レクサスGS450h“version L”(FR/CVT)【ブリーフテスト(前編)】
レクサスGS450h“version L”(FR/CVT)(前編) 2006.05.18 試乗記 ……772万6250円 総合評価……★★★ 華々しいローンチから一転、日本市場での低迷が伝えられるレクサス。しかしトヨタが手をこまねいているはずはなく、コア技術のハイブリッドを武器にした「GS450h」を投入した。 まずは世界初の本格FRハイブリッドの仕組みについて。“レクサス・ロケット”の第2弾
鳴り物入りで国内市場に投入されたレクサス・ブランドの販売は、当初の予定の約半分と低迷気味だが、たぶん、トヨタはそれほど懸念していないはずだ。レクサスにとって最大の市場は、全販売台数の約8割を占めるアメリカである。ここを最優先したうえで、国内販売政策を展開しなければならない。アメリカを守りつつも、国内はじっくりと開拓していこうというのがトヨタの計画であり、これから順次、強力なウェポンがラインナップに追加されるからだ。
日本におけるレクサス・ブランドはまず、精緻な機械作り、優れた品質管理、そして顧客をくすぐるような販売システムという“従来の武器”で、アメリカと同様に打って出た。これを市場開拓用ロケットの第1弾とするなら、次いでさらに強引に加速させる第2弾がハイブリッド路線である。ガソリン・ハイブリッドに関しては、世界中でトヨタは完全に独走態勢に入った。この最大の武器をレクサスではフルに生かしていくことで、アメリカ、日本だけでなく、ヨーロッパも含めた本当のプレミアム・ブランドになるための、高い壁を越えようとトヨタは狙っている。
その既定路線に従ってまず登場したのがGSのハイブリッド版「GS450h」である。これは世界で初めての、本格的後輪駆動型ハイブリッド乗用車でもあるのだ。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
日本で実質的に最初のレクサスとして登場した「GS」は、従来、国内で「アリスト」と呼ばれてきたスポーティサルーンの後継でもある。基本的にはクラウンのプラットフォームをベースにしながら、レクサスとしての造形言語をフルに盛り込んだボディを与えられ、すべてのコンポーネンツも目的に合わせて再設計された。もちろん製造管理や仕上げ品質はトヨタの中でもさらに徹底され、装備も最上のものが用意される。これまでのモデルは、3.5リッターV6(2WDと4WD)の「GS350」と、セルシオと同系の4.3リッターV8を搭載する「GS430」の2種だったが、2006年3月16日に加わったのが「GS450h」だ。
(グレード概要)
450hの“h”は、いうまでもなくトヨタ・ハイブリッドの象徴。GS350と基本的には同じ3.5リッターV6の直噴ガソリン・ユニットを使うが、システムの特性に合わせて、296ps(218kW)、37.5kgm(368Nm)と、GS350よりわずかに抑えられている。
ここに組み合わされるのがトヨタのハイブリッド中で最強の147kW(200ps)を発するモーターだ。288Vの定格電圧を650Vまで上昇させる可変電圧システムによって、全体で254kW、つまり345psというシステム出力を発揮。ほとんど4.5リッター・エンジンに匹敵する力、特に加速性能を得た。このことから「GS450h」の名前が与えられた。
「プリウス」や「ハリアーハイブリッド」と異なり、ハイブリッドシステムで新しいのは、駆動モーターに2段変速機構を与えたことだ。加速や高速巡航時に自動的に切り替えてモーター効率を有効に利用している。また電子制御の無断変速機には、意図的に6段階に切り替えられる、マニュアルモードも採り入れられた。
モーターの変速機構追加に加えて、リアに置かれたバッテリーのために、車両重量は1890kgとGS430より190kg、GS350より250kgも増えた。一方、10・15モード燃費は上記両モデルの9.1、10.0km/リッターに対して14.2km/リッターという数値を得たことが、このクルマの最大のアピール・ポイントである。
テスト車の「バージョンL」は本革内装などの装備に加えて、ミリ波レーダーを使ったプリクラッシュセーフティ、ドライバー・アシスト・ブレーキング・コントロール、レーン・キーピング・アシストなどの安全装備も満載。価格は標準版450hの680万円に対してバージョンLは770万円。ちなみにGS350は520〜560、430は630万円だから、ハイブリッド版はかなり戦略的な価格設定が成されている。(中編につづく)
(文=大川悠/写真=荒川正幸/2006年5月)
・レクサスGS450h“version L”(FR/CVT)(中編)
