フォルクスワーゲン・ポロ1.6スポーツライン(FF/6AT)【ブリーフテスト】
フォルクスワーゲン・ポロ1.6スポーツライン(FF/6AT) 2006.10.19 試乗記 ……244万2000円 総合評価……★★★★★ 1.4リッターと1.8リッターターボ「GTI」の間を埋めるべく追加設定された「ポロ1.6スポーツライン」。好ましいサイズだけではなく、走行感覚においても、兄貴分「ゴルフ」をも凌ぐ良さがあるという。走行感覚はゴルフより上
思いきりよく5つ星をあげてしまおう。サイズ的には初代「ゴルフ」に匹敵し、「ルポ」(現在は日本ラインナップから落ちている)からゴルフまでの実用小型ハッチバックの中で一番使いやすいフォルクスワーゲン車といえる。
今回のグレード追加により走りの面でも、スポーティかつ楽しめる操縦感覚を身につけた。
このクラスで1180kgのボディ重量は、数値的に決して重くないにもかかわらず、なぜか重ったるい印象をぬぐえなかった。しかしこの「1.6スポーツライン」の6段ATは有効にパワーを引き出してくれるし、エンジンも素直に気持ちよく回る。
ただしスロットルを開けたままブレーキを踏んで、減速を促しつつシフトダウンさせ、素早く次の加速体勢に移行しようとすると、エンジンは突如失速してしまう。
これはVW-アウディ車に共通する悪癖であり、A(アクセル)B(ブレーキ)両方のペダルを同時に踏むとBを優先させる同社の哲学ではあろうが、著しく運転のリズムを狂わせるから、せめてリカバリーはもっと早めるべきだ。
動力性能もさることながら、操向性能もすばらしいものがある。パワーステアリングは電気モーターによるドライな感覚とは異なり、電動モーターによる油圧アシストはやはりしっとりした感触の良さがある。
基本的な違いは、ステアリングを回転させていない時にもアシストを続ける連続性で、直進時や定常旋回時の保舵領域での感覚で勝る。またロールセンターを高めに採る旋回感覚も、ロール感を向上させている。これら走行感覚ではゴルフより高級とすら言えるだろう。
|
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
1975年に初代がデビューした、ゴルフの弟分にあたるコンパクトハッチ。日本には4代目モデルが2002年5月から導入され、2005年9月のフェイスリフト、さらに2006年9月に1.6リッターの「クロスポロ」「1.6スポーツライン」を加えて現在のラインナップとなる。ポロのさらに弟分となる「ルポ」「フォックス」などが日本に導入されていないため、国内では最もコンパクトなVW車である。
(グレード概要)
テスト車の「1.6スポーツライン」は、名のとおり1.6リッターエンジンを搭載した、スポーティグレード。ボディは5ドアハッチバックのみとなる。「クロスポロ」と同型の心臓は105psと15.1kgmを発生。ティプトロニック付き6段オートマチックトランスミッションで前輪を駆動する。スポーツサスペンションと15インチアルミホイール、スポーツシートなどで、スポーティな演出がなされる。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
特別に凝った造形ではないがシンプルにしてスッキリまとまっている。計器類は見やすく必要なものは完備。ウィンカー、ワイパー、ライトなど普段多用するスイッチ類もちゃんとあるべき位置にあり、使いなれている操作で目的を完遂できる。ダッシュボード下の小さな棚は小物を置けて有効だが、フタができる構造なら中身が見えずさらにスッキリするだろう。
(前席)……★★★★
カッチリ硬めでドイツ車らしい造りのシートで、表皮の布地は見るからに座り心地が良さそうだ。サイズも大きめでたっぷりしている。実際に座るとややゴワゴワした感じがあるが、時間とともに馴染むタイプだろうか。ランバーサポート調整機構はなく、腰部を部分的に硬くしている。しかしここがやや縦方向に長いため、リポーターは背中がゴロゴロ左右に動きしっくりしなかった。座面の後傾斜角は見た目より少なめでハイト調整でも変化はつかない。奥まで座ると後端の固い部分に異物感を覚える。短距離では問題ないが長距離では疲れそう。
(後席)……★★★★
サイズは小さめながら、座面はちゃんと後傾斜角が確保されており、前席よりも前にズレにくい。高めに座ることにより前もよく見えるし、だらしなく膝を開く感覚がない。足先は前席の下に余裕があり、さらに前席シートバックの膝部分のえぐりがスペースの確保に効果的。背もたれの角度も適度に立ち気味で疲れない角度だし、丈は長く肩までホールドしてくれる。ヘッドクリアランスも十分。ただし居眠りしたくなるタイプではない。
(荷室)……★★★
ホイールやサスペンションの張り出し部分が大きめで、外観から予想するよりは狭そうに見えるが、普通に想定される用途には不足はなさそう。いざとなればリアシートを倒せるハッチバックゆえに、この程度で十分という割り切りも感じられる。バックウィンドウの傾斜からも想像されるように、ハッチを開けても雨天時に屋根にはならないが荷室が濡れることはない。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★★
特別パワフルではないものの素直に吹け上がり、スムーズで気持ちのよいエンジン。ATは6段階で広範囲にわたって有効にパワーを伝える。シフトはDから右にレバーを倒して+−をマニュアルで選べるが、右旋回時に横Gが高まると、体勢によっては膝が当たってDへ戻ってしまうこともあった。左足ブレーキなどAとBを同時に踏むとエンジンが休んでしまうが、せめてリカバリーを早めてほしい。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★★
