マツダ・アクセラスポーツ/マツダスピードアクセラ【試乗記】
楽しさと実用性は全グレードに 2006.07.14 試乗記 マツダ・アクセラスポーツ/マツダスピードアクセラ グループ内で「フォード・フォーカス」「ボルボS40」とプラットフォームを共有する「マツダ・アクセラ」が、2006年6月6日にマイナーチェンジされた。同時に追加されたホットハッチ「マツダスピードアクセラ」を含め、グレード別に乗り比べてわかった「アクセラ」の魅力とは……。 拡大 |
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1.5超ハッチバックの代表選手
小さくても荷物をたくさん積めて、運転もしやすくデザインも親しみやすい。常に弱者の味方であり、ときには「走り」においても十二分に楽しませてくれる。それがかつてのハッチバックである。
しかし「ホンダ・シビック」が去り、「三菱ミラージュ」が消え、「トヨタ・ヴィッツ」や「日産マーチ」といったコンパクトカー、果ては軽自動車たちが台頭した結果、国内において1.5リッター以上のハッチバックの居場所は、非常に少なくなってしまった。
そんな国内市場で、ひとり活気にあふれている「マツダ・アクセラ」が、セダンと共にマイナーチェンジを果たした。エンジンラインナップは1.5、2、2.3リッターの3本立てと変わらないものの、1.5リッター以外のATは4段を5段に変更。さらに2リッターには4WDモデル(4AT)が加えられた。
外観はホイールの意匠変更や一本バーのフロントグリルを新採用するなど、全体的にすっきりとした化粧直しを行い、エンジン面のリファインとしてはこれまでのVIS(バリアブルインダクションシステム)に加え、S-VT(シーケンシャルバルブタイミング機構)と電子制御スロットル(1.5リッターはなし)を付け加えた。加えてボディの剛性強化と足まわりのチューニングがマイナーチェンジのメインメニューとなる。
そして最もスポーティなモデルとして、2.3リッターDISIターボ+6段MTを搭載する「マツダスピードアクセラ」が登場したことも、ひとつの大きなトピックといえる。
今回は、国産ハッチバックの代表選手に(自然に)なってしまった「アクセラスポーツ」の、進化と真価を確かめるべく試乗会に臨んだ。
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廉価版にあらず
結論から言うと、今回の試乗の中で最も感心したのは1.5リッターエンジン搭載のベーシックグレード「15C」であった。シリーズ共通のMZRユニットのパワーは最高出力114psと至って普通。にもかかわらず1210kgと決して軽くない車重を、ギアリングが絶妙な4段ATが実にテンポ良く引っ張っていったのだ。
最廉価のECOモデルかと考えていたグレードだったが、思いもよらず「クルマを運転するのってやっぱり楽しい!」と感じた。上級グレードと同じシャシーを使っているという、お買い得感まである。
対して2リッターを搭載する「20S」は、今回新しく搭載されたアクティブマチック式の5段ATのギアリングがうまくかみ合わない印象を持った。これにうまくマッチしていたのは、そのストロークアップを果たした2.3リッターユニットを搭載する「23S」である。
ただこの23Sも、スピードレンジが上がったぶんだけ、他のグレードでは見られなかった瞬間的なリアサスペンションの接地性変化が若干現れた。それは高速コーナー進入時に荷重が大きく移動したときで、修正は容易な範囲ではあるのだが、ウェット時の緊急回避などを考えると、もう少し安定方向にあってもいいだろう。しかしこのクセがわかっていると、それはそれなりに楽しめるものになるはずだ。
ユーティリティモデルである20Cが189万円、スポーティモデルの20Sが206万円。そして2.3リッターの23Sが215万円であることを考えると、少々の値段の差はあれど、スポーティな走りを期待するならば23Sを選ぶほうが賢明であろう。
アクセラスポーツの走りの楽しさと実用性は、各グレードに微妙な味わいの差を持たせつつも、全てに共通していた。その中では上級グレードに目をとらわれがちであるが、実は販売のメインボリュームである1.5リッターのクオリティの高さが光っていた。ここに、アクセラの真価が見いだせたように思える。そしてそれを達成させたのは、マツダの地道なまでのシャシーの磨き上げや、エンジンの改良といった、一連の進化だと思われる。
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凄味はないが……
マイナーチェンジと同時にリリースされたマツダスピードアクセラ(以下MSアクセラ)は、アクセラ販売促進のための飛び道具的な存在だろう。
搭載される高出力ユニットMZR2.3リッターDISIターボは264psを発生。4000rpm以下では2リッターのNAモデルのように穏やかなのだが、それがひとたび4000〜5500rpmにさしかかると、のけぞるような加速を炸裂させるじゃじゃ馬だ。
しかしアクセルペダルを床まで踏みつけたときのシャシーマナーはすこぶる良い。フロントアクスルのジャダーは見事に抑え込まれ、タイヤは路面をしっかりとつかんでいるのである。
これはマイナーチェンジで補強されたベースボディを、フロントカウルメンバー/アンダーフロア部分/リアサスタワー下部にかけて、さらに補強したおかげであろう。ボディ剛性向上の恩恵は街乗りなどにも有益で、いわゆる現代のホットハッチにありがちな、「飛ばせばいいが低速域はゴツい」乗り心地とは一線を画すしなやかさを持っているのだ。
アクセラスポーツ比で約60%向上されたロール剛性、ハイパワー向けにチューニングされた足まわりと、ステアリング舵角と連携したエンジントルク制御方式によって、コーナリング時のステア特性も非常にナチュラル。旋回ブレーキ時においても、23Sに見られたようなリアの接地性不足を感じられなかった。
MSアクセラは、ゴルフでいうところのGTI、アルファ147ではGTAのようなスペシャルモデルだが、それらが醸し出す「凄味」は持ち合わせていない。それゆえ、スマートな外観はもの足りなさを覚えるかもしれない。
だが、むしろ今回はそれを肯定したい気持ちになった。ライバルにひけを取らない速さを持ちながらも、それをひけらかさないことこそが、MSアクセラのオリジナリティだと強く感じたからだ。
(文=山田弘樹/写真=峰昌宏/2006年7月)

山田 弘樹
ワンメイクレースやスーパー耐久に参戦経験をもつ、実践派のモータージャーナリスト。動力性能や運動性能、およびそれに関連するメカニズムの批評を得意とする。愛車は1995年式「ポルシェ911カレラ」と1986年式の「トヨタ・スプリンター トレノ」(AE86)。
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