http://www.webcg.net/WEBCG/impressions/000018165.html
・レクサスGS450h“version L”(FR/CVT)(後編)
http://www.webcg.net/WEBCG/impressions/000018166.html

大川 悠
1944年生まれ。自動車専門誌『CAR GRAPHIC』編集部に在籍後、自動車専門誌『NAVI』を編集長として創刊。『webCG』の立ち上げにも関わった。現在は隠居生活の傍ら、クルマや建築、都市、デザインなどの雑文書きを楽しんでいる。
-
ランボルギーニ・ウルスSE(4WD/8AT)【試乗記】 2025.9.3 ランボルギーニのスーパーSUV「ウルス」が「ウルスSE」へと進化。お化粧直しされたボディーの内部には、新設計のプラグインハイブリッドパワートレインが積まれているのだ。システム最高出力800PSの一端を味わってみた。
-
ダイハツ・ムーヴX(FF/CVT)【試乗記】 2025.9.2 ダイハツ伝統の軽ハイトワゴン「ムーヴ」が、およそ10年ぶりにフルモデルチェンジ。スライドドアの採用が話題となっている新型だが、魅力はそれだけではなかった。約2年の空白期間を経て、全く新しいコンセプトのもとに登場した7代目の仕上がりを報告する。
-
BMW M5ツーリング(4WD/8AT)【試乗記】 2025.9.1 プラグインハイブリッド車に生まれ変わってスーパーカーもかくやのパワーを手にした新型「BMW M5」には、ステーションワゴン版の「M5ツーリング」もラインナップされている。やはりアウトバーンを擁する国はひと味違う。日本の公道で能力の一端を味わってみた。
-
ホンダ・シビック タイプRレーシングブラックパッケージ(FF/6MT)【試乗記】 2025.8.30 いまだ根強い人気を誇る「ホンダ・シビック タイプR」に追加された、「レーシングブラックパッケージ」。待望の黒内装の登場に、かつてタイプRを買いかけたという筆者は何を思うのか? ホンダが誇る、今や希少な“ピュアスポーツ”への複雑な思いを吐露する。
-
BMW 120d Mスポーツ(FF/7AT)【試乗記】 2025.8.29 「BMW 1シリーズ」のラインナップに追加設定された48Vマイルドハイブリッドシステム搭載の「120d Mスポーツ」に試乗。電動化技術をプラスしたディーゼルエンジンと最新のBMWデザインによって、1シリーズはいかなる進化を遂げたのか。
-
NEW
BMWの今後を占う重要プロダクト 「ノイエクラッセX」改め新型「iX3」がデビュー
2025.9.5エディターから一言かねてクルマ好きを騒がせてきたBMWの「ノイエクラッセX」がついにベールを脱いだ。新型「iX3」は、デザインはもちろん、駆動系やインフォテインメントシステムなどがすべて刷新された新時代の電気自動車だ。その中身を解説する。 -
NEW
谷口信輝の新車試乗――BMW X3 M50 xDrive編
2025.9.5webCG Movies世界的な人気車種となっている、BMWのSUV「X3」。その最新型を、レーシングドライバー谷口信輝はどう評価するのか? ワインディングロードを走らせた印象を語ってもらった。 -
NEW
アマゾンが自動車の開発をサポート? 深まるクルマとAIの関係性
2025.9.5デイリーコラムあのアマゾンがAI技術で自動車の開発やサービス提供をサポート? 急速なAIの進化は自動車開発の現場にどのような変化をもたらし、私たちの移動体験をどう変えていくのか? 日本の自動車メーカーの活用例も交えながら、クルマとAIの未来を考察する。 -
新型「ホンダ・プレリュード」発表イベントの会場から
2025.9.4画像・写真本田技研工業は2025年9月4日、新型「プレリュード」を同年9月5日に発売すると発表した。今回のモデルは6代目にあたり、実に24年ぶりの復活となる。東京・渋谷で行われた発表イベントの様子と車両を写真で紹介する。 -
新型「ホンダ・プレリュード」の登場で思い出す歴代モデルが駆け抜けた姿と時代
2025.9.4デイリーコラム24年ぶりにホンダの2ドアクーペ「プレリュード」が復活。ベテランカーマニアには懐かしく、Z世代には新鮮なその名前は、元祖デートカーの代名詞でもあった。昭和と平成の自動車史に大いなる足跡を残したプレリュードの歴史を振り返る。 -
ホンダ・プレリュード プロトタイプ(FF)【試乗記】
2025.9.4試乗記24年の時を経てついに登場した新型「ホンダ・プレリュード」。「シビック タイプR」のシャシーをショートホイールベース化し、そこに自慢の2リッターハイブリッドシステム「e:HEV」を組み合わせた2ドアクーペの走りを、クローズドコースから報告する。