第312回:新型「ポルシェ911ターボ」雑感
サルでも乗れるポルシェターボ!? なんてね
2007.03.15
小沢コージの勢いまかせ!
第312回:新型「ポルシェ911ターボ」雑感サルでも乗れるポルシェターボ!? なんてね
量産ポルシェ最速はAT車!
いやー、ほとんどウソだったけど携帯ゼロ円って日がくるわ、トヨタが世界イチに限りなく近づくわ、小沢コージが自動車マスコミ業界で大活躍するわ!? などなどつくづく時代も変わったなぁと思いました。今や時代はなんでもアリ。昔のジョーシキなんて通じなくなってんのよ。
というのも昨年登場したばかりのポルシェの997型「911ターボ」。1980年代の、硬派で楽しかった930時代や、最近のナンパで快適な996時代とも違い“ナンパかつ楽しい”超いいとこ取りマシンになってる。こんな日がくるだなんて10年前は思いもしなかったぜ……。
一番驚いたのはギアボックスだよね。知ってる人も多いと思うが、6段MTと5段AT(ティプトロニックS)があって、なんとATのほうが速い! 0−100km/h加速はMTが3.9秒、ATが3.7秒と実に0.2秒も速いのだ!
コイツは当然スーパースポーツの「カレラGT」を除く量産ポルシェ最速なわけだから、ある意味、最新ポルシェのシンボルであり、最高到達点でもある。それがAT車だなんてスーパーカー世代にとってはマジ感慨無量。
ビンビンのステアリングフィール
前もいったけど、昔の911はあまりのステアリングキックバックの激しさに「指を折った」って話があったくらいだし、中でもターボは硬派なイメージを背負わされてたんだから、ギアボックスにしろ古めかしい4段MTでガンコ一徹。
ところがどっこい最新ターボはATが選べる上、乗り心地もいい。足まわりはそれなりに締め上げられてるんだけど、ボディ剛性がメチャクチャ高いのと、サスペンションがよく練り上げられてることもあって、ほぼ不快感なし。高速では多少上下に揺さぶられる感があるけど、路面の継ぎ目の衝撃は必要以上に伝わってこないし、低速で出っ張ったマンホールを超える時なんかでも衝撃に身を構える必要がない。サルーン的とまではいわないまでも、とにかくカンタン&快適、サイコーのクルマなのよ。
さらに驚いたのはステアリングフィールよね。確かに996型ターボは、速いは速かった。でも非常にサルーン的で、正直フィールはヌルかったわけ。舵が効くことは効くけど、いまどのくらい効いているのか、ボディがどういう状態なのかがあまり伝わってこず、高速でドッカン飛ばすだけの直線番長だったんだわ。
ところがこの新型は低速からフィールがビンビンで、アクセルを無理やり吹かした時など、テールが滑りそうな、危うい具合がヒシヒシと伝わってきて、ゆっくり走ってもぶっ飛ばして走っても、どちらでも楽しい。しかも操舵力をそれほど必要としないのよ。
松阪牛の牛丼的スーパーカー
エンジンは、音こそ今のフェラーリやマセラティなんかに比べて過剰演出されてないんだけど、とにかくスムーズ、かつ恐ろしく速い。アクセルを踏んだぶんだけターボラグもほとんどなくトルクが立ち上がり、トラクションコントロールを切った状態なら、発進加速ですぐにホイールスピンする。オーナーさんはタイヤが磨り減ってしょうがないでしょう。
そしてエンジン音はそれなりにやかましいんだけど、回さなければそうそう不快ではなく、助手席の女性との会話をしっかり楽しめる。
当然ブレーキも完璧なまでによく効くわけで、しかもペダルの踏力できめ細やかにコントロールできる。昔のスーパーカーとは違い、軽く踏んですぐ効くタイプなのだ。
ちょっと運転好きの女性ならカンタンに乗りこなせるはず。もちろん性能の半分以下ぐらいでね。
そう、もちろんこの性能を100%発揮できる人って相当少なくて、当然俺レベルじゃムリだし、サーキットで走ったとしてもろくにアクセル全開にできそうもない。上手い人と下手な人の差がハッキリついちゃうはずだ。
そういう意味じゃ相変わらず敷居の高いスーパースポーツなんだけど、そうはいっても10数年前に出たフェラーリF40とは雲泥の差。どちらもパフォーマンスはすさまじいと思うけど、コントロール性が全然違う。だってF40、公道でちょっと多めにアクセル踏んだらすぐにホイールスピンして、ボディが横向いちゃって怖かったけど、911ターボの場合、まずそうならないし、そうなっても怖くなさそうだもん。フィーリングが全然違うから。
ってな具合にラクチンかつキモチ良すぎる最新ターボ。お値段1879万円(ティプトロニックS)ともちろん高くて買えないわけだけど、お金持ちなら免許取立てでもすぐに楽しめる。ホント、誤解を恐れずにいうならば“松阪牛の牛丼的スーパーカー”で驚くべき親しみやすさ。つくづくお金持ちにはいい時代だよねぇ、まったくもー!
(文と写真=小沢コージ)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
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