マツダ・アクセラスポーツ23S(FF/5AT)【ブリーフテスト】
マツダ・アクセラスポーツ23S(FF/5AT) 2006.08.25 試乗記 ……244万4000円 総合評価……★★★★ マツダのハッチバック「アクセラスポーツ」がマイナーチェンジ。外観や動力などに大幅な変更はないものの、ボディ剛性強化やシャシーの改善などハンドリングと乗り心地の改善に力を入れたという。従来型モデルで4段ATに不満を持った笹目二朗は、新採用の5段ATにどのような評価を下すのか。![]() |
やっとここまできたか
走り出してすぐ、これはヨーロッパ車みたいだと思った。ボディもしっかりしているしサスペンション剛性もガッシリと強固で信頼できる。シートの座り心地も良好。「フォード・フォーカス」「ボルボS40」とのプラットフォーム共用作戦は、マツダ車に一番の成果をもたらしたといえよう。日本車はボディ剛性は確保されていても、サスペンションが華奢な例が多いだけに、「アクセラスポーツ」に乗ると、やっとここまできたかという思いが強い。このサイズにして2.3リッターエンジンはやや贅沢かもしれないが、排ガスや安全性の確保などで今や車重は1.3トンに達する。よって余裕ある走りを求め商品性を確保するためには必要なのかもしれない。しかし本来の実用性能を求める人のために1.5リッターも用意されている。
![]() |
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
「アクセラ」は2003年10月に発売された「ファミリア」の後継車で、セダンボディが「アクセラ」、ハッチバックが「アクセラスポーツ」と呼ばれ、さらに海外では「Mazda3」を名乗る。プラットフォームはグループ内の「フォード・フォーカス」「ボルボS40」と共有。エンジンは1.5、2、2.3リッターの3本立てとなる。
2006年6月にマイナーチェンジが行われ、フェイスリフトやボディ剛性の強化、アクティブマチック付き5段ATの採用(2.3と2リッターのみ)などがなされた。同時に、2.3リッターターボを積むハイパフォーマンスグレード「マツダスピードアクセラ」を追加設定した。
(グレード概要)
テスト車の2.3Sは従来5段MT仕様が存在したが、マイナーチェンジにより5段ATモデルのみとなった。外観ではエアロバンパーやルーフスポイラーなど各種エクステリアパーツが奢られ、17インチタイヤが装着される。プレミアムガソリン対応となる2.3リッターエンジンは171psというパワーを発生。それを受け止めるべく、フロントには16インチの大径ベンチレーテッドディスクブレーキが奢られる。横滑り防止装置のDSCはオプション。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
従来型とどこが変わったのか詳細に見比べないとわからない。量産効果で作り慣れてきたのか、仕上げは細部までキッチリして、低級音の発生もなく、気持ちよく感じる。独立した3つのメーターは見やすいが、オレンジの文字と針は光のあたり具合で不鮮明な時もある。ハンドル径は適度に小径で回しやすい。ATのマニュアルシフトボタンはアップとダウンの方向性を左右で同じにして見識を感じるものの、若干使いづらく、直接シフトレバーを操作することのほうが多かった。今ひとつ工夫がほしい。
(前席)……★★★★
少しではあるが座面も背面もサイドが盛り上がっていて、コシのある深めのクッションストロークにより横方向のサポートだけでなく全体によくフィットする。ランバーサポート調整はないが、短時間の試乗ではそれほど問題はなかった。座面の前後長も不足はない。表皮の布はザックリした粗目の繊維でベトつかず夏でも快適。テレスコピック/チルトの2方向調整によりハンドルとの位置関係も良好に保てる。
(後席)……★★★★
このクラスとしては比較的高めの座面。前がよく見え、膝から下の脚の角度も立ち気味で前に投げ出さなくて済むし、靴の先は前シートの下に問題なく納まる。背もたれの角度は寝すぎておらず立ち気味。しかしハッチバックゆえ頭のすぐ後ろにバックウィンドウが迫る感覚は薄らぎ、高めのルーフによりヘッドクリアランスもまずまず、ということで空間的な圧迫感は少ない。乗り心地は前席よりやや上下動を感じるが、エンジンから遠ざかった分は静けさが増して、総じて快適度は良好。
(荷室)……★★★
外から見て想像するより広い空間が確保されている。内張りトリムもキッチリと張られ、高級指向。フロアを上げると浅いが小物入れも現れて便利だ。しかしその下にあるスペアタイアは取り出しにくい。荷室までの奥行きがやや深めで位置も高いため、雨の時などはバンパーにあたったズボンなどが汚れそう。ハッチゲートは屋根になるほど切り立ってはいない。ゲートそのものはガスストラット付きで操作力は軽くてすむ。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
ATが4段から5段になったことがこのマイナーチェンジで一番の福音といえよう。加速はより細分化されたステップアップ比により、滑らかで効率よく繋がるようになった。エンジンそのものはバランスシャフトの恩恵もありスムーズに7000rpmまで回るが、今度はそこまで回さずともギアボックスのカバーする領域が増えたことにより、全体的に静かに走れるようになった。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
