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アウディA4 45 TFSIクワトロSライン(4WD/7AT)

どんどん透き通っていく 2020.12.05 試乗記 高平 高輝 マイナーチェンジした「アウディA4」のトップモデル「45 TFSIクワトロSライン」に試乗。12Vマイルドハイブリッドシステムが組み込まれた新型パワートレインや改良型シャシー、進化したインフォテインメントシステムの仕上がりを確認した。

いつも通りのアウディだが

どこから見ても、いつものように一分の隙もないアウディA4である。しかしながらこれは、ドアパネルまでも含めてエクステリアを大幅に刷新したという新型だ。現行型A4は2016年にフルモデルチェンジした5世代目だが、この度ステーションワゴンの「アバント」や高性能版の「S4」、車高が高いクロスオーバータイプの「オールロードクワトロ」を含めたA4シリーズ全車がマイナーチェンジを受けた。

新しいA4はボディーパネルのほぼすべてが新しいとされ、ブリスターフェンダーとの言葉も使われているものの、全幅の拡大分は5mmだけ、全長も10mmとほんのわずかの延長にとどまっているせいで、そういわれても私には見分けがつかない。

従来型との差異が明確なのは、よりワイドでフラットになったシングルフレームグリルやバンパー両サイドの五角形のインテークなどのフロントまわりだろう。さらにこの「Sライン」と3リッターV6ターボを積む高性能版S4のボンネットの先端部分には「R8」などと同じくスリットが加えられていることが明らかな識別点だ。

これは、WRCのグループBホモロゲーションモデル「スポーツクワトロ」のボンネットに設けられていた3分割エアインテークをモチーフにしたものらしいが、同車に採用された実際のスリットはもっと大きなものだった。ホイールアーチ上部を盛り上げて強調したデザインとともに、最近のアウディのデザインは“クワトロ推し”である。

2020年10月7日に発売された「アウディA4」のマイナーチェンジモデル。今回は、最高出力249PSの2リッター直4ターボにAWDを組み合わせた「45 TFSIクワトロSライン」のステアリングを握った。
2020年10月7日に発売された「アウディA4」のマイナーチェンジモデル。今回は、最高出力249PSの2リッター直4ターボにAWDを組み合わせた「45 TFSIクワトロSライン」のステアリングを握った。拡大
エクステリアでは全モデルに採用されたブリスターフェンダーが特徴。全幅は従来モデルより5mm拡大している。
エクステリアでは全モデルに採用されたブリスターフェンダーが特徴。全幅は従来モデルより5mm拡大している。拡大
大型化されたシングルフレームグリルや往年の「クワトロ」をモチーフにしたというボンネット先端のエアインテーク、バンパー両サイドの五角形のインテークなどが目を引くフロントフェイス。これらはスポーツモデル「S4」とも共通する意匠である。
大型化されたシングルフレームグリルや往年の「クワトロ」をモチーフにしたというボンネット先端のエアインテーク、バンパー両サイドの五角形のインテークなどが目を引くフロントフェイス。これらはスポーツモデル「S4」とも共通する意匠である。拡大
フロントフェンダー左右に「S line」エンブレムを装着する「45 TFSIクワトロSライン」。試乗車の外装色は「ターボブルー」と呼ばれるオプションカラー。
フロントフェンダー左右に「S line」エンブレムを装着する「45 TFSIクワトロSライン」。試乗車の外装色は「ターボブルー」と呼ばれるオプションカラー。拡大
アウディ A4 の中古車

変更されたクワトロシステム

新しいA4セダン/アバントは35 TFSI(最高出力150PS)と45 TFSI(最高出力249PS/AWDのみ)の2種類の2リッター4気筒直噴ターボエンジンが用意され、同時に12Vマイルドハイブリッドシステムを搭載したのが最大のトピックである。さらに標準車、「アドバンスト」、Sラインという3種類のモデルグレードが設定されたのも新しい。45 TFSIクワトロはアドバンストとSラインのみの設定となり、従来の「40 TFSI」は廃止された。

