アウディA4 2.0 TFSIクワトロ スポーツ(4WD/7AT)
強気のアウディ 2016.03.05 試乗記 満を持して登場した新型「アウディA4」。252psの高出力エンジンとアウディ自慢のフルタイム4WDシステム「クワトロ」を搭載した上級グレードに試乗し、従来モデルからの進化のほどと、走りの実力を確かめた。“別格”とされるだけの理由はある
日本で販売されるあまたの輸入車。その中にあっても、常に圧倒的かつ不動の人気を誇るのは、決まってドイツ発のブランドだ。
どうしてドイツ車ばかりが贔屓(ひいき)されるのか!? と、そんな趣旨の声を耳にすることも一度や二度ではない。フランスやイタリア発のモデルにも、楽しいものはたくさんある! と、いわゆる”イタフラ車”のファンからは、そんな発言が聞かれたりもする。
なるほど、それはまさにその通り。日ごろ“マイナー扱い”されがちなそうした国籍の持ち主にも、もっと注目が集まるべき、と感じることは多々ある。一方で、そうは言ってもいざ日本のモデルと乗り比べた時、その違いを最も分かりやすく感じる輸入車となると、やっぱりドイツ発のモデルたち……というのは、紛れもない事実であったりする。
特に高速道路へと乗り入れれば、早々にして「クルマはやっぱりドイツでしょ!」と、そう実感させられることが正直決して少なくない。中でもメルセデス・ベンツにBMW、そしてアウディというブランドの作品が、「ジャーマン3(スリー)」と呼ばれて別格扱いをされるのは、「やはり、それなりの理由に裏打ちされている」というのが、偽りのない自身の意見でもある。
何だかんだと言われても、“オーバー150km/hの世界も日常”のアウトバーンで鍛え上げられた高速性能は、それよりずっと低い速度を常用域とする日本でも、比類なき安定感と安心感を味わわせてくれるのが常。そんなジャーマン3のひとつであるアウディが昨年フルモデルチェンジを行った、最新のA4が日本に上陸した。
A4といえば、弟分であるA3と共に、このブランドのラインナップを根元で支える基幹中の基幹モデルだ。開発に大変な気合が込められているのは容易に想像できることで、まずはその外装の作り込みレベルに、A4のポテンシャルの高さを実感させられる。
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走りだす前から感じる進化の度合い
遠目に一瞥(いちべつ)した限りでは、「あれ? もしかしてこれってマイナーチェンジ!?」と、そんなぶしつけな言葉が出そうになるほど、従来型とスタイリングイメージの近い新型A4。けれども、実車を矯めつ眇(すが)めつと眺めるほどに、「どちらが新型か?」は明らかである。
パネル間の隙間の小ささや均一さ、プレスラインのシャープさなどは、メルセデスやBMWという“両巨頭”との直接比較でも、まさに勝るとも劣らない仕上がり。今回テストドライブを行ったモデルには、消灯時であってさえ先進的なフロントマスクの表情を醸し出す「マトリクスLEDヘッドライト」がオプション装着されていたことも、新しさの演出に一役買っていた。
一方のインテリアは、誰の目からもフルモデルチェンジを行ったことが明らか。ダッシュボードは大きなメータークラスター内のセンターパネル上部にマルチメディア用ディスプレイをビルトインした造形から、センターパネルをコンソールと視覚的に分離させた上で、空調ルーバーが左右幅一杯に広がる水平基調のデザインへと一新。そのセンター部分にタブレット風のディスプレイをレイアウトするのも、最新ライバルたちと同様に“いま風”の仕上げ方だ。
そんな新型A4のインテリアの見どころのひとつは、「TT」が先鞭(せんべん)を付けた「バーチャルコックピット」の新設定。天地方向が薄いので、マップモードでの進行方向を遠くまで確認しづらい……というウイークポイントはあるものの、ステアリングスイッチですべてを完結できる操作方法も含め、実用性もなかなか高い先進アイテムだ。
一方で、これを標準採用することを前提にセンターディスプレイを廃したTTに比べると、ダッシュボードデザインそのものの新奇性はさほど高くない。もちろん、実質2シーターのTTとは異なり、A4ではパッセンジャーからのディスプレイの視認性も重要なポイントであるはず。が、せっかくならばこうしたモデルでこそ、既存のアウディ車に採用例の見られた格納式ディスプレイを“再登場”させてほしいとも思えたものだ。
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歓迎できる進化と、看過できない変化
ドライバーズシートへ乗り込んで最初に感じた好印象。それは、従来型に対するドライビングポジションの改善と視界のよさという、当たり前といえば当たり前、けれども後になっての改善は極めて難しい2つのポイントに関してだった。
前者は、従来型ではトランスミッション部分の右側への張り出しが強く、左足を理想のポジションへと置くことができなかった点が改善され、まだペダル類がわずかに右寄りオフセットしているものの、おおむね自然なポジションが得られるようになったこと。後者はドアミラー周辺の“抜け”に優れていることを含めて、全方位において視界がすっきりと開けていることによる印象だ。
