第301回:トヨタ・ブレイド試乗“コンパクトカーの壁”は突破できるか?
2007.01.31 小沢コージの勢いまかせ!第301回:トヨタ・ブレイド試乗“コンパクトカーの壁”は突破できるか?
なんでこれをヨーロッパで出さないの?
そう言えば前回ついに連載300回を突破しましたっ! 俺自身にパチパチパチ……ってな話はさておき、先日トヨタ・ブレイドに試乗してきました。
クルマは……まあ良かったですね。正直、インパクトはそれほどでもなかったけど、スタイリングはカッコいいし、走りも悪くない。
っていうかね。一番の驚きはトヨタ車っぽくないことよ。もちろん、最近のトヨタ車は昔全般的にあった“ベタな感じ”が薄れてて、ボディはしっかりしてるし、デザインもワールドワイドっちゅうか、シンプルかつ力強いものになってる。
でもコイツには特にそれを感じたなぁ。デザインや走りもそうだけど、なによりも、言い方は悪いが手を抜いてる感じがしない。前はコンパクトカーっていうと、どうにもシートがしょぼかったり、テールレンズが安っぽかったり、全体的にコストカットの匂いがしたけど、コイツにはそれがない。
まあそれこそがトヨタの狙いで、要するにこのクルマは「上級セダンの味をコンパクトクラスで」ってコンセプトで、2.4リッターエンジンを積んだり、リアサスをダブルウィッシュボーンにして操安性と乗り心地の両立を図ったり、インテリアにスウェード調の新素材グランリュクスってのを使って高級感を出したりしてるんだけど、俺が素朴に感じたのは、なんでこれをヨーロッパで出さないの? ってとこだ。
「小さな高級車」作りの2007年版
確かに実際ヨーロッパで出されるブレイドのベース車、オーリスも悪くはないんだけど、アレ(=オーリス)だと正直VWゴルフやプジョー207に十分対抗できるとは思えない。悪くはないけど平均値って感じで、おそらく価格勝負になってしまうんじゃないか。
でもブレイドならドイツ車ほどの重厚感やフランス車ほどのしなやかさはないにしても、独特のイヤミのない軽さがある。
さらにインテリアをもっと斬新な色づかいにしたりすれば、結構可能性もあると思うのだ。ま、コストがあわないのかもしれないけどさ。
でも考えようによっては、ブレイドが国内専用車というのもいい話だけどね。それはトヨタがそれだけ国内市場の掘り起こしにやっきになってるってことの証明。というのもこのブレイドは、ある意味日本の古典的クルマ観に対する結構な挑戦なのだ。
でも俺は思ったなぁ。確かにブレイド、なかなか良く出来てるけど、このクラスに果たして200万円オーバーのお金を払い、2.4リッターのエンジンを求める人がいるのかって。
もちろん、いまやダウンサイジングの時代で、特にお金に余裕のある団塊の世代が、セダンやミニバンから降りてくる受け皿が必要なんだろうけど、果たして“コンパクトカーの壁”を突破できるのか。
言ってみれば昔から時々自動車メーカーが挑戦してきた「小さな高級車」作りの2007年バージョン。今後が見ものです。
(文と写真=小沢コージ)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
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