シトロエンC6 エクスクルーシブ (FF/6AT)【試乗記】
移動の快感 2006.11.09 試乗記 シトロエンC6 エクスクルーシブ (FF/6AT) ……710.0万円 久々の最上級ダブル・シェブロン「シトロエンC6」が上陸した。奇抜なデザイン、お家芸の油圧エアサス、異彩を放つ高級サルーンは、乗り味もきわめて個性的=シトロエン的だった。ミニマリズムとモダニズムの融合
“日本におけるフランス車”の今年最大のイベントは、「シトロエンC6」の発売だ。プジョーやルノーの関係者には申し訳ないが、ほとんどの人はそう思っている。というより、発売前からここまで注目されたフランス車は、ちょっと珍しい。それだけに、気になるのはその乗り味だった。
他の何にも似ていない、誰が見てもシトロエンとわかるスタイリングは、写真より実物のほうが断然いい。そのエレガントなたたずまいを見やったあと、サッシュレスだが剛性感のあるドアを開けキャビンに収まる。
インテリアは外観に比べると普遍的に映るが、実はそうではない。センターラインにはナビのモニターとスイッチがにぎやかに並ぶが、一方でデジタル式のメーターは驚くほど小さく、クロームなどの光り物は最小限に抑えてある。
デザイナーはこの仕立てを「テクノ・ゼン(禅)」と呼んでいるが、ミニマリズムとモダニズムを絶妙に融合させたこの空間は、クラシカル&オーセンティックというラクシュリーセダンの常套手段の逆を行く、つまりとてもフランス的な場所といえる。
電制油圧・エア併用サス「ハイドラクティブ」
ビッグサイズの前輪駆動車だけあって、キャビンは開放的。前席はかなりサイズが大きく、クッションはそれほどソフトではないが、包み込まれるような座り心地をもたらす。
一段高い位置に座る後席は、座面のチルトと背もたれのリクラインが電動でできる「ラウンジパッケージ」も用意されている。リラックスポジションにしたときの心地よさは、降りたくなくなるほどだった。
日本仕様は3リッターV6ガソリンエンジンと6段ATのコンビ。車両重量1.8トン超のボディを不満なく走らせるが、そこに感動があるわけではない。しかしこれも、“大きなボディに小さなエンジン”というシトロエンの伝統どおり。かつての「DS」や「CX」は4気筒OHVで走っていたのだから。
一方のシャシー面では、「プジョー407」と共通のサスペンションに、電子制御の油圧・エア併用サスペンションを融合させた、新「ハイドラクティブ・アクティブサスペンション」を採用した。
車高は、速度や路面に応じて3段階に自動的に変わり、キャビンのスイッチでも4段階の選択が可能。さらに別のスイッチで「コンフォートモード」と「スポーツモード」を選ぶこともできる。
常にゆったりと揺れている感じ
その乗り味は、スタイリングと同じように、他の電子制御サスペンションとはあきらかに違う。
他車の多くは、姿勢をフラットに保つことを重視している感がある。ビッグ・シトロエンも先代の「XM」ではその傾向があった。
ところがC6は、常にゆったりと揺れている感じがする。それは、かつて自分も所有していたCXに近い感覚だった。
でも、心地よい。ベッドよりもハンモックのほうが気持ちいいと思うように。
コンフォートからスポーツモードに切り替えると、硬くならない範囲で揺れが抑えられ、フラット感が強調される。つまり他車に近づく。
おかげでサイズのわりに素直なハンドリングは姿勢変化が抑えられ、ハイペースが保ちやすくなる。ATでいえばDレンジよりマニュアルモードが似合うだろう。
でもC6を選ぶような人が、進んで「スポーツ」を選ぶとは思えない。必要にせまられて速く走るとき、ハイドロ嫌いのゲストを載せるときなどに限られるような気がする。
コンフォート/スポーツではなく“ノーマルモード/シトロエンモード”という名前にしたほうが理解しやすいのでは?と思ってしまうほど、2つのモードは独自の意味を持っていた。
圧倒的な直進安定性は、これまたビッグ・シトロエンの伝統を継承。低速ではDSやCXを思わせるほど軽く手応えがないのに、速度を上げるとしっとり重くなるステアリングに手を添え、例の乗り心地に身をゆだねていると、先を目指そうという意識が薄れ、この心地よさにいつまでも浸っていたいという気持ちになる。
でもC6はその瞬間も、前に進み続けている。
歴代ビッグ・シトロエンが提供してきた、移動の快感。それをC6から感じ取ることができたとき、ダブル・シェブロンは完全に自分らしさを取り戻したと確信した。
(文=森口将之/写真=峰昌宏/2006年11月)

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
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