いまだになじめないが、「35」や「45」という数字は排気量や出力を直接指し示すのではなく、だいたいのパワーレンジを表している。現行型「A8」の登場に合わせて、他の車種も最高出力別にモデルのネーミング方法が見直されたものだが、すなわち35は150PS(110kW)以上、40は170PS(125kW)以上、45は230PS~252PS(169kW~185kW)の出力を持つモデルを示す。45 TFSIクワトロについては、最高出力249PS(183kW)/5000-6000rpm、最大トルク370N・m(37.7kgf・m)/1600-4500rpmのスペックは従来型と事実上同一である。アウディが「Sトロニック」と呼ぶ7段DCTの変速機も変わりない。

見た目には分からないが、大きく変わったのは「クワトロ」=AWDのシステムである。従来アウディは縦置きパワートレインにはトルセン式のセルフロッキングセンターデフを採用していたが、新型「A6」から縦置きエンジンでも電子制御クラッチ式とトルセンセンターデフを使い分けるようになった。例えば、3リッターV6ターボ+7段Sトロニックの「A6 55 TFSIクワトロ」は、横置きの「A3」や「Q3」同様、センターデフの代わりの電子制御カップリングに加えてプロペラシャフトの前端に後ろの駆動系を切り離せるAWDクラッチを備えるタイプ。いっぽうV6ターボディーゼル+8段AT用にはトルセンタイプを採用している。

新しいA4クワトロも電子制御カップリングとAWDクラッチを備えるが、もちろんFWDで走行している場合もさまざまなパラメーターからあらかじめ必要性を判断し、いざという場合には瞬時に(A6の場合は0.2秒と説明されている)AWDに復帰するという。クワトロの本家たるアウディにしても、できる限りの燃費向上策を導入しなければいけない時代なのである。

「A4 45 TFSIクワトロSライン」のボディーサイズは全長×全幅×全高=4770×1845×1410mm、ホイールベースは2825mm。車重は1545kgと発表されている。
「A4 45 TFSIクワトロSライン」のボディーサイズは全長×全幅×全高=4770×1845×1410mm、ホイールベースは2825mm。車重は1545kgと発表されている。拡大
「45 TFSI」と呼ばれる2リッター4気筒直噴ターボエンジンは、最高出力249PS/5000-6000rpm、最大トルク370N・m/1600-4500rpmを発生する。燃費値はWLTCモードで12.9km/リッター。
「45 TFSI」と呼ばれる2リッター4気筒直噴ターボエンジンは、最高出力249PS/5000-6000rpm、最大トルク370N・m/1600-4500rpmを発生する。燃費値はWLTCモードで12.9km/リッター。拡大
荷室の床下にマイルドハイブリッドシステム用の12Vリチウムイオンバッテリーと、電装用の12V鉛バッテリーが設置されている。
荷室の床下にマイルドハイブリッドシステム用の12Vリチウムイオンバッテリーと、電装用の12V鉛バッテリーが設置されている。拡大
「A4 45 TFSIクワトロSライン」には、アルカンターラと本革のコンビネーション仕立てとなるスポーツシートが標準装備される。
「A4 45 TFSIクワトロSライン」には、アルカンターラと本革のコンビネーション仕立てとなるスポーツシートが標準装備される。拡大
キャビン後部の室内幅は1446mm、後席座面から天井までの高さは953mm。大人がくつろげる十分なスペースが確保されている。シートヒーターは前席が標準、後席がオプションアイテムとなる。
キャビン後部の室内幅は1446mm、後席座面から天井までの高さは953mm。大人がくつろげる十分なスペースが確保されている。シートヒーターは前席が標準、後席がオプションアイテムとなる。拡大

あらゆる手段を投入する理由

マイナーチェンジの一番の注目点は、前述したようにマイルドハイブリッドシステムをA4シリーズ全モデル(S4を除く)に搭載したことである。48V駆動のA6やA8などとは異なり、リチウムイオン電池とBAS(ベルト駆動オルタネータースターター)を備えた12Vの簡略版だが、それでもアウディによれば100kmあたり0.3リッターの燃料低減の効果があるという。

この数字を見て、そんなものか、と思う人もいるだろうが、ご存じの通り、EU圏内ではCAFE(企業別平均燃費)の新規制値導入が目前である。またその話題かよ、と言うなかれ。欧州を主戦場とするブランドにとっては死活問題である。

