レクサスGS プロトタイプ(FR/6AT)【試乗記】
ニッポンの道しるべ 2011.11.28 試乗記 レクサスGS プロトタイプ生まれ変わった「レクサスGS」のプロトタイプに試乗。このモデルには、日本(人)がグローバルに活躍するためのヒントが隠されていた!?
帰国子女メイク
「GSという名前を変えてもいいぐらいだと思っています」「レクサス第2章の幕開けです」
これは、新型「レクサスGS」の開発のまとめ役を務めた、金森善彦チーフエンジニアの言葉だ。レクサス・ブランドの屋台骨を支えるはずのGSであるけれど、現行モデルは正直、世界的に見てもパッとしなかった。そこで新型「GS」の開発にあたっては、特にデザインと走りを根っこから変えたのだという。
新型「レクサスGS」のプロトタイプの試乗会は、富士スピードウェイで行われた。駐車場に何十台と並んだプロトタイプの顔は、確かに現行モデルから雰囲気ががらりと変わった。
現行型は喜怒哀楽を感じさせない、クールな表情だ。一方、「スピンドルグリル」とLEDを組み合わせた新型の顔からは、はっきりとした感情、ギラギラとした野心が感じられる。「やったるでー」とか「ルック・アット・ミー」的な自己主張があるのだ。
この顔は何かに似ている! と思ってピンときたのが帰国子女のメイクだ。ほら、帰国子女の女性って、みんなアイラインが濃くて独特の雰囲気があるじゃないですか。新型レクサスGSのフロントマスクには、帰国子女メイクの「埋もれないわよ!」パワーに似たものを感じる。
顔だけでなく、新型レクサスGSのデザインは全体にソリッドで、削り出しの金属みたいなカタマリ感がかっこいい。ライバルに似ていないし、新しさもある。ただ、ここで頭の中に巨大な「?」マークがふくらむ。「L-finesseはどこへ行ったのでしょうか?」という疑問だ。
「L-finesse」とはレクサス車のデザインのアイデンティティーを表す言葉で、日本語だと「先鋭-精妙の美」と説明される。レクサスのデザインは日本らしい繊細な美しさを追求するから、欧米の高級車の「オラオラ!」的な押し出しの強さとは一線を画すはずではなかったか。
塗装の美しさや線や面の緻密さなど、新型GSにも「L-finesse」的な世界観が生きていることはわかる。それでも、この顔にしたということは「ギラギラ」「オラオラ」の土俵に乗って戦うということだろう。
というモヤモヤした気持ちを抱きながら、新型GSのドアを開く。
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小さな時計の大きな意味
乗り込んでみると、インテリアは「L-finesse」そのものだった。プロトタイプの試乗会ということで左ハンドル仕様、欧州右ハンドル仕様、豪州仕様などが入り乱れていたから、細かな装備は量産型とは違うかもしれない。それでもシンプルでありながら、細部の造り込みや素材の質感、キメ細かい光の演出で“イイ物”感を醸し出すあたりは、「先鋭-精妙の美」をさらに推し進めている。
巨大な、と表現したくなるディスプレイ画面や、とってつけた感のない新しいリモートタッチは、新しさを伝えることに成功している。ただし、サーキット敷地内の試乗ということで、カーナビやオーディオの操作フィーリングを試すことはできなかった。
インテリアでひとつ「おっ!」と思ったのが、レクサスとして初めてアナログ式時計を採用したことだ。いままでアナログ式時計を避けてきたのは、欧米の列強との差別化を図るためだったと推測する。小さなことではあるけれど、インパネに輝くアナログ式時計も、相手の土俵でガチンコ勝負する意志の表れだと見た。
新型レクサスGSのパワートレインのラインナップは3種類。2.5リッターのV6エンジンを積む「GS250」、3.5リッターV6エンジンの「GS350」、そして3.5リッターV6エンジンとモーターを組み合わせたハイブリッドモデルの「GS450h」となる。V8モデルはラインナップから外れた。前出の金森チーフエンジニアによれば、主戦場たる北米でもV8モデルが占める割合はハイブリッドと同程度の約2割。トップ・オブ・ザ・レンジがハイブリッド仕様であることを明確にアピールすれば、販売に大きな影響はないとのことだ。
ひとめ見た瞬間、現行モデルより小さくなったと思ったけれど、それは勘違い。全長とホイールベースは同じで、幅が20mm、高さが30mm増している。フロントのオーバーハングが10mm短くなったことを含めて、全体に引き締まった印象を受けるのでコンパクトに見えるのだろう。フロントマスクからルーフライン、お尻にいたるまでの面とラインが、デザイン処理によって筋肉質になっている。
というわけでルックスは大変身を遂げた新型レクサスGS、ステアリングホイールを握るとどうなのか?
