アルファロメオ・アルファ156 2.0 JTSセレスピード(2ペダル5MT)【ブリーフテスト】
アルファロメオ・アルファ156 2.0 JTSセレスピード(2ペダル5MT) 2004.05.18 試乗記 ……427万8750円 総合評価……★★★★ 世界的ヒット作となった「156」が、ジウジアーロの手によってフェイスリフトされた。自動車ジャーナリストの森口将之は、新デザインに好感をもつが、気になる部分もあるという。
|
顔だけでなく足まわりを
ヨーロッパでも日本でも、アルファロメオの大ヒット作になった「156」。理由のひとつが、デザインにあることは間違いなさそうだ。
ただ個人的に、あのカタチは好きになれなかった。レトロタッチのディテールが、時代の流れに逆行していると感じたこともある。さらに、スポーティさを強調したフォルムとは裏腹に、やけに優しいフロントマスクにも違和感を抱いた。
それだけに、ジウジアーロ・デザインのキリッとした顔を手に入れた新型は、乗る前から個人的に好感がもてた。走り始めると、当初はアルファらしさが失われたと感じた直噴「JTS」ユニットが、旧型のツインスパークに劣らない心地よい吹け上がりとサウンドを取り戻していたことに、うれしくなった。
こうなると、デビュー当初からいわれていたシャシーのキャパシティの低さが気になる。エンジン、ボディと立て続けにバージョンアップしてきた勢いを、足まわりでも持続してほしい。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
1997年デビュー、98年5月から日本に導入されたミドルセダン。ワルター・デ・シルヴァ率いるアルファロメオの「チェントロ・スティレ」の手になるダイナミックなボディフォルム、スポーティな走りがウケて、2003年7月までに日本市場で約1万3700台を販売したヒット作だ。2003年9月にマイナーチェンジを受けた現行モデルは、ジウジアーロ率いるイタルデザインが外観をリフレッシュ。引き締まったフェイス、縦長グリルと鋭い目つきなどにより、スポーティなルックスに磨きをかけた。細部のデザイン変更により、サイズは全長が5mm長くなった。エンジンラインナップは直噴2リッターと2.5リッターV6の2本立て。
なお、3.2リッターの「GTA」だけは、以前の顔のままである。
(グレード概要)
直噴2リッターモデル「JTS」は、5MTとセレスピード、2種類のトランスミッションが用意される。試乗車のセレスピードは、電子制御式油圧作動クラッチを持つ2ペダル5MTだ。タイヤサイズが205/55R16で、2.5リッターとの外観上の識別点となる。
グレードによる装備の違いはほとんどなく、8スピーカーのBOSEサウンドシステムや運転席電動ランバーサポートなど快適装備のほか、VDC(ビークル・ダイナミック・コントロール)、ASR(アンチ・スリップ・レギュレーション)など走行安全装備もすべて標準で備わる。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★★
156のインパネは、2002年のJTSユニット投入と同時にマイナーチェンジが実施されている。昔の「ジュリア・クーペ」を思わせる挑戦的な造形はそのままに、ステアリングホイールのスポークやメーターリング、センターパネルをシルバーでお化粧するなどして、プレミアムな雰囲気もアップした。インパネ表面のシボを、細かい石を敷き詰めたようなタイプにするなど、細かい部分までアルファのブランドイメージにこだわったつくりがうれしい。装備もデュアルゾーン式オートエアコンやBOSEサウンドシステムなど、満足できる内容だ。
(前席)……★★★★
試乗車はオプションのレザーシートが付いていた。ドライビングポジションは、セダンとしてはかなりヒップポイントが低いのが印象的。これだけで「走りそう」という感じがする。そのぶん(?)クッションは薄めで、サポートもそれほどタイトではない。右ハンドルだが、ペダル配置などに違和感はなかった。助手席にも座ってみたが、こちらはインパネの出っ張りがけっこう気になる。156はやっぱりドライバーズカーなのだ。
(後席)……★★★
前席同様、ヒップポイントはセダンとしては低め。身長170cmの人間が前後に座った場合、ひざの前に残る空間は約10cmで、頭は天井スレスレ。つまりこのクラスのセダンとしては狭いほうだが、これはスポーツセダンとしてのパッケージングにこだわった結果だと考えたい。それに、つま先は前席の下に入るし、クッションは前席よりソフトにされているなど、細かい部分はしっかり考えられている。サポート性は後席としては満足なレベル。そしてドアトリムの斜めのステッチ、センターの丸いエアの吹き出し口が、アルファであることをアピールする。
(荷室)……★★★
こちらもスポーツセダンとして割り切っているが、奥行きは限られるものの、幅や深さはそれなりにある。リッドにはダブルリンク式のヒンジを使って、荷室を侵食しないようにしているという配慮も見られる。不便なのは、キーのリモコンか室内のレバーでしか開けることができないこと。盗難の多いイタリアの国情を反映したのかもしれないが、リッドに付いたレバーやボタンに慣れた人間には、違和感が残った。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★★
輸入車としては初のガソリン直噴エンジンでもあるJTSユニットは、1969ccの排気量から、166psと21.0kgmを発生するスペックはいままでどおりだが、乗るとかなり違う。ひとことでいえば、かなりアルファらしくなった。スロットルペダルを踏み込むと、旧型のツインスパークエンジンのようにグウォーンという気持ち良いサウンドを響かせてくれるようになったし、レスポンスも鋭くなった。4000rpm、5000rpmと、回転を上げていくごとに音色を微妙に変えて、それとともに力が湧いてくる。アルファはやっぱりこうでなくちゃ! それでいて、実用域で太いトルクを生み出すJTSの美点はそのままだから、街なかでも運転しやすい。“文武両道”のエンジンだ。