乗り心地、ハンドリングともに欧州車のそれと肩を並べるほどで、不満は少ない。サスペンション剛性がここまで確保された例はマツダ車では初めてだろう。★が5つつかない僅かなマイナスの理由は、直進時の路面フィールが希薄な点だ。しかしこれとて操舵してしまえばヨーの立ち上がりも横Gの発生も申し分なく、ステアリングのレスポンスそのものも悪くない。あと5mmホイールオフセットを小さくすれば完璧となろう。
(写真=高橋信宏)
【テストデータ】
報告者:笹目二朗
テスト日:2006年7月14日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2006年式
テスト車の走行距離:--
タイヤ:(前)205/50R17(後)同じ(いずれもブリヂストン ポテンザRE040)
オプション装備:SRSエアバッグシステム(6万8250円)/DSC(6万3000円)/ディスチャージヘッドランプ+撥水機能(6万3000円)/BOSEサウンドシステム(6万8250円)/アドバンストキーレスエントリー&スタートシステム(3万1500円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2):高速道路(5):山岳路(3)
テスト距離:--
使用燃料:--
参考燃費:--

笹目 二朗
-
ランボルギーニ・ウルスSE(4WD/8AT)【試乗記】 2025.9.3 ランボルギーニのスーパーSUV「ウルス」が「ウルスSE」へと進化。お化粧直しされたボディーの内部には、新設計のプラグインハイブリッドパワートレインが積まれているのだ。システム最高出力800PSの一端を味わってみた。
-
ダイハツ・ムーヴX(FF/CVT)【試乗記】 2025.9.2 ダイハツ伝統の軽ハイトワゴン「ムーヴ」が、およそ10年ぶりにフルモデルチェンジ。スライドドアの採用が話題となっている新型だが、魅力はそれだけではなかった。約2年の空白期間を経て、全く新しいコンセプトのもとに登場した7代目の仕上がりを報告する。
-
BMW M5ツーリング(4WD/8AT)【試乗記】 2025.9.1 プラグインハイブリッド車に生まれ変わってスーパーカーもかくやのパワーを手にした新型「BMW M5」には、ステーションワゴン版の「M5ツーリング」もラインナップされている。やはりアウトバーンを擁する国はひと味違う。日本の公道で能力の一端を味わってみた。
-
ホンダ・シビック タイプRレーシングブラックパッケージ(FF/6MT)【試乗記】 2025.8.30 いまだ根強い人気を誇る「ホンダ・シビック タイプR」に追加された、「レーシングブラックパッケージ」。待望の黒内装の登場に、かつてタイプRを買いかけたという筆者は何を思うのか? ホンダが誇る、今や希少な“ピュアスポーツ”への複雑な思いを吐露する。
-
BMW 120d Mスポーツ(FF/7AT)【試乗記】 2025.8.29 「BMW 1シリーズ」のラインナップに追加設定された48Vマイルドハイブリッドシステム搭載の「120d Mスポーツ」に試乗。電動化技術をプラスしたディーゼルエンジンと最新のBMWデザインによって、1シリーズはいかなる進化を遂げたのか。
-
NEW
谷口信輝の新車試乗――BMW X3 M50 xDrive編
2025.9.5webCG Movies世界的な人気車種となっている、BMWのSUV「X3」。その最新型を、レーシングドライバー谷口信輝はどう評価するのか? ワインディングロードを走らせた印象を語ってもらった。 -
NEW
アマゾンが自動車の開発をサポート? 深まるクルマとAIの関係性
2025.9.5デイリーコラムあのアマゾンがAI技術で自動車の開発やサービス提供をサポート? 急速なAIの進化は自動車開発の現場にどのような変化をもたらし、私たちの移動体験をどう変えていくのか? 日本の自動車メーカーの活用例も交えながら、クルマとAIの未来を考察する。 -
NEW
新型「ホンダ・プレリュード」発表イベントの会場から
2025.9.4画像・写真本田技研工業は2025年9月4日、新型「プレリュード」を同年9月5日に発売すると発表した。今回のモデルは6代目にあたり、実に24年ぶりの復活となる。東京・渋谷で行われた発表イベントの様子と車両を写真で紹介する。 -
新型「ホンダ・プレリュード」の登場で思い出す歴代モデルが駆け抜けた姿と時代
2025.9.4デイリーコラム24年ぶりにホンダの2ドアクーペ「プレリュード」が復活。ベテランカーマニアには懐かしく、Z世代には新鮮なその名前は、元祖デートカーの代名詞でもあった。昭和と平成の自動車史に大いなる足跡を残したプレリュードの歴史を振り返る。 -
ホンダ・プレリュード プロトタイプ(FF)【試乗記】
2025.9.4試乗記24年の時を経てついに登場した新型「ホンダ・プレリュード」。「シビック タイプR」のシャシーをショートホイールベース化し、そこに自慢の2リッターハイブリッドシステム「e:HEV」を組み合わせた2ドアクーペの走りを、クローズドコースから報告する。 -
第926回:フィアット初の電動三輪多目的車 その客を大切にせよ
2025.9.4マッキナ あらモーダ!ステランティスが新しい電動三輪車「フィアット・トリス」を発表。イタリアでデザインされ、モロッコで生産される新しいモビリティーが狙う、マーケットと顧客とは? イタリア在住の大矢アキオが、地中海の向こう側にある成長市場の重要性を語る。