ボルボS80 3.2(FF/6AT)/V8 AWD(4WD/6AT【試乗記(前編)】
プレミアムもスポーティも北欧流(前編) 2007.01.10 試乗記 ボルボS80 3.2(FF/6AT)/V8 AWD(4WD/6AT)……640.0万円/844.0万円
ボルボのフラッグシップ「S80」は、フルモデルチェンジで新しいV8エンジンを得た。いよいよラクシュリー&スポーティの最前線で真っ向勝負か、と思いきや、北欧的価値観は頑固に貫かれていた。
独自の価値観
ボルボのデザイン革新も、ひと回りしてすっかり定着したようだ。先代のS80が登場した時にはイメージを一新したフォルムに戸惑ったものだけれど、今ではラウンドしたショルダーを強調したふくよかな形状はボルボのアイデンティティだと感じられる。「S40」、「V50」はコンパクトなサイズの中でよくボリューム豊かな新デザインを適用できたものだと思っていたが、新しいS80はむしろS40のデザイン手法を取り入れたように見える。その結果、少しだけ筋肉質なカラダを手に入れて、引き締まった表情を得たのだ。
見た目だけではなくて、実際にS80にはたくましい筋肉がついた。新しく採用されたV8エンジンである。ボルボらしからぬハイパワースペックを誇るこのパワーソースが今回のモデルチェンジの大きなウリとなっているのだ。すでに「XC90」に搭載されていたものだけれど、セダンボティでどう実力が引き出されるか、大きな期待があった。
長崎で行われた試乗会での商品説明会では、「他メーカーに追いついた点と、他メーカーから未だに追いつかれていない点」がある、とレクチャーがあった。「追いついた点」というのはエンジンスペックのことであり、「追いつかれていない点」が安全装備であることは言うまでもない。
もうひとつ強調されていたのは、「ドイツメーカーとは明らかに異なるアプローチ」をしているということである。北欧の価値観として人間尊重、人と自然との調和などを挙げ、その帰結として安全性や環境への配慮が重視されると説明している。そして、厳しい冬を耐え、短い夏を楽しむためのクルマ作りを行っていると説くのだ。ドイツ車全盛の中で独自の価値観を貫こうとする、その言やよしである。
ダッシュボードは崖の上の雪
外観に関しては前述したように昨今のデザインの流れを踏襲していて、大きなトピックはない。内装も基本的には同じ流れと言えるが、モダンなスカンジナビアンデザインはさらに洗練を増している。
S40、V50で採用された「フリーフローティングセンタースタック」が使われていて、これをボルボのインテリアの象徴的アイテムにしようという意図が読み取れる。当初のデザインスケッチではこのスタックは後席にまで伸びていたというが、さすがにそこまでデザイン優先にはしきれなかったらしい。
ダッシュボード上端の曲面は崖の上の雪から発想されたそうだが、残念ながらそう言われればそうかな、というのが正直なところ。まあ、意図はともかくとして、優しげな印象をもたらしているのは好ましい。いろいろなアイテムに「角の取れた長方形」をモチーフにした造形を使っているという説明もあったが、さすがにこの意匠はあまりにも地味で、知らずにデザインテーマだと感知できる人は多くはないかもしれない。
ボルボでは初となる「スマートキーシステム」が装備され、ボタンでエンジンを始動させることができるようになった。スイッチ式の電動パーキングブレーキ、カーブで照明方向を変える「アクティブ・バイ・キセノン・ヘッドライト」、前車との距離を保ちながら巡航できる「追突警告機能付きアダプティブ・クルーズコントロール」の採用も初めてのことだ。目新しいものではないが、他のプレミアムカーに伍して戦うためにどうしても必要なものをそろえたということだろう。上級グレードではないモデルにも多くの装備が採用されているのはうれしい話だ。
コンパクトなV8エンジン
新しいV8エンジンは、60度のバンク角を持つコンパクトな設計となっている。エンジンルームを開けて覗いてみると、4.4リッターとはとても思えない大きさだ。約190キロという重量も、このクラスとしてはずいぶん軽い。馬力は315psだから昨今の基準では極端にハイパワーとは言えないものの、もちろん十分な数値である。
まず試乗したのは、「V8 AWD」というグレードで、価格は840万円。S80では初めてとなる四輪駆動をV8エンジンを組み合わせている。この上にはシートの革やダッシュボードのウッドパネルなどに上級な素材を使った「V8 AWD TE」もあるけれど、機能に関しては同じ最上級の仕様である。ダッシュボードのスタートボタンを押すと、V8は静かに回り始めた。(後編につづく)
(文=別冊単行本編集室・鈴木真人/写真=高橋信宏/2007年1月)

鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
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