第281回:スクープ! ミツオカ会長が激白
オロチはニッポン自動車界の集大成だった!!(小沢コージ)
2006.10.04
小沢コージの勢いまかせ!
第281回:スクープ! ミツオカ会長が激白オロチはニッポン自動車界の集大成だった!!
■富山の片田舎から、フェラーリ、ポルシェに真っ向勝負
いやはや、ついにっていうかホントに出ちゃいましたよ。ミツオカ・オロチ(大蛇)! ご存知、日本で10番目にできた日本一小さな自動車メーカー、ミツオカ初のスーパーカーで、2001年の東京モーターショーに参考出品された、まさにヘビみたいなおどろおどろしいカッコの2ドアミドシップカーなんだけど、聞けばエンジンなど主要部品以外、ボディのスペースフレームからシェルからフルオリジナルで、マジメな話、町工場的規模(失礼!)のミツオカを考えると夢のよう。
なんせ今までは日産マーチの上にジャガー風ボディを被せたヴュートとか、ホンダ・アコードベースのヌエラとか、そんなのしか作ってなかったからして。
先日、スーパーアグリF1の鈴木亜久里さんが、フェラーリ、マクラーレンに対して戦う自分を「戦闘機に竹やりで対抗するようなもんだよ(笑)」って自嘲気味にコメントしてたけど、まさにオロチはそのスーパーカー版。お値段1050万円もするし、間違いなく世界のフェラーリ、ポルシェへの富山の片田舎からの真っ向ストレート勝負ってわけだ。
というわけで先日、六本木ヒルズアリーナを貸しきって行われた発表会にうかがったら夢を現実にする男! オロチ製作総指揮者のミツオカ会長、光岡進御大が偶然おられたので、突撃インタビューしちゃいました!
■日本の自動車メーカーの懐の深さを感じました
小沢:おめでとうございます会長! ついにできましたね。申し訳ないですけど、ホントに出るとは思いませんでした……。
会長:東京モーターショーから数えると5年越し、いや実質6年です。お恥ずかしい。遅すぎたくらいですわ(笑)。
小沢:いや、とんでもなく大変だったと思いますよ。だって型式認定をイチから取り直すわけですよね。ミツオカでも94年のゼロワンに続いて2台目じゃないですか。
会長:ドアもあって屋根もあるオリジナルカーとしては初めてなんです(笑)。それになんといっても苦労したのは部品の供給です。私どもレベルではボディはなんとか作れてもエンジンは絶対に無理ですわ。それをトヨタさんに協力してもらってハリアーの3.3リッターV6を快く供給していただきまして。
小沢:よくトヨタが協力してくれましたよね。
会長:それだけじゃないんです。エンジン、トランスミッションはトヨタさんですけど、ブレーキはホンダさん、エアバッグはスズキさん、安全テストは一部マツダさんの施設を使わせていただきましたし、DRD(日産ディーゼル工業の関連会社)さんにも多大な協力をいただきました。
小沢:ええー、そうなんですか! ほとんど日本自動車メーカーの集大成じゃないですか。
会長:昔じゃ考えられないことです。みなさん上り調子のメーカーばかりで、日本の自動車メーカーの懐の深さを感じましたし、つくづく日本も自由になってきたってことですよ。ゼロワンの時はマツダさんからエンジンをもらうのがやっとでしたから。
小沢:会長の長年のがんばりあってこそですよ。ところで衝突実験は?
会長:JARI(日本自動車研究所)さんの施設を使わせていただきました。
小沢:何台潰したんですか。
会長:いまのところ3台。まだ申請を出してる最中なんであと3台潰さにゃアカン。
小沢:ええー、6台! そりゃ億は軽くいってるわ。
会長:うん、いや、まあ、その……いくらかわからんくらいかかっとるわ(笑)。
小沢:試作車は全部で何台作ったんですか。
会長:全部で10台作って、1台はすでに8万キロ走ってます。
小沢:ものすごい手間ヒマかかってますね。1台1050万円で限定400台。勝算はあるんですか。
会長:勝算もなにもコンセプトはね。フェラーリってありまして、とってもカッコいいし速いですけど、乗りこなすのが大変じゃないですか。力もいるし、あんなにスピード出すところもない。だから必要なのは“ファッション・スーパーカー”という概念であって、存在感だけはスーパーカーであとは気持ちよく、時代にあったかたちで走れる、つまり環境にいいというクルマが作りたいと思ったんです。
今は400馬力、500馬力というドイツ主義の“勝ち組”スーパーカーばかりじゃないですか。それも悪くないけど、自分だけが楽しきゃいいのかって。もっと環境に配慮して、なおかつ乗ってる人はもちろんまわりで見てるおじいちゃんおばあちゃんまで楽しめる。そういうスーパーカーもあっていいんじゃないかと。今の勝ち組一辺倒の世界に一石を投じたいと思ったんですよ。
小沢:そういえば会長、いっときフェラーリ持ってましたよね。
会長:そうそれそれ! テスタロッサ持ってた時に40キロ制限の道を30キロオーバーで捕まったんですわ。そのときつくづく考えました。こんなにパワー必要ないのぅと。
小沢:実感こもってますねぇ(笑)。ところで発表会での“オロチの舞”ってのは?
会長:おぉ、これがすごく大切なんですよ。せっかく1000万円も払っていただくわけですから、お客様に引け目を感じてもらっては困るじゃないですか。このオロチは元々日本の神話に出てくる早乙女を食い荒らす悪の権化なんです。そこで私どもは富山の霊験あらたかな雄山神社に行って、魂を入れて貰ってまいりました。でもみなさんを富山までお呼びするわけにはいかないじゃないですか。せめて入魂の舞だけでもお見せしようと思って、今回六本木で行うんですよ。
小沢:なるほど。スーパーカーには性能はもちろん、なによりも神話が必要ですからね。
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うーむ、果たしてその“入魂の舞”とはなかなかの迫力であった。というよりミツオカ会長の熱い“事前説明”があったがゆえ、感情がビンビン伝わる伝わる。ハッキリ言って、申し訳ないですけどハイソなレクサスの発表より気持ちは伝わりました。っていうか比べるもんじゃないけど(笑)。
正直、売れるかどうかは心配なオロチ。だけどもしや俺にアブク銭があったら勢いまかせで!? と思わせるものはありました。幸運を祈ってまっせ、会長!
(文と写真=小沢コージ/2006年10月)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
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