アウディA4 1.8Tクワトロ(5MT)【ブリーフテスト】
アウディA4 1.8Tクワトロ(5MT) 2001.02.16 試乗記 ……399.0万円 総合評価……★★★★品のいいスポーティセダン
日本市場で一時ラインナップから落とされていたA4の4WDモデル「クワトロ」が、2000年9月に復活した。ヤナセ時代に築かれた「奥様の赤いアウディ」から「スポーティ」へ。フォルクスワーゲンからディーラー網を分離した新生アウディは、新しい販売チャネルと、ブランドイメージの再構築に懸命である。
1980年代前半のラリーマシンの末裔は、スポーツサスペンションと専用ホイールで足もとをキメる。ドライバーズシートに座れば、ホワイトメーターがスポーティ。A4シリーズ中、唯一の5段MTを繰って走り始めると、タコメーターの針が2000rpmを超えるあたりから、やんわりとターボが背中を押す。5バルブユニットは、回せば穏やかにパワーを紡ぐが、しかし「ほとばしる」ようなことはない。「うーん、もう一息!」と思わせるところが、なんともお上品。乗り心地もフラットで、ドライブフィールにかつてのラリーウェポンを思わせる荒々しさは微塵もない。小ぶりなステアリングホイールを握りながら、「活動的な奥様に最適」と思って苦笑い。老舗ヤナセとの復縁を果たしたフォーリングスの今後やいかに?
【概要】 どんなクルマ?
(シリーズ概要)
A4シリーズは、1994年10月にデビューしたアウディの屋台骨。セダンとアバント(ワゴン)がある。99年にマイナーチェンジを受け、デザイン、シャシーにリファインを受けた。とはいえ、一時販売台数でBMW3シリーズを凌駕したフォーリングズの名作も、さすがにモデル末期である。2001年モデルとして日本に入るセダンのエンジンラインナップは、1.8リッター直4NA(125ps)とターボ(150ps)、2.4リッターV6(165ps)の3種類。
(グレード概要)
駆動方式とエンジンの組み合わせは、FFが、1.8/2.4リッターのいずれもNA。クワトロは、1.8リッターターボと2.4リッターである。トランスミッションは、1.8Tクワトロのみマニュアルギアボックス。「ノーチラス」という生地のファブリックシートが装着され、前後スライドは手動だが、ランバーサポートは電動で調整可能だ。
【車内&荷室空間】 乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
ホワイトメーター。ポップな書体の数字。乗員を囲むように両サイドのドアにつながる、インパネを横切るシルバーのパネル。ボタン類が整理されたセンターコンソール。クールにデザインされたインパネまわりだ。夜間は、オレンジのバックライトが目に暖かい。
(前席)……★★★
グレーという月並みな色ながら、シートに細かい縦織りの入った洒落たファブリックを使うことによって、インテリアを退屈にしていない。最初のあたりは硬いが、クッションが多い、柔らかめの座り心地。ホールド性もよい。
(後席)……★★★
背もたれはえぐられ、上体を軽くはめ込む感じ。着座位置は高めで、キチンとした姿勢で座らされる。おかげで、比較的狭い足もとのスペースが気にならない。足先がもうすこし前席の下に入るとよかった。上下調整可能なヘッドレストが備わる。
(荷室)……★★★
440リッター(VDA方式)の容量を誇るトランク。スクウェアな形状で、使いやすそうだ。リッドは2本のダンパーで支えられ、ヒンジ類が荷室へ干渉することがない。後席バックレストを倒せば(分割可倒式)、さらなる拡大が可能だ。
【ドライブフィール】 運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
可変吸気および吸気側可変バルブタイミング機構をもつ、アウディ自慢の5バルブユニット。全域にわたって薄く過給がかかり、回転は「まろやか」。ターボバンはないので、回しても爆発的な加速はない。上品なスポーティさ。シフトストロークは特に短くないが、操作感は軽い。キノコのような太いシフトノブが男らしい。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
1.8Tクワトロにはスポーツサスが奢られるが、硬さゆえの不快感は皆無。いわゆるフラットライドで、乗り心地はいい。ただ、高速道路の路面によっては、巡航時に長い周期のピッチングが続くことがあり、ほのかに不快。ハンドリングはやや大味。「曲がり」が楽しいといった類の「スポーティ」ではない。
(写真=河野敦樹)
【テストデータ】
報告者:webCG青木禎之
テスト日:2000年10月31日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2000年型
テスト車の走行距離:1941km
タイヤ:(前)205/55R16/(後)同じ
オプション装備:-
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3):高速道路(6):山岳路(1)
テスト距離:427.6km
使用燃料:42.0リッター
参考燃費:10.2km/リッター

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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