セレスピードは以前よりもシフトダウンがゆっくりになった感じがするが、シフトアップ時の減速感はすくなくなった。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
簡単にいうと、このクルマは路面状況によって印象がかなり変わる。荒れた路面では、乗り心地はフラット感が不足して揺れが続くし、コーナーでは前輪がストロークを使い切って、あっけなくグリップを諦めてしまうことがある。ところが路面が良くなると、156は水を得た魚。クイックなステアリングをまわすと、ノーズをサッとインに入れ、路面をなめるようにコーナリングしていく。理屈抜きに気持ちいい。乗り心地は硬めながら、鋭いショックはうまく抑え込んでくれる。やっぱりアルファはサーキット生まれなんだと納得してしまった。でもそうならば、直進安定性やブレーキはもうすこしがんばってほしい。
(写真=清水健太/2004年5月)
【テストデータ】
報告者:森口将之
テスト日:2004年1月26日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2003年
テスト車の走行距離:4754km
タイヤ:(前) 245/45R18(後)同じ
オプション装備:レザーシート(15万7500円)/メタリックペイント(ハラマブラック/6万8250円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2):高速道路(4):山岳路(4)
テスト距離:355.9km
使用燃料:37.6リッター
参考燃費:9.5km/リッター

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
-
三菱eKクロスEV P(FWD)【試乗記】 2026.10.17 三菱の軽乗用電気自動車(EV)「eKクロスEV」が、一部改良でデザインを刷新! 2022年発売の古参の一台は、台頭するライバルをどう迎え撃つのか? 最新モデルと比べても、キラリと光る魅力はあるのか? 軽EVのパイオニアが擁する一台の実力を確かめた。
-
フィアット・グランデパンダ ハイブリッド ラプリマ(FF/6AT)【試乗記】 2026.10.16 欧州を代表するコンパクトカーの一台である「フィアット・パンダ」が第4世代に進化。新たに「グランデパンダ」を名乗り、日本にやってきた。ずばり新型の見どころは車両の随所にちりばめられた初代モデルへのオマージュである。上位グレード「ラプリマ」の仕上がりをリポートする。
-
フィアット500トリノ ハイブリッド(FF/6MT)【試乗記】 2026.10.13 電気自動車からエンジン搭載車へと華麗に変身! 日本では珍しい、4代目「フィアット500」のマイルドハイブリッドモデルに試乗。1リッターの自然吸気エンジンを6段MTで駆るイタリアンコンパクトは、今のクルマが忘れてしまった楽しさに満ちていた。
-
ボルボES90ウルトラ ツインモーター パフォーマンス(4WD)【試乗記】 2026.10.12 ボルボの電気自動車(BEV)「ES90」のトップモデル「ウルトラ ツインモーター パフォーマンス」を駆り、東京から初秋の新潟へ。往復700kmを超えるロングドライブで分かった新型5ドアハッチバックモデルの実力と、BEVで気になる充電環境のリアルな今を報告する。
-
フェラーリ・プロサングエ ハンドリング スペチアーレ仕様(4WD/8AT)【海外試乗記】 2026.10.8 フェラーリの4ドア4シーターモデル「プロサングエ」に、「ハンドリング スペチアーレ」を名乗るスペシャルバージョンが登場。その走りは従来モデルからどのように変わったのか? 跳ね馬の原産国、イタリアで確かめた。
-
NEW
日産キックスX e-4ORCE(前編)
2026.10.18思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が新型「日産キックス」に試乗。デザインが新しいのはもちろんのこと、まさに下ろしたての最新のパワートレインを搭載。日産の大きな期待を背負ったコンパクトSUVである。箱根のワインディングロードでの印象を聞いた。 -
三菱eKクロスEV P(FWD)【試乗記】
2026.10.17試乗記三菱の軽乗用電気自動車(EV)「eKクロスEV」が、一部改良でデザインを刷新! 2022年発売の古参の一台は、台頭するライバルをどう迎え撃つのか? 最新モデルと比べても、キラリと光る魅力はあるのか? 軽EVのパイオニアが擁する一台の実力を確かめた。 -
写真で解説する「フィアット・グランデパンダ」
2026.10.16画像・写真ステランティスが「フィアットブランドの大きな柱のひとつとなる重要なモデル」と位置づける「グランデパンダ」が日本上陸。その具体的な見どころを、写真とともに解説する。 -
フィアット・グランデパンダ ハイブリッド ラプリマ(FF/6AT)【試乗記】
2026.10.16試乗記欧州を代表するコンパクトカーの一台である「フィアット・パンダ」が第4世代に進化。新たに「グランデパンダ」を名乗り、日本にやってきた。ずばり新型の見どころは車両の随所にちりばめられた初代モデルへのオマージュである。上位グレード「ラプリマ」の仕上がりをリポートする。 -
スズキの未来を徹底検証! 技術戦略説明会から“10年先のスズキの姿”を夢想する
2026.10.16デイリーコラム年間生産500万台で、Dセグメントまでカバーする巨大メーカーに!? スズキが発表した「10年先を見据えた技術戦略2026」を徹底検証。技術開発に製品開発、インドを核としたグローバル戦略などの中身を通して、「10年先のスズキの姿」を予想した。 -
賢い選択 ――キャデラック「LYRIQ」フラットプランのすゝめ――
2026.10.15投資家も太鼓判! 「キャデラック・リリック」×フラットプランという最適解<AD>クルマが変わり、時代も変われば“持ち方”だって変化する? お金のプロである投資家が、「キャデラック・リリック」の残価保証型リースを勧める理由とは? 夢の「2台持ち」をかなえる、最新電気自動車の賢い選び方を考えた。


























