子のみなさんはそういうことをしちゃいけません。
市街地、高速道路を問わず、乗り心地は基本的にハードで、特に路面がシワシワになった山道なんかの乗り心地はオジサンには結構ツライ。だけど、山道はおろか、街角でくるっと曲がるときでも軽快で面白い。面白いけどツライ、だからオモツライ……、ってどこかで聞いたようなセリフ。それはさておき、このクルマは乗っている人を楽しませたいんだな、ということがよーくわかるのだった。
軸はブレていないか
「ブレイドマスター」と「マツダスピード・アクセラ」この2台の高出力エンジン搭載のFFハッチバックをかわりばんこに乗っていると、ガラにもなく「クルマってなんだろ?」というスケールのデカいことを考えてしまうのだった。
万人にお勧めできるのは、間違いなくブレイドマスターでしょう。あんまり付き合いの深くないお隣さんに奨めてもたぶん大丈夫。いっぽうマツダスピード・アクセラをよく知らないお隣さんに奨めようものなら、乗り心地は悪いわうるさいわ、挙げ句に下取りが安いわでご近所の関係が悪くなる可能性がある。
だけど、運転が好きな人にだったら胸を張ってお奨めできる。胸のすくような加速感が味わえるわタバコ屋まで行くだけでドライブの実感が味わえるわ、しかもマニュアルトランスミッションのFFターボなんて稀少だ。下取りのことなんて考えずに、朽ち果てるまで乗り続ければいい。
てなことを考えた後、もういっかいブレイドマスターに乗る。ブレイドマスターはやっぱり静かでしなやかで、大人向けの高級ハッチ、小さい高級車ってコンセプトは絶対にアリなんだと思う。そのいっぽうで、内外装が大人のムードをブチ壊している。「オーリス」と同じコンポーネンツを使い回すというあたりで、「小さな高級車」的コンセプトが徹底されていない。「若作りをしているお年寄り」のようでもあり、「老けた若者」のようでもある。
いっぽう、マツダスピード・アクセラは「ホットハッチ」を貫いている。軸にブレがない。ブレイドマスターには、「ブレてるぞ、マスター」と声をかけてやりたい。
(文=サトー タケシ/写真=市 建治、マツダ)

サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
-
スズキ・エブリイJリミテッド(MR/CVT)【試乗記】 2025.10.18 「スズキ・エブリイ」にアウトドアテイストをグッと高めた特別仕様車「Jリミテッド」が登場。ボディーカラーとデカールで“フツーの軽バン”ではないことは伝わると思うが、果たしてその内部はどうなっているのだろうか。400km余りをドライブした印象をお届けする。
-
ホンダN-ONE e:L(FWD)【試乗記】 2025.10.17 「N-VAN e:」に続き登場したホンダのフル電動軽自動車「N-ONE e:」。ガソリン車の「N-ONE」をベースにしつつも電気自動車ならではのクリーンなイメージを強調した内外装や、ライバルをしのぐ295kmの一充電走行距離が特徴だ。その走りやいかに。
-
スバル・ソルテラET-HS プロトタイプ(4WD)/ソルテラET-SS プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2025.10.15 スバルとトヨタの協業によって生まれた電気自動車「ソルテラ」と「bZ4X」が、デビューから3年を機に大幅改良。スバル版であるソルテラに試乗し、パワーにドライバビリティー、快適性……と、全方位的に進化したという走りを確かめた。
-
トヨタ・スープラRZ(FR/6MT)【試乗記】 2025.10.14 2019年の熱狂がつい先日のことのようだが、5代目「トヨタ・スープラ」が間もなく生産終了を迎える。寂しさはあるものの、最後の最後まできっちり改良の手を入れ、“完成形”に仕上げて送り出すのが今のトヨタらしいところだ。「RZ」の6段MTモデルを試す。
-
BMW R1300GS(6MT)/F900GS(6MT)【試乗記】 2025.10.13 BMWが擁するビッグオフローダー「R1300GS」と「F900GS」に、本領であるオフロードコースで試乗。豪快なジャンプを繰り返し、テールスライドで土ぼこりを巻き上げ、大型アドベンチャーバイクのパイオニアである、BMWの本気に感じ入った。
-
NEW
トヨタ・カローラ クロスGRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】
2025.10.21試乗記「トヨタ・カローラ クロス」のマイナーチェンジに合わせて追加設定された、初のスポーティーグレード「GRスポーツ」に試乗。排気量をアップしたハイブリッドパワートレインや強化されたボディー、そして専用セッティングのリアサスが織りなす走りの印象を報告する。 -
NEW
SUVやミニバンに備わるリアワイパーがセダンに少ないのはなぜ?
2025.10.21あの多田哲哉のクルマQ&ASUVやミニバンではリアウィンドウにワイパーが装着されているのが一般的なのに、セダンでの装着例は非常に少ない。その理由は? トヨタでさまざまな車両を開発してきた多田哲哉さんに聞いた。 -
NEW
2025-2026 Winter webCGタイヤセレクション
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>2025-2026 Winterシーズンに注目のタイヤをwebCGが独自にリポート。一年を通して履き替えいらずのオールシーズンタイヤか、それともスノー/アイス性能に磨きをかけ、より進化したスタッドレスタイヤか。最新ラインナップを詳しく紹介する。 -
NEW
進化したオールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2」の走りを体感
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>欧州・北米に続き、ネクセンの最新オールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2(エヌブルー4シーズン2)」が日本にも上陸。進化したその性能は、いかなるものなのか。「ルノー・カングー」に装着したオーナーのロングドライブに同行し、リアルな評価を聞いた。 -
NEW
ウインターライフが変わる・広がる ダンロップ「シンクロウェザー」の真価
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>あらゆる路面にシンクロし、四季を通して高い性能を発揮する、ダンロップのオールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」。そのウインター性能はどれほどのものか? 横浜、河口湖、八ヶ岳の3拠点生活を送る自動車ヘビーユーザーが、冬の八ヶ岳でその真価に触れた。 -
第321回:私の名前を覚えていますか
2025.10.20カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。24年ぶりに復活したホンダの新型「プレリュード」がリバイバルヒットを飛ばすなか、その陰でひっそりと消えていく2ドアクーペがある。今回はスペシャリティークーペについて、カーマニア的に考察した。