ボルボXC90 3.2(4WD/6AT)【短評(後編)】
ボルボに 乗りに 函館に(後編) 2006.11.18 試乗記 ボルボXC90 3.2(4WD/6AT) ……685.0万円 ボルボXC90は函館市街を離れ、郊外へ。北海道ならではの風景がひろがる。山いちめんの紅葉、広大な牧草地。ワインディングロードを、そしてラフロードを走る、試す。世界で最も売れたボルボ
その背の高さから、とにかく大きく見えるのがこの手のSUVだが、全長4.8mのなかに大人5人以上と充分なラゲッジスペースを確保し、最大で7人まで許容するというのがXC90のテーマのひとつである。ディメンションを比べると、メルセデスGLは全長×全幅×全高が5100×1955×1840mm。対してXC90は4810×1910×1780mmと一回り小ぶりなのだ。
そしてこのパッケージングは、昨年世界で最も売れたボルボ車(8万5994台)という実績を残している。日本においても前年同期比で12%の伸びを見せているというが、その良さが理解されればもっと広がるシェアであると思う。
たとえば北米などでは、ママが子供たちを小学校からピックアップするときに、大きなバンが活躍する。そこでは、隣のジミー君や向かいのキャサリンちゃんも一緒に拾うのが近所づきあいの習わしだ。それが休日になればベースボールチームになるし、ピクニックになる。そして奥様方の間ではいま、お迎えにダッヂやシェビーのバンではなくて、XC90がちょっとクールなのだという。小ぶりだけど荷物も人も沢山乗せられるスタンスがウケているのだ。
気配りができている
そんな目でみると、これまではクロスオーバー系であった外観に、ボディ同色部分が多くなったのも納得がいく。テールゲート上部にさりげなく盛り込まれたクロームモールなどの小技も含めて、フェミニンな雰囲気も大切にしているということだ。
実用面では、トンネルコンソール後端のアームレスト部分を取り外して、後部座席中央を前方にスライドさせれば運転席との距離がグッと縮まる「インテグレーテッド・チャイルドシート」(7人乗り)や、ワンタッチで3列目座面を収納してフルフラットにできるシート構造など、各部に細やかな配慮がなされているのも、ボルボ・ブランドが女性にも受け入れられている理由だろう。
XC90の魅力はバランス
国道279号線、国道5号線を北上し、函館新道に入る。城岱スカイラインに入ると、四面は緑と空に囲まれる。いくつかのコーナーを抜けると、アメリカ並みにまっすぐな道が現れた。
XC90の走りは、バランスがいい。流行りのプレミアムSUVたちは、乗用車並みの速さを持たせたまま、見晴らしの良いクルマを造ろうとやっきになっている。しかしXC90は、フロントのロール剛性がライバルたちほどゴツくはないのだ。よってコーナリング時はそれなりにロールを許すが、だからこそドライバーも無理な運転をしなくなる。
個人的には、SUVでコーナリングを突き詰めることは、中にいる人間をどんどん不快にすることとしか思えない。特に後部座席は、座面が高くなる(場合が多い)から重心位置も上がり、パッセンジャーはロールやピッチングに対してさらに敏感になる。それをボルボは、フロントからきっちりロールさせることで、未然に防ぐ。限界が低いというのではない。物理の法則に逆らわず、背の高いクルマは背の高いクルマとしてきちんと走らせよう、と言っているような気がするのだ。
タイヤ径もむやみに大型化せず、3.2では235/65R17というサイズを選択しているのが嬉しい。65扁平のタイヤハイトは、微低速域で超扁平タイヤが与える左右の揺さぶられ感を和らげてくれるからだ。
ちなみに駒ヶ岳山中では下が砂利となったラフロードも走破したが、こういった路面ではむしろストローク感のあるサスペンションに安心感が高い。プレチャージ式の4WDは通常FWDで走っているが、各輪のスリップを感知した瞬間に適切な駆動力をAWDに分散する。そのトルクスプリット状況は、雪道でもなければ感じられないほどナチュラルだった。
XC90 3.2とは、SUVにおいてもボルボのイメージをしっかり受け継ぐクルマだ。安全で、洗練されていて、知的。そして今回の新型エンジンは、その洗練度をさらに上げる役割を果たしたのだと思う。
(文=山田弘樹/写真=高橋信宏/2006年11月)
・ボルボXC90 3.2(4WD/6AT)(前編)
http://www.webcg.net/WEBCG/impressions/000018826.html

山田 弘樹
ワンメイクレースやスーパー耐久に参戦経験をもつ、実践派のモータージャーナリスト。動力性能や運動性能、およびそれに関連するメカニズムの批評を得意とする。愛車は1995年式「ポルシェ911カレラ」と1986年式の「トヨタ・スプリンター トレノ」(AE86)。
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