第6回:「ピザ風お好み焼き」ダイハツ・コンパーノ(1963〜69)(前編)
2006.09.13 これっきりですカー第6回:「ピザ風お好み焼き」ダイハツ・コンパーノ(1963〜69)(前編)
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商用車専門メーカーだったダイハツが、初めて手がけた乗用車がコンパーノ。イタリアンルックに身を包み、さまざまなバリエーションを揃えて大衆車市場に臨んだのだが……。
ひとことおわびを……
前回の「NSU Ro80」を記してから半年以上音沙汰がなかったため、「『これっきりですカー』は早くもこれっきりか?」という問いあわせ、お叱りを読者諸氏からいただいた。突っ込まれやすいコーナータイトルをつけてしまったことを後悔したが、今さら遅い。なんてことを言っているとさらにお叱りを受けそうなので、ひとことおわびをして、とっとと本題に入ることにしよう。
「長らくお待たせしてすみませんでした!」。
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■バン/ワゴンから始まった
さて、今回のお題はダイハツ初の量産乗用車として1963年に誕生したコンパーノである。50年代初頭に少量生産された三輪乗用車「Bee(ビー)」を例外として、戦前から三輪・四輪の商用車メーカーとして発展してきたダイハツが、軽三輪トラック「ミゼット」のヒットをバネに乗用車部門進出への意思を表明したのは61年秋のことだった。その年の東京モーターショーに、水冷直4OHV700ccエンジンを搭載した2ドアセダンの試作車を出展したのである。内容はともかく、フィアット1800そっくりのフロントマスクをもったその2ドアセダンのスタイリングは玄人筋から酷評され、試作のみで終わった。だが、あとから考えればこれがダイハツのイタリア指向が顕在化した最初の例だった。
その反省からか、翌62年の東京ショーに「コンパクト・ライトバン」の名で出展されたモデルは、前年のプロトタイプに比べはるかにスマートなボディをまとっていた。それから7カ月後の1963年5月、このライトバンはコンパーノ(イタリア語で「仲間」の意味)と名付けられて発売された。バリエーションは4ナンバーのバンおよびバン・デラックス、そしてバン・デラックスを5ナンバー仕様に改めたワゴンの3種。ちなみにダイハツとは戦前のオート三輪の時代からライバル関係にあったマツダも、コンパーノから半年遅れて初の小型乗用車となるファミリアをデビューさせる際に、バンから始めている。まだ乗用車が「ぜいたく品」とされ、商用車をバリエーションに含めなければ採算が取れなかった当時、勝手知ったる商用車市場で反応を確かめてから、慎重に乗用車市場へ進出しようという思惑は両社に共通していたのだ。
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■デザインはヴィニャーレ
その車名からも明らかなように、コンパーノはイタリア風のスタイリングを特徴としていた。手がけたのはフェラーリやマゼラーティのボディを製作していたことで知られるカロッツェリア、ヴィニャーレ。ミケロッティの手になるプリンススカイライン・スポーツ(62年4月発売)に次ぐ、イタリアンデザイン導入国産車第2号というわけだが、その顔つきは50年代後半から60年代初頭にかけての典型的なイタリアンデザインといえる。基本形式がライトバン、すなわち商用車であるにもかかわらず、円形メーターを採用したインパネなどインテリアデザインもイタリア風で、また左フロントフェンダーにはヴィニャーレのエンブレムが付くなど、オリジナルデザインを尊重している雰囲気が感じられた。
いっぽう、コンパーノの機構はきわめてコンベンショナルだった。1 リッター以下の小型車としては当時としても珍しい、頑丈なはしご形のセパレートフレームの前部に排気量797ccの水冷直4OHVエンジンを置き、4段フルシンクロのギアボックスを介して後輪を駆動する。サスペンションもごく平凡で、フロントがダブルウィッシュボーン/コイルの独立、リアがリーフ・リジッドだった。イタリアンルックをまとってはいるものの、中身はいってみれば浪速生まれの堅牢無比なトラック。コンパーノは「ピザ風味のお好み焼き」のようなクルマだったのである。
(後編へつづく)
(文=田沼 哲/2002年2月26日)

田沼 哲
NAVI(エンスー新聞)でもお馴染みの自動車風俗ライター(エッチな風俗ではない)。 クルマのみならず、昭和30~40年代の映画、音楽にも詳しい。
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第53回:「これっきりモデル」in カローラ・ヒストリー〜その4「謎のスプリンター」〜 2006.11.23 トヨタ・スプリンター1200デラックス/1400ハイデラックス(1970-71)■カローラからの独立1970年5月、カローラが初めて迎えたフルモデルチェンジに際して、68年に初代カローラのクーペ版「カローラ・スプリンター」として登場したスプリンターは、新たに「トヨタ・スプリンター」の名を与えられてカローラ・シリーズから独立。同時にカローラ・シリーズにはボディを共有する「カローラ・クーペ」が誕生した。基本的に同じボディとはいえ、カローラ・セダンとほとんど同じおとなしい顔つきのカローラ・クーペに対して、独自のグリルを持つスプリンターは、よりスポーティで若者向けのムードを放っていた。バリエーションは、「カローラ・クーペ」「スプリンター」ともに高性能版の「1200SL」とおとなしい「1200デラックス」の2グレード。エンジンは初代から受け継いだ直4OHV1166ccで、「SL」にはツインキャブを備えて最高出力77ps/6000rpmを発生する3K-B型を搭載。「デラックス」用のシングルキャブユニットはカローラとスプリンターで若干チューンが異なり、カローラ版は68ps/6000rpm(3K型)だが、スプリンター版は圧縮比が高められており73ps/6600rpm(3K-D型)を発生した。また、前輪ブレーキも双方の「SL」と「スプリンター・デラックス」にはディスクが与えられるのに対して、「カローラ・クーペ・デラックス」ではドラムとなっていた。つまり外観同様、中身も「スプリンター」のほうがよりスポーティな味付けとなっていたのである。しかしながら、どういうわけだか「スプリンター1200デラックス」に限って、そのインパネには当時としても時代遅れで地味な印象の、角形(横長)のスピードメーターが鎮座していたのだ。