一方、わずかとはいえ、またもこっそり(?)と全長×全幅が大型化されたことは、もはや黙って看過することはできないポイントだ。特に1840mmという全幅は、日本ではもう駐車時に気を遣わされることが多い寸法。従来型に対して明確にキャビンが広くなったという印象は受けないのだが、そのうえで「室内長やリアのレッグルームが拡大」とうたわれても、「大きくなったら広くなるのはアタリマエ」と、思わずそんなイヤミな答えを返したくもなってしまう。
プライスタグは“ちょっと強気”
“アクセル線形”が最も穏やかであろう「コンフォート」のドライブモードを選択してもなお、ちょっとばかりの飛び出し感が伴うスタート時の挙動がやや気になるものの、そこを除けば動力性能は文句ナシだ。というよりも、0-100km/h加速が5.8秒というのはファミリーセダンとしてはもはや過剰とも思える速さ。「“4WDのA4”は欲しいけれど、ここまでの強力さは必要ない」と、そんな意見を持つ人も現れそうだ。
4気筒ながらエンジンフィールは滑らかで、最高出力を発する5000-6000rpmの回転域を超えても、まだまだストレスなく、レッドラインの6750rpm目がけて軽々回る……と、そんな印象が得られたのは、実はエンジンノイズが抑えられているからでもあるはず。これも含め、静粛性という項目に関しては明確に「このクラスのトップリーダー」と実感できるのも、今度のA4シリーズである。
ちなみに、今回テストドライブを行ったモデルは、ベースグレードに対して20mmのローダウンが図られたスポーツサスペンションが標準採用となるのに加え、径が1インチアップとなる18インチのシューズがオプション装着されていた。それでも、路面によって「ちょっと硬めかナ」と思う程度でコンフォート性能が悪くなかったのには、新たなボディーが「従来型比で15kgの減量」をうたいながら、振動を瞬時に減衰させる高い剛性感の持ち主であった点も大きく影響していそうだ。
さらに、そうした乗り味と共に、とかく人工的で自然さに欠ける味付けのモデルが多かったアウディ車の中にあって、ステアリングフィールが秀逸であったことにも感心させられた。テスト車の場合、前後軸重の配分はフロントが930kgなのに対してリアは730kg。かくも”フロントヘビー”ではあるのだが、実際にはコーナーへのターンイン初期から「アタマでっかち」感は一切伴わない。むしろコーナリングは軽快なことが印象的で、このあたりも従来型とは異なる走りのテイストが明確だ。
シリーズ全体でそもそも“ちょっと強気”を感じさせる価格設定であるところに、77万5000円分のオプションアイテムを加え、総額では700万円超と「ならば、よくて当然」と評されかねないプライスタグの持ち主であった今回のモデル。そうした値段の話も含め、今後どのように評価をされていくのか。この先が大いに気になるニューモデルである。
(文=河村康彦/写真=田村 弥)
テスト車のデータ
アウディA4 2.0 TFSIクワトロ スポーツ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4740×1840×1410mm
ホイールベース:2825mm
車重:1660kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:252ps(185kW)/5000-60000rpm
最大トルク:37.7kgm(370Nm)/1600-4500rpm
タイヤ:(前)245/40R18 99Y/(後)245/40R18 99Y(ピレリ・チントゥラートP7)
燃費:15.5km/リッター(JC08モード)
価格:624万円/テスト車=701万5000円
オプション装備:ボディーカラー<デイトナグレー・パールエフェクト>(8万5000円)/S lineパッケージ<S lineバンパー+ドアシルトリムS lineロゴ+S lineエクステリアロゴ+ヘッドライニング ブラック+デコラティブパネル マットブラッシュトアルミニウム+アルミホイール 5ツインスポークスターデザイン8J×18+スプリントクロス/レザーS lineロゴ+S lineパッケージコントロール>(35万円)/マトリクスLEDヘッドライトパッケージ<マトリクスLEDヘッドライト+LEDリアコンビネーションライト+LEDインテリアライティング+ヘッドライトウオッシャー+バーチャルコックピット>(34万円)
テスト車の年式:2016年型
テスト開始時の走行距離:1284km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:198.9km
使用燃料:18.0リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:11.1km/リッター(満タン法)/12.8km/リッター(車載燃費計計測値)
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河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。