メルセデス・ベンツE320 CDI ステーションワゴン アバンギャルド(FR/7AT)【試乗速報】
日本の高級車像を変えるか 2006.09.15 試乗記 メルセデス・ベンツE320 CDI ステーションワゴン アバンギャルド(FR/7AT) ……877万8000円 厳しい排ガス規制の日本に、メルセデス・ベンツが満の持して導入したディーゼルエンジン搭載車「E320 CDI」。最新ディーゼルはどのように進化したのだろうか。ワゴンモデルに試乗する。不退転の決意
買いたくても買えるクルマがない……気がつけばディーゼル乗用車が新車のラインナップから姿を消していた日本市場。その間に海の向こうのヨーロッパではディーゼルエンジンが急速な進化を遂げ、日本はすっかり取り残されてしまった。
そんなディーゼル鎖国の日本を危惧し、なんとか扉を開けさせようと着々と準備を進めてきたメルセデス・ベンツが、その主力モデルである「Eクラス」で勝負に打って出た。
自慢のディーゼルエンジンは第3世代コモンレールインジェクターを採用し、さらに2個の酸化触媒とDPF(粒子状物質除去フィルター)を搭載するなどして、平成14年排ガス規制(新短期規制)や自動車NOx・PM法をクリア。これにより、自動車NOx・PM法の規制地域でも登録が可能。2007年9月までには平成17年規制(新長期規制)に対応する必要があるが、こちらもエンジンマネージメントの調整で規制をクリアするメドはついている。
「本流のEクラスで挑戦するからには、途中で撤退することなど許されない」そんな意気込みで、メルセデスは「E320CDI」を日本市場に投入したというのだ。
E320CDIは、マイナーチェンジしたEクラスの新しいバリエーションとして日本に紹介されている。Eクラスのリニューアルについてはまた別の機会に報告するとして、さっそくE320CDIに乗り込むことにしよう。
速い・強い・うるさくない
試乗したのは「E320 CDI ステーションワゴン アバンギャルド」。搭載されるV6ディーゼルターボは3リッターという排気量ながら、55.1kgmという超弩級の最大トルクを誇る。この数字は「E550」の5.5リッターV8を上回っているのだ。
運転席に身を委ね、キーを捻るとメーターパネル内に警告灯が点灯。その中のひとつに“グロー”の警告灯があり、すぐに消えたところでエンジンを始動した。多くの人にとって、ディーゼルエンジンは、アイドリングからエンジンのノイズや振動が大きいというイメージがあるだろう。しかし、それは過去の話、日本向けにインシュレーターを増やしたというだけあって、エンジンからの音は気にならないレベルに抑えられている。振動は、ステアリングに添えた指先にかすかに伝わってくる程度。車外に出てみると、カラカラとディーゼルらしい音はするが、ボリュームは小さく、これなら夜の住宅街でも気兼ねする必要はない。
セレクターレバーをDレンジに入れ、ブレーキペダルから右足を離すと、1910kgのボディがいとも簡単に動き出した。そして、アクセルペダルに載せた右足にほんの少し力を込めるだけでトルクが湧き出してきた。まさに“トルクで走る”という印象である。しかも、騒々しさや扱いにくさとは無縁。実に上品に強大なトルクを手懐けることができるのだ。実はこの試乗後にE550をドライブしたのだが、E320CDIのスムーズで力強い加速はそれを凌ぐほどである。
高速道路に入ってもその力強さが衰えることはない。Dレンジ、100km/hの回転数は1500rpmほどで、すこしスピードを上げるくらいならシフトダウンをするまでもなく、同じギアを保ったまま加速は完了してしまう。一方、本線への合流や追い越しのときなどを狙って、待ってましたとばかりにアクセルペダルを思い切り踏み込んでやると、鋭い加速で瞬時に必要なスピードまで到達してしまう。レブリミットが4600rpmとガソリンエンジンに比べてずいぶん低いのだが、2400rpmから4200rpmまでの回転の上がりようは痛快そのもので、実にスポーティだった。
高級車像を改革する
この日は試乗時間のほとんどを高速道路で過ごしたが、245/45R17タイヤを装着したE320CDIの乗り心地は快適で、フラットさも十分。直進安定性も極めて高い。巡航時にエンジンの回転数が低いことも手伝って、窓の外を流れる風景を眺めていると実際のスピードより遅く感じられる。ドライバーにとってはそれが余裕につながるわけだが、それでいて“クルマに載せられている”という感じがないのもE320CDIの魅力である。
かつては、経済性の高さで選んだディーゼル乗用車は、快適性や動力性能で我慢を強いられるのは当然のことだった。もちろんいまでも燃費の良さはガソリンエンジンを上回るディーゼルだが、もう我慢する必要はない。それどころか、ある意味ガソリン車よりも快適で速いとなると、ディーゼルの存在を見過ごすわけにはいかないだろう。Eクラスだけに、そう簡単に手に入る金額ではないが、高級車を望む人にとっては、魅力的な選択肢が増えたのはうれしい事実。このE320CDIが日本の高級車像を変える日はそう遠くない。
(文=生方聡/写真=峰昌宏/2006年9月)

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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