アルファロメオ156 V6 24V Q-SYSTEM【試乗記】
愛するためには理解せよ 2004.04.15 試乗記 アルファロメオ156 V6 24V Q-SYSTEM ……446万7750円 巨匠ジョルジェット・ジウジアーロの手になるフェイスリフト版156。伝統のV6を積む「24V Q-SYSTEM」モデルに、『webCG』エグゼクティブディレクターの大川悠が乗った。アルファのワナ
アルファというのは得なクルマだとつくづく思う。だって多少デキが悪くても「熱いイタリアの血にあふれていた」とか「乗っているだけで楽しくなった」などと書けば、それで許されるところがあるからだ。
でもリポーターはその種のクリシェ(常套句)で逃げるのは、失礼だと思う。読者に対してだけでなく、クルマに対してもだ。まずはきちんと乗って、冷静に観察し、真面目に評価すべきで、熱いとか冷たいとかはその後の話である。
などと説教臭くなってしまったが、それはとりもなおさず自分に対する戒めなのでもある。実はこの日、最初に乗ったときには全然いい印象がなかった。古くさくて乗りにくく、すぐにイヤになった。それが時間とともに変わっていき、夕方までには「これもこれでいいか」となってしまった。
どこがいいのか、一応は分析してみたが、身体に馴染んでくると、機械と人間との間にある距離がどんどん近くなってくるような感じなのである。ということは多分、人間の方が慣らされて、どこかで判断力を奪われるような面があるのだろう。おそらくそれがアルファに代表されるイタリア車特有のワナなのである。
そう思ったとき、「それじゃあ、いかんのじゃないか」と反省し直したから、こんな調子で始めたわけである。
最近追加されたTIではなく、昨2003年夏にマイナーチェンジを受けた156のV6に久しぶりに乗り、156がすでに時代遅れになりつつあることを確認しつつも、アルファ特有の世界に魅せられる人たちの気持ちも理解した。
ジウジアーロが与えた鋭い目つき
1997年秋に155に代わるアルファの主力モデルとなった156。2003年の夏に、外観デザインの、フェイスリフトを主体に新しくなったモデルは、同年9月から日本への導入が始まった。さらに今年1月には、一部モデルにスポーティ仕様のTIが追加されたが、今回持ち出したのはノーマルの156で、2.5リッターV6エンジンにQ4なるマニュアルモード付き4ATを組み合わせたモデル。価格は439万9500円である。
今回のフェイスリフトのメインはフロントデザインの一新。新たに起用されたジョルジェット・ジウジアーロは、伝統の盾を大きくし、ヘッドライトまわりを変えることで、全体の目つき顔つきをより鋭くさせた。メーカーとしてはより若くダイナミックな表情にしたかったのだろう。リアではテールランプが細く、やや大きくなっている。
室内では新しいファブリック素材たるAlfatexが採用され、クルーズコントロールなどというアルファらしからぬ装備も与えられた。さらにダッシュ中央上にはマルチファンクション・ディスプレイも置かれた。
安全装備も年々充実しており、最新のモデルではVDC(ヴィークル・ダイナミック・コントロール=横滑り制御)、ASR(アンチスリップ・レギュレーション=駆動輪スリップ制御)、MSR(エンジン・ブレーキ・コントロール=シフトダウン時のエンジンブレーキ制御)、HDA(ハイドローリック・ブレーキ・アシスト)などが開発、搭載された。
気に入ったら乗ってくれ
最初、クルマを走らせ始めたときの印象はあまりよくなかった。ご自慢の24バルブのV6は、以前ほどは気持ちよく感じない。上までそんなに回りたがらないし、かといって低速トルクも足りない。加えてチップ式を前後や左右ではなくてHパターンにしたQシステムなるトランスミッションを操作しても、そのセッティングは全体的にローギアードだからすぐに頭打ちになるし、シフト自体もそんなに面白くもない。4気筒に付くセレスピードはそれなりにファンだが、個人的には通常のチップ以上の価値を発見できなかった。
それにステアリングが最初は曖昧に感じた。何となくインフォメーションに欠けるように思えたし、確かにクイックだが直進性はよいとはいえない。加えて失望したのがブレーキである。外から見ても17インチホイールのなかに前後ともにスカスカのディスクが見えるが、応答性は秀逸ではないし、テスト車に限ったことかも知れないが、クルマの姿勢変化ももたらす。それに箱根ターンパイクを下ったら多少のフェードの兆候を示した。決して飛ばしたわけではないから、やや容量不足だと思う。
といった最初の印象は、クルマと過ごす時間が増えるとともに次第に好転してくる。一見曖昧に感じるステアリングも、よく観察すると前輪駆動の欠点を一切示さないし、実際は非常に正確なことが分かる。コーナーでは比較的大きなロールを示すが、4本のタイヤはきちんと狙った通りの位置にしがみつく。エンジンも、それなりにドラマを持っていて、特異のノートを奏でる。
たしかに室内の仕上げはよく見ると決して上質ではない。というより大雑把だ。だがデザインは紛れもないアルファであり、60年代のモチーフを守りつつ、これを見事に現代流に解釈している。Alfatexのシート感触もいい。個人的には革張りよりもこちらを好む。
ただしリアシートの住人はあまり心地よくは感じないだろう。後ろのクッションは低く沈んでいるだけでなく、デザイン優先のためにリアサイドの窓は小さいから、何だか暗い穴蔵に入れられたように感じる。それに中央のシートの居心地は最低だから、基本的に4シーターである。メーカーもそう割り切っているのだろう。
要するにアルファは、はなっから実用第一には考えていないし、別にすべてのユーザーを歓迎しようとはしていない。気に入ったら乗ってくれよ、そういう姿勢なのだ。
それをわかったうえで、自分でブレーキや足まわりをいじっていくクルマ、それが156なので、考えてみたら、今でもそんな姿勢でいるというだけで、その存在意義は大きいのだろう。と、やはりクリシェに陥ってしまった。
(写真=峰昌宏/2004年4月)

大川 悠
1944年生まれ。自動車専門誌『CAR GRAPHIC』編集部に在籍後、自動車専門誌『NAVI』を編集長として創刊。『webCG』の立ち上げにも関わった。現在は隠居生活の傍ら、クルマや建築、都市、デザインなどの雑文書きを楽しんでいる。
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