スバル・ステラカスタムR(FF/CVT)【ブリーフテスト】
スバル・ステラカスタムR(FF/CVT) 2006.10.17 試乗記 ……132万3000円円 総合評価……★★★★ デザインを全面に押し出した「R1」「R2」で勝負に出たスバル。しかし市場の反応は芳しくなく、あわててスペースユーティリティ重視の「ステラ」を投入することになった。数多いライバルたちに勝てる実力はあるのか?
![]() |
デザインの洗練性がほしい
全体の印象は良好。乗り初めと終わりなど時間の経過に対しても、さらに一般道、山道、高速道路などステージが変化しても、大きく印象は変化しない。それだけ信頼性は確立されている。スバルはどちらかといえば技術志向の会社であり、見てくれに期待するユーザーは少ないとは思うが、技術優先ゆえの無骨さのようなものも感じられず、もうすこしデザイナーが活躍すべきであり、その余地は大きいと思われる。奇をてらうデザインがいいわけではなく、処理技術で解決する洗練性がほしい。そのあたりに目をつぶればクルマとしてはよくできている。
長年の経験による手慣れた造りは、細部にいたり技術的に煮詰められ、スムーズさや作動の正確さがより増している。エンジンは気持ちよく回るし変速機のスムーズさも秀逸。ハンドリングや乗り心地はスバルチューンへの期待を裏切らない。
![]() |
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
市場の声に対応し、室内空間や使い勝手を重視して作られた王道系の軽ハイトワゴン。デザインコンシャスな「R2」と基本コンポーネンツを共用し、オーソドクスなデザインとした。ボディは2種で、シンプルな「ステラ」とスポーティな「ステラカスタム」となる。エンジンは直4DOHCでNAとスーパーチャージャー(ステラカスタムに搭載)が用意され、トランスミッションはすべてCVT。すべてのグレードにFFと4WDがラインナップされる。
(グレード概要)
「ステラカスタムR」は可変バルブタイミング機構がついた直4DOHC NAエンジン(54ps、6.4kgm)搭載グレード。「カスタム」専用の外装パーツが与えられるほか、専用のブラック内装となる。オーディオにはAUX(外部入力)端子も付属。SRSサイドエアバッグはオプションで装着することが可能だ。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
簡単、アッサリでそっけないが、必要な機能は満たす。小さなタコメーターも回転変化の少ないCVTには十分。ミニマムの実用車と考えればこれで満足すべきかもしれない。しかし中央部のATセレクターや空調関係なども含め、基本パーツはこのままでも、もうすこしデザイナーの活躍する余地はありそうに思う。2度踏みリリース方式のパーキングブレーキは要改善。
(前席)……★★★★
シートのサイズはたっぷり目でクッションストロークも比較的大きい。形状は平板ながら沈み込みによるホールド性は良好。立ち気味に座るこの手のクルマといえども、浅く座るいわゆる腰掛け型がいいとはいえず、座面の後傾角は重要。その点これはクッション後部が沈んでくれ、前端も比較的長めなので前にずれにくく、まずまずの座り心地を得ている。天井が高いボディ形状ゆえ、ヘッドクリアランスは広い。
(後席)……★★★★
座面は比較的長めで大筋で不満はなし。そのぶん見た目には膝あたりの空間が狭そうだが、前席背面のえぐりは有効。足先も前席下に入る。背面の丈は短いが引き上げ式のヘッドレストが助ける。高めに座るわりには、ヘッドクリアランスも十分。大人が4人ちゃんと乗ることができる。乗り心地的には前席よりやや突き上げは感じるが、総じて快適。
(荷室)……★★★
タイヤハウスやサスペンションの室内張り出しが大きいため、床面積としては決して広くはないものの、天地方向に広い寸法をもつ。後席シートバックが倒れて荷室を繋げることができ、倒すためのレバーは後部から簡単に手が届くのは良い。背面に設けられた荷物固定用ベルトはアイディア賞。長めの荷物を立てて収納可能だし、コンビニの買い物程度ならば床の窪みにも置けるが、ベルトに通しても吊るすことができる。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
やはり4気筒エンジンならではのスムーズで滑らかな吹けあがりは魅力。3気筒より伸びやかでゆったりと音にも余裕を感じる。CVTは繁華なエンジン回転の上下を許さず、そこでも静かに感じる。左足ブレーキによりスロットルを開けたまま減速すると、自動的に下位のギア比に移行し、ブレーキをリリースすると低いギア比の強力な加速が即座に得られ、なかなかスポーティでもある。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
フラットでダンピングもまずまず。一言でいって快適な乗り心地だ。西湘バイパスでのハーシュネス試験も合格。微舵応答はそれほど目ざましくはないものの直進性も優秀。ロール感としては、ボディ形状ゆえにやはり重心高の高さを感じるものの、不安感は少ない。ただし箱根の下りなどは、動力性能で劣る部分が目立たずにすむものの、速めの普通車についていこうとすると、踏ん張っている側の足が車体を持ち上げるようなジャッキング現象が起こる。接地性はまだ改善の必要があるといえる。