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ベンツとビーエムの中間ぐらい
新型レクサスGSが狙う「走りの質」をわかりやすく表すのが、「LDH」(レクサス・ダイナミック・ハンドリングシステム)だ。これはスポーティー仕様「F SPORT」に標準装備される機構。簡単に言えば、フロントタイヤだけでなくFR(後輪駆動)車のリアタイヤまで操舵(そうだ)する仕組みだ。
いろいろなシチュエーションで「LDH」装着車と非装着車を比較したなかで、違いが最も大きかったのが急に車線変更してから元の車線に戻る、いわゆるダブル・レーン・チェンジだ。
右にステアリングホイールをダッと切って、すぐに左に切り返す。この時、「LDH」装着車は非装着車に比べて、ステアリングホイールの操作がダイレクトにクルマに伝わる。ドライバーとタイヤの距離が近くなったと錯覚するぐらい。クルマがひとつの固い塊となって、スパッと動く。こういう、頭の中に稲妻マークやびっくりマークがともるような走行感覚は、確かに従来型では味わえなかった。
そうした極端な操作をしないで、一般道に近い路面の外周を流すような走り方も試してみる。こういう場面では、「LDH」がないほうが乗り心地はソフトで落ち着いている。
乗り心地とスポーティーなフィーリングのバランスは、ちょうどメルセデス・ベンツとBMWの間ぐらい。すっきりクリアな乗り味をベースに、軽さとしなやかさをトッピングしているあたり、ちょっとアウディに似ていると思った。
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「マークX」や「クラウン」との決別
3種類のパワートレインで意外によかったのが、2.5リッターのV6。軽くて爽やかな回転フィールで、運転しているとドライバーの身も心も軽くなって口笛でも吹きたくなる。
3.5リッターV6は、さらにパワーに余裕があるのは間違いない。特に発進加速や100km/h前後からの加速で、「やっぱりお兄さんのほうが強い」と印象づける。
けれど、マネージメント系を一新して加速フィールがよりリニアでパワフルになったハイブリッド仕様に乗ると、「余裕ある動力性能が欲しければハイブリッドか」という気になる。下からは突き上げられ、上からは押さえつけられる3.5リッターには、中間管理職の難しさがある。
富士スピードウェイ本コースを全力で走って感じるのは、後輪の落ち着き。そして後ろがどっしりしているから、気分よくステアリングホイールを切ることができる。奥さんがしっかりしているからダンナは好き勝手できる、というたとえはちょっと違うかもしれません。
上記の印象をサスペンションや車体設計担当のエンジニアに伝えると、新開発した専用プラットフォーム(車台の基本部分)の効果は絶大とのことだった。現行モデルは「マークX」や「クラウン」と共用したけれど、それじゃ世界の名車と戦えないということで専用設計になったのだ。
というわけで新しいGSはカッコも走りも、ドイツ勢と真っ向勝負を挑むことになる。以前、テリー伊藤さんと故・渡辺和博画伯が「日本車のなかで『レクサスSC430』(かつてのソアラ)だけには白人の豪華さがある」と看破したけれど、おふたりの言葉を借りると新型GSは“白人の豪華さ”方向に振れている。
日本人としては、今までのレクサスがチャレンジしてきた「わび、さび」や「主張しすぎない美しさ」で高級車を作る方向を貫いてほしいという気持ちもある。
けれども、われわれが美徳としてきた「控え目」な態度が、海の向こうでは「むっつりしていて何を考えてるのかワカラン」と受け止められているのかもしれない。そういえばサッカー日本代表の本田圭佑選手も、ヨーロッパに渡ってから「自分の人格を改造した」と言ってたっけ。
世界のみなさんにわかっていただくには、今まで美徳としてきたことはいったん横において、ガンガン主張したほうがいいのか?
レクサス第2章のストーリーは、ある意味で、日本(人)が進むべき道を知るヒントになる。ホントに興味深い。新型GSの日本での発売予定は、2012年初頭。
(文=サトータケシ/写真=高橋信宏)
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サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
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