姿勢はフラット、サスペンションはしなやかに動き、ダンピングもいい。ロールセンターが高めに改善されて、ロール感が良くなった。スロットルのオン/オフによる姿勢変化も少ない。微舵応答はややマイルドながら直進性も良好。操縦安定性では特にパワーステアリングの操舵フィールがすばらしい。電動ポンプによる油圧パワステは、現状でベストチョイスだと思われる。操向系全体のデキがゴルフより高級で魅力的。
(写真=高橋信宏)
【テストデータ】
報告者:笹目二朗
テスト日:2006年9月20日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2006年式
テスト車の走行距離:3455km
タイヤ:(前)195/55R15 85V(後)同じ(いずれもFirestone Firehawk700)
オプション装備:マルチメディアステーション+マルチファンクションインジケーター(25万2000円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4):高速道路(4):山岳路(2)
テスト距離:280.6km
使用燃料:38.2リッター
参考燃費:7.34km/リッター

笹目 二朗
-
BMW iX3 50 xDrive Mスポーツ(4WD)【海外試乗記】 2025.12.12 「ノイエクラッセ」とはBMWの変革を示す旗印である。その第1弾である新型「iX3」からは、内外装の新しさとともに、乗り味やドライバビリティーさえも刷新しようとしていることが伝わってくる。スペインでドライブした第一報をお届けする。
-
BYDシーライオン6(FF)【試乗記】 2025.12.10 中国のBYDが日本に向けて放つ第5の矢はプラグインハイブリッド車の「シーライオン6」だ。満タン・満充電からの航続距離は1200kmとされており、BYDは「スーパーハイブリッドSUV」と呼称する。もちろん既存の4モデルと同様に法外(!?)な値づけだ。果たしてその仕上がりやいかに?
-
フェラーリ12チリンドリ(FR/8AT)【試乗記】 2025.12.9 フェラーリのフラッグシップモデルが刷新。フロントに伝統のV12ユニットを積むニューマシンは、ずばり「12チリンドリ」、つまり12気筒を名乗る。最高出力830PSを生み出すその能力(のごく一部)を日本の公道で味わってみた。
-
アウディS6スポーツバックe-tron(4WD)【試乗記】 2025.12.8 アウディの最新電気自動車「A6 e-tron」シリーズのなかでも、サルーンボディーの高性能モデルである「S6スポーツバックe-tron」に試乗。ベーシックな「A6スポーツバックe-tron」とのちがいを、両車を試した佐野弘宗が報告する。
-
トヨタ・アクアZ(FF/CVT)【試乗記】 2025.12.6 マイナーチェンジした「トヨタ・アクア」はフロントデザインがガラリと変わり、“小さなプリウス風”に生まれ変わった。機能や装備面も強化され、まさにトヨタらしいかゆいところに手が届く進化を遂げている。最上級グレード「Z」の仕上がりをリポートする。
-
NEW
ホンダ・プレリュード(前編)
2025.12.14思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が新型「ホンダ・プレリュード」に試乗。ホンダ党にとっては待ち望んだビッグネームの復活であり、長い休眠期間を経て最新のテクノロジーを満載したスポーツクーペへと進化している。山野のジャッジやいかに!? -
アストンマーティン・ヴァンテージ ロードスター(FR/8AT)【試乗記】
2025.12.13試乗記「アストンマーティン・ヴァンテージ ロードスター」はマイナーチェンジで4リッターV8エンジンのパワーとトルクが大幅に引き上げられた。これをリア2輪で操るある種の危うさこそが、人々を引き付けてやまないのだろう。初冬のワインディングロードでの印象を報告する。 -
BMW iX3 50 xDrive Mスポーツ(4WD)【海外試乗記】
2025.12.12試乗記「ノイエクラッセ」とはBMWの変革を示す旗印である。その第1弾である新型「iX3」からは、内外装の新しさとともに、乗り味やドライバビリティーさえも刷新しようとしていることが伝わってくる。スペインでドライブした第一報をお届けする。 -
高齢者だって運転を続けたい! ボルボが語る「ヘルシーなモービルライフ」のすゝめ
2025.12.12デイリーコラム日本でもスウェーデンでも大きな問題となって久しい、シニアドライバーによる交通事故。高齢者の移動の権利を守り、誰もが安心して過ごせる交通社会を実現するにはどうすればよいのか? 長年、ボルボで安全技術の開発に携わってきた第一人者が語る。 -
第940回:宮川秀之氏を悼む ―在イタリア日本人の誇るべき先達―
2025.12.11マッキナ あらモーダ!イタリアを拠点に実業家として活躍し、かのイタルデザインの設立にも貢献した宮川秀之氏が逝去。日本とイタリアの架け橋となり、美しいイタリアンデザインを日本に広めた故人の功績を、イタリア在住の大矢アキオが懐かしい思い出とともに振り返る。 -
走るほどにCO2を減らす? マツダが発表した「モバイルカーボンキャプチャー」の可能性を探る
2025.12.11デイリーコラムマツダがジャパンモビリティショー2025で発表した「モバイルカーボンキャプチャー」は、走るほどにCO2を減らすという車両搭載用のCO2回収装置だ。この装置の仕組みと、低炭素社会の実現に向けたマツダの取り組みに迫る。






