来年2021年からは登録新型車の平均CO2排出量を95g/kmとしなければならない。これはメーカー別の新車全体の平均値であり、現在でも130g/kmの規制値を超えた分だけ罰金を支払わなければならないが、それが格段に強化される。実際には1gあたり日本円でざっと1万2000円(95ユーロ)。それに販売台数をかけた分を科されるというものだから(どのメーカーも具体的な金額を明らかにしていないが)、大きな負担になることは確かだろう。

最近になってBEVが続々と投入されているのはそれが最大の理由だ。BEVやFCVについては走行中のCO2排出量ゼロとして扱われるため(発電時の排出は算入されない)、平均値を引き下げることができるが、価格が高ければ販売台数は見込めない。となれば、利益を直撃するペナルティーをできるだけ減らすためには、BEVやPHVを投入するだけでなく、内燃エンジン車の燃費を、たとえわずかでも向上させるのが焦眉の急なのである。

「A4」シリーズには歩行者検知機能付き自動緊急ブレーキや、渋滞追従支援機能付きアダプティブクルーズコントロールなど、最新のADASが標準装備されている。リアのプライバシーガラスは、フロントドア左右のアコースティックガラスとセットとなる10万円のオプション。
「A4」シリーズには歩行者検知機能付き自動緊急ブレーキや、渋滞追従支援機能付きアダプティブクルーズコントロールなど、最新のADASが標準装備されている。リアのプライバシーガラスは、フロントドア左右のアコースティックガラスとセットとなる10万円のオプション。拡大
ダッシュボード中央に備わるディスプレイは、従来型の8.3インチから10.1インチに画面が大型化された。スマホ感覚で直感的に操作できるタッチ式ユーザーインターフェイスの採用も、最新モデルの特徴。
ダッシュボード中央に備わるディスプレイは、従来型の8.3インチから10.1インチに画面が大型化された。スマホ感覚で直感的に操作できるタッチ式ユーザーインターフェイスの採用も、最新モデルの特徴。拡大
試乗車には16チャンネルパワーアンプでトータル出力755Wを誇る、オプションのBang & Olufsen 3Dアドバンストサウンドシステム(17万円)が装着されていた。
試乗車には16チャンネルパワーアンプでトータル出力755Wを誇る、オプションのBang & Olufsen 3Dアドバンストサウンドシステム(17万円)が装着されていた。拡大
荷室容量は495リッター。後席の背もたれには40:20:40の分割可倒機能が備わっている。写真は背もたれをすべて前方に倒した様子。
荷室容量は495リッター。後席の背もたれには40:20:40の分割可倒機能が備わっている。写真は背もたれをすべて前方に倒した様子。拡大

ため息がもれる洗練度

45 TFSIクワトロはA4シリーズの最強力版だから当然だが、どんな場面でも35 TFSIのように物足りなさを感じることはない。踏めばどこからでもシュパーッと楽々と加速するし、ドライ路面ではクワトロシステムの違いを感じ取ることもできない。ただただ安定して正確にラインをたどる。

マイルドハイブリッド化の効果は、オープンロードよりも街なかの渋滞などで明らかだ。協調制御に配慮しているようで、スイッと軽やかに動き出す身のこなしが非常に洗練されており、またエンジンのスタート/ストップシステムの作動具合もさらにスムーズになっている。信号に向かって軽くブレーキングしながら速度を落としている最中にガクンとエンジンが止まるということもない。さらにクルージング時には状況に応じてギアをニュートラルに切り替え惰性走行に入るコースティングと、エンジンを停止させるコースティングとを頻繁に切り替えているようで、少しでも燃費を向上させようとしていることがうかがえる。

オプションの19インチタイヤを履いているにもかかわらず(同じくオプションの可変制御ダンパー付き)、乗り心地が以前よりもさらに洗練されていることも正直意外だった。アウディ ジャパンは以前からスポーツサスペンションと大径タイヤを日本仕様に装着する傾向があり(商品企画者はどうしても見た目のいいホイールと薄いタイヤを選びがち)、特に高性能モデルは乗り心地よりもハードな足まわりを優先させていたのだが、新型A4はFWDの35だけでなく、この45 TFSIクワトロも従来型よりも角が丸められている。無論、ビシッとフラットな足まわりながら、路面の不整にいちいち反応するのではなく滑らかに乗り越えるようになった。