(写真=高橋信宏)
【テストデータ】
報告者:笹目二朗
テスト日:2006年9月20日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2006年式
テスト車の走行距離:4677km
タイヤ:(前)155/65R14(後)同じ(いずれもファルケン SINCERA SN-816A)
オプション装備:HIDロービームランプ+ユーティリティパッケージ+14インチアルミホイール(12万6000円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4):高速道路(4):山岳路(2)
テスト距離:323.3km
使用燃料:24.6リッター
参考燃費:13.14km/リッター

笹目 二朗
-
ランボルギーニ・ウルスSE(4WD/8AT)【試乗記】 2025.9.3 ランボルギーニのスーパーSUV「ウルス」が「ウルスSE」へと進化。お化粧直しされたボディーの内部には、新設計のプラグインハイブリッドパワートレインが積まれているのだ。システム最高出力800PSの一端を味わってみた。
-
ダイハツ・ムーヴX(FF/CVT)【試乗記】 2025.9.2 ダイハツ伝統の軽ハイトワゴン「ムーヴ」が、およそ10年ぶりにフルモデルチェンジ。スライドドアの採用が話題となっている新型だが、魅力はそれだけではなかった。約2年の空白期間を経て、全く新しいコンセプトのもとに登場した7代目の仕上がりを報告する。
-
BMW M5ツーリング(4WD/8AT)【試乗記】 2025.9.1 プラグインハイブリッド車に生まれ変わってスーパーカーもかくやのパワーを手にした新型「BMW M5」には、ステーションワゴン版の「M5ツーリング」もラインナップされている。やはりアウトバーンを擁する国はひと味違う。日本の公道で能力の一端を味わってみた。
-
ホンダ・シビック タイプRレーシングブラックパッケージ(FF/6MT)【試乗記】 2025.8.30 いまだ根強い人気を誇る「ホンダ・シビック タイプR」に追加された、「レーシングブラックパッケージ」。待望の黒内装の登場に、かつてタイプRを買いかけたという筆者は何を思うのか? ホンダが誇る、今や希少な“ピュアスポーツ”への複雑な思いを吐露する。
-
BMW 120d Mスポーツ(FF/7AT)【試乗記】 2025.8.29 「BMW 1シリーズ」のラインナップに追加設定された48Vマイルドハイブリッドシステム搭載の「120d Mスポーツ」に試乗。電動化技術をプラスしたディーゼルエンジンと最新のBMWデザインによって、1シリーズはいかなる進化を遂げたのか。
-
NEW
アマゾンが自動車の開発をサポート? 深まるクルマとAIの関係性
2025.9.5デイリーコラムあのアマゾンがAI技術で自動車の開発やサービス提供をサポート? 急速なAIの進化は自動車開発の現場にどのような変化をもたらし、私たちの移動体験をどう変えていくのか? 日本の自動車メーカーの活用例も交えながら、クルマとAIの未来を考察する。 -
NEW
新型「ホンダ・プレリュード」発表イベントの会場から
2025.9.4画像・写真本田技研工業は2025年9月4日、新型「プレリュード」を同年9月5日に発売すると発表した。今回のモデルは6代目にあたり、実に24年ぶりの復活となる。東京・渋谷で行われた発表イベントの様子と車両を写真で紹介する。 -
NEW
新型「ホンダ・プレリュード」の登場で思い出す歴代モデルが駆け抜けた姿と時代
2025.9.4デイリーコラム24年ぶりにホンダの2ドアクーペ「プレリュード」が復活。ベテランカーマニアには懐かしく、Z世代には新鮮なその名前は、元祖デートカーの代名詞でもあった。昭和と平成の自動車史に大いなる足跡を残したプレリュードの歴史を振り返る。 -
NEW
ホンダ・プレリュード プロトタイプ(FF)【試乗記】
2025.9.4試乗記24年の時を経てついに登場した新型「ホンダ・プレリュード」。「シビック タイプR」のシャシーをショートホイールベース化し、そこに自慢の2リッターハイブリッドシステム「e:HEV」を組み合わせた2ドアクーペの走りを、クローズドコースから報告する。 -
第926回:フィアット初の電動三輪多目的車 その客を大切にせよ
2025.9.4マッキナ あらモーダ!ステランティスが新しい電動三輪車「フィアット・トリス」を発表。イタリアでデザインされ、モロッコで生産される新しいモビリティーが狙う、マーケットと顧客とは? イタリア在住の大矢アキオが、地中海の向こう側にある成長市場の重要性を語る。 -
ロータス・エメヤR(後編)
2025.9.4あの多田哲哉の自動車放談長年にわたりトヨタで車両開発に取り組んできた多田哲哉さんをして「あまりにも衝撃的な一台」といわしめる「ロータス・エメヤR」。その存在意義について、ベテランエンジニアが熱く語る。