マツダ・ロードスターVS RHT(FR/6AT)【ブリーフテスト】
マツダ・ロードスターVS RHT(FR/6AT) 2006.11.03 試乗記 ……294.0万円 総合評価……★★★★ マツダ・ロードスターに電動開閉システムを備えたハードトップモデルが追加された。ソフトトップと変わらない走りを追求し、軽量化に力を注いだというニューモデルに試乗した。心が動かされるハードトップ
ふだんからソフトトップのオープンカーに乗っている私は、布製の幌にはまったく抵抗はないし、ハードトップとソフトトップがあったらソフトトップを選んでしまうと思うけれど、はじめてオープンカーを手に入れようと思ったときはソフトトップに不安を覚えたのは事実だ。「すぐに傷んじゃうんじゃない?」「いたずらされたらどうしよう?」「夏は暑くない?」「うるさいのかなぁ?」と。
そんな不安に駆られているマツダ・ロードスターのオーナー予備軍に安心を与えるために、満を持して市場に投入されたロードスター パワーリトラクタブルハードトップ(RHT)。だから、流行のクーペ・カブリオレとは出発点が違う。クーペの快適性を求めたのではなく、ハードトップは、あくまでソフトトップの代わりに過ぎない。ファン・トゥ・ドライブにこだわったから、軽量化にも徹底的に力を注いだのだという。
その甲斐あって、実際に運転してみると、トップを開けても閉めても、重くて余計なものを背負う感覚がない。もちろん、トップの開閉は電動だから操作は簡単で、閉めたときの快適性はソフトトップよりも格段に上。そうなると、いかにソフトトップ派の私でも、ハードトップに心が動かされてしまう。
ソフトトップ派に対して、ハードトップ派は少数だろうという予想のもと発売されたロードスターRHTだが、勢力図が逆転する日は意外に近いのかもしれない。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
世界的に大ヒットした、マツダのオープン2シーターのライトウェイトスポーツ「ロードスター」。現行モデルは、2005年8月にフルモデルチェンジした3代目。
2006年8月、電動開閉システムを備えた軽量ハードトップモデル「パワーリトラクタブルハードトップ(RHT)」が追加設定された。電動ハードトップは約12秒で開閉する。
ノーマルのソフトトップモデル同様にルーフをホイールベース間のシートバックスペースに収納するため、ソフトトップと変わらないパッケージ&走りを手に入れられたという。
(グレード概要)
RHTモデルは、ロードスターのプレミアムモデルという位置付け。フロントグリルガーニッシュ、フロントヘッドランプインナーベゼル、ドアハンドルカバーがクロームタイプに、ハイマウントストップランプがクリアタイプとなる。ラインナップは、ソフトトップと同様で、エントリーグレード「ロードスター」(5MTと6AT)、ビルシュタインダンパーやLSDを備えるスポーティな「ロードスターRS」(6MTのみ)と、レザーシート仕様の豪華な「ロードスターVS」(6MTと6AT)となる。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
とにかく軽量化を目指し、ルーフ外側は樹脂製、内側も表面にシボを施すことで、内張りが不要の2層構造としたRHT。その操作はセンターロックを解除し、センタークラスターのスイッチを押し続けるだけ。12秒後にはフルオープンの2シーターに変身する。開閉の際、サイドウィンウが少し下がるが、操作完了後に自動的に復帰しないのは不親切だ。
ルーフを下ろした状態でも、サイドウインドーを上げておけば、90km/hくらいでも後方からの風の巻き込みは少なく、髪の乱れもあまり気にならない。
ルーフを閉じると、クーペ並みとはいかないまでも、オープン時とは比べようがないほどボディはカッチリとした印象になる。ルーフのガタやキシミ音とも無縁で、しっかりとしたつくりには好感が持てる。
(前席)……★★
ロードスターVS RHTには標準でタンのレザーシートが備わっている。形状こそポルシェのシートに似ているが、実際に座ってみると背中を面で支えるという感じに乏しく、なんとなく収まりが悪い。ステアリングコラムはチルトの調節のみが備わり、テレスコピック調節がないのも不満だ。
RHTではシート背後の収納ボックスが省かれてしまったが、それでもセンタートンネル上のカップホルダーや後方中央の収納ボックスなど、収納スペースは最低限。しかし、オープン2シーターということで割り切れば済む話だから、さほど気にする必要はない。
(荷室)……★★★
電動ハードトップを備えるクルマのほとんどが、ハードトップ格納時にラゲッジスペースを侵食し、下手をすると荷物が多くてルーフが開けられない、なんて事態に陥ることもある。
ところがこのロードスターRHTは、ルーフをキャビンとトランクの間に収納するデザインを採用。それは重量物をなるべく重心近くに置きたいという配慮であると同時に、ただでさえ狭いトランクを温存するためでもある。
おかげで、ルーフの状態によらず、トランクが自由に使えるのだ。ソフトトップのロードスターに比べるとトランクリッドの高さが上がったのが幸いして、容量がアップしているのもうれしい点だ。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
電動ハードトップの追加などで、ソフトトップに比べ約37kgの重量増となったものの、車両重量は1140kgと依然軽量な部類のロードスターRHTだから、最高出力166ps/6700rpm、最大トルク19.3kgm/5000rpmの2リッター直列4気筒エンジンになんら不足はない。
試乗車は6AT仕様で、低回転域ではダイレクト感が乏しい反面、アクセル操作に対してエンジンは素早く反応し、すうっと前に押し出される感じが頼もしい。回転が上がるとダイレクトさは増して、さらに盛り上がりを見せるのだが、とりたてて吹け上がりが鋭いわけでもなく、やや色気に欠けるのが玉にキズか。
オートマチックは、シフトがスムーズで、シフトスケジュールも的確。多段化によるわずらわしさもない。これならマニュアルから乗り換えても構わないと思った。ただ、残念なのは、ステアリングシフトのスイッチがDレンジのままでは使えないこと。そして、スイッチそのものも、ステアリング裏の「UP」はいいとして、表の「DOWN」が操作しにくい。ステアリング裏のレバーを左右で使い分けるほうが便利だと思うが、変更は難しいのだろうか?
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
クルマをスポーティに走らせるには、なにより軽いことが一番。それは、このロードスターRHTでも十分実感できる。
ワインディングロードに繰り出し、コーナー手前でブレーキングすると、さっそくボディの軽さが確認できた。そしてコーナーでは、ステアリング操作に応えるように、ノーズが自然にインに向かう印象だ。ステアリングの切り始めの動きにシャープさはないが、重量物を載せているといった感覚はない。軽快さと安定感をうまくバランスさせたハンドリングは、誰にでも楽しめる味付けだ。
試乗車はメーカーオプションの「プレミアムパッケージ」装着車ということで、205/45R17タイヤと17インチアルミホイールが付くため、低いスピードではバネ下の動きが気になる。同じサイズのタイヤを標準で履くRS RHTのほうが乗り心地はよく、しなやかな動きを示すのが意外だった。マニュアル派なら、RSとVSのどちらを選ぶか、迷うことになるかもしれない。
(写真=河野敦樹)
【テストデータ】
報告者:生方聡
テスト日:2006年9月28日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2006年型
テスト車の走行距離:2328km
タイヤ:(前)205/45R17 84W(後)同じ(いずれもミシュラン Pilot Preceda)
オプション装備:プレミアムパッケージ(14.0万円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1):高速道路(6):山岳路(3)
テスト距離:314.7km
使用燃料:39.07リッター
参考燃費:8.05km/リッター

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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