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第52回:「これっきりモデル」in カローラ・ヒストリー〜その3「唯一のハードトップ・レビン」〜 2006.11.15 トヨタ・カローラ・ハードトップ1600レビン(1974-75)■レビンとトレノが別ボディに1974年4月、カローラ/スプリンターはフルモデルチェンジして3代目となった。ボディは2代目よりひとまわり大きくなり、カローラには2/4ドアセダンと2ドアハードトップ、スプリンターには4ドアセダンと2ドアクーペが用意されていた。このうち4ドアセダンは従来どおり、カローラ、スプリンターともに基本的なボディは共通で、グリルやリアエンドなどの意匠を変えて両車の差別化を図っていた。だが「レビン」や「トレノ」を擁する2ドアクーペモデルには、新たに両ブランドで異なるボディが採用されたのである。カローラはセンターピラーのない2ドアハードトップクーペ、スプリンターはピラー付きの2ドアクーペだったのだが、単にピラーの有無ということではなくまったく別のボディであり、インパネなど内装のデザインも異なっていた。しかしシャシーはまったく共通で、「レビン」(型式名TE37)および「トレノ」(同TE47)についていえば、直4DOHC1.6リッターの2T-G/2T-GR(レギュラー仕様)型エンジンはじめパワートレインは先代から踏襲していた。ボディが大型化したこと、および双方とも先代ほど簡素でなくなったこともあって車重はレビン930kg、トレノ925kgと先代より60〜70kg前後重くなった。
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第51回:「これっきりモデル」in カローラ・ヒストリー〜その2「狼の皮を被った羊(後編)」〜 2006.11.10 トヨタ・カローラ・レビンJ1600/スプリンター・トレノJ1600(1973-74)■違いはエンブレムのみ1972年3月のレビン/トレノのデビューから半年に満たない同年8月、それらを含めたカローラ/スプリンターシリーズはマイナーチェンジを受けた。さらに翌73年4月にも小規模な変更が施されたが、この際にそれまで同シリーズには存在しなかった、最高出力105ps/6000rpm、最大トルク14.0kgm/4200rpmを発生する直4OHV1.6リッターツインキャブの2T-B型エンジンを積んだモデルが3車種追加された。うち2車種は「1600SL」と「1600SR」で、これらはグレード名から想像されるとおり既存の「1400SL」「1400SR」のエンジン拡大版である。残り1車種には「レビンJ1600/トレノJ1600」という名称が付けられていたが、これらは「レビン/トレノ」のボディに、DOHCの2T-Gに代えてOHVの2T-B型エンジンを搭載したモデルだった。なお、「レビンJ1600/トレノJ1600」の「J」は「Junior(ジュニア)」の略ではないか言われているが、公式には明らかにされていない。トランクリッド上の「Levin」または「Trueno」のエンブレムに追加された「J」の文字を除いては、外から眺めた限りでは「レビン/トレノ」とまったく変わらない「レビンJ/トレノJ」。だがカタログを眺めていくと、エンジンとエンブレムのほかにも「レビン/トレノ」との違いが2点見つかった。
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第50回:「これっきりモデル」in カローラ・ヒストリー〜その1「狼の皮を被った羊(前編)」〜 2006.11.6 誕生40周年を迎えた2006年10月に、10代目に進化したトヨタ・カローラ。それを記念した特別編として、今回は往年のカローラおよびその兄弟車だったスプリンター・シリーズに存在した「これっきりモデル」について紹介しよう。かなりマニアックな、「重箱の隅」的な話題と思われるので、読まれる際は覚悟のほどを……。トヨタ・カローラ・レビンJ1600/スプリンター・トレノJ1600(1973-74)■スパルタンな走りのモデル型式名TE27から、通称「27(ニイナナ)レビン/トレノ」と呼ばれる、初代「カローラ・レビン1600/スプリンター・トレノ1600」。英語で稲妻を意味する「LEVIN」、いっぽう「TRUENO」はスペイン語で雷鳴と、パンチの効いた車名を冠した両車は、2代目カローラ/スプリンター・クーペのコンパクトなボディに、セリカ/カリーナ1600GT用の1.6リッターDOHCエンジンをブチ込み、オーバーフェンダーで武装した硬派のモデルとして、1972年の登場から30余年を経た今なお、愛好家の熱い支持を受けている。「日本の絶版名車」のような企画に必ずといっていいほど登場する「27レビン/トレノ」のベースとなったのは、それらが誕生する以前のカローラ/スプリンターシリーズの最強モデルだった「クーペ1400SR」。SRとは「スポーツ&ラリー」の略で、カローラ/スプリンター・クーペのボディに、ツインキャブを装着して最高出力95ps/6000rpm、最大トルク12.3kgm/4000rpmを発生する直4OHV1407ccエンジンを搭載したスポーティグレードだった。ちなみにカローラ/スプリンター・クーペには、1400SRと同じエンジンを搭載した「1400SL」というモデルも存在していた。「SL」は「スポーツ&ラクシュリー」の略なのだが、このSLに比べるとSRは装備が簡素で、より硬い足まわりを持った、スパルタンな走り重視のモデルだったのである。
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