MMIタッチレスポンスディスプレイに一新されたせいで、センターコンソール上のロータリースイッチが廃止されたのは残念だが、それ以外は文句なし。いや、それとセンタートンネルの左足すね部分がわずかに張り出していることが気にならなければ、まったく文句なしだ。徹底的に洗練を追求するアウディの姿勢は変わらないのである。

(文=高平高輝/写真=花村英典/編集=櫻井健一)

どの速度域からも楽々と加速する「A4 45 TFSIクワトロSライン」。12Vマイルドハイブリッドシステムの搭載により、エンジンのスタート/ストップシステムの作動具合もスムーズになったと感じられた。
どの速度域からも楽々と加速する「A4 45 TFSIクワトロSライン」。12Vマイルドハイブリッドシステムの搭載により、エンジンのスタート/ストップシステムの作動具合もスムーズになったと感じられた。拡大
フラットボトムデザインのステアリングホイールは、「Sライン プラスパッケージ」(8万円)に含まれるオプション。
フラットボトムデザインのステアリングホイールは、「Sライン プラスパッケージ」(8万円)に含まれるオプション。拡大
試乗車には245/35ZR19サイズの「ピレリPゼロ」タイヤが装着されていた。ホイールはマットチタンカラーの「5Vスポークスターデザイン」と呼ばれるオプションアイテム。
試乗車には245/35ZR19サイズの「ピレリPゼロ」タイヤが装着されていた。ホイールはマットチタンカラーの「5Vスポークスターデザイン」と呼ばれるオプションアイテム。拡大
「A4 45 TFSIクワトロSライン」のシフトレバーまわり。従来型に備わっていたMMIコントロールダイヤルや操作スイッチは、タッチ式モニターの採用に合わせて廃止された。
「A4 45 TFSIクワトロSライン」のシフトレバーまわり。従来型に備わっていたMMIコントロールダイヤルや操作スイッチは、タッチ式モニターの採用に合わせて廃止された。拡大
今回の試乗では高速道路をメインに山岳路まで足を延ばし、合計305.2kmを走行。燃費値は満タン法で12.1km/リッターを記録した。
今回の試乗では高速道路をメインに山岳路まで足を延ばし、合計305.2kmを走行。燃費値は満タン法で12.1km/リッターを記録した。拡大

テスト車のデータ

アウディA4 45 TFSIクワトロSライン

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4770×1845×1410mm
ホイールベース:2825mm
車重:1700kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:249PS(183kW)/5000-6000rpm
最大トルク:370N・m(37.7kgf・m)/1600-4500rpm
タイヤ:(前)245/35ZR19 93Y/(後)245/35ZR19 93Y(ピレリPゼロ)
燃費:12.9km/リッター(WLTCモード)
価格:627万円/テスト車=747万円
オプション装備:ボディーカラー<ターボブルー>(6万円)/ダンピングコントロールスポーツサスペンション(10万円)/Sライン プラスパッケージ<フラットボトムステアリングホイール、運転席メモリー機能、フロント4ウェイランバーサポート>(8万円)/8.5J×19インチアルミホイール<5Vスポークスターデザインマットチタンルックポリッシュ>+245/35ZR19タイヤ(19万円)/シートヒーター<リア>(7万円)/スマートワイヤレスチャージング+リアシートUSBチャージング(6万円)/Bang & Olufsen 3Dアドバンストサウンドシステム(17万円)/ヘッドアップディスプレイ(15万円)/パークアシストパッケージ<パークアシスト+サラウンドビューカメラ>(8万円)/マトリクスLEDヘッドライトパッケージ<マトリクスLEDヘッドライト+フロントダイナミックインジケーター+ヘッドライトウォッシャー>(11万円)/プライバシーガラス<フロントサイドアコースティックガラス>(10万円)

テスト車の年式:2020年型
テスト開始時の走行距離:897km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(6)/山岳路(2)
テスト距離:305.2km
使用燃料:26.0リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:10.5km/リッター(満タン法)/10.6km/リッター(車載燃費計計測値)

アウディA4 45 TFSIクワトロSライン
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