アウディA3アトラクション(6AT)【ブリーフテスト】
アウディA3アトラクション(6AT) 2004.06.10 試乗記 ……295万5750円 総合評価……★★★ 新型「VWゴルフ」のシャシーを使って、いち早くデビューした「アウディA3」。2004年2月から日本市場に追加投入された1.6リッターモデルは、ライバルと比べてどうなのか? 自動車ジャーナリストの生方聡が試乗した。 |
直噴が待たれる
ドイツでコンパクトクラスのレンタカーを借りると、大抵は1.4リッターや1.6リッターなど、ラインナップのなかでも排気量の小さいグレードになることが多い。日本人には物足りなく思える仕様だが、まわりのクルマを見まわしても、むしろパワーに余裕のある大きな排気量のグレードを見かけることはすくない。いざアウトバーンに繰り出せば、170km/hくらいで巡航するには十分な性能である。
そういう意味では、今回日本に導入された1.6リッターは、実用性の点で不安がないし、実際、これで十分と思える実力である。しかし一方で、新型「VWゴルフ」や「アルファ147」の1.6リッターモデルと比べてしまうと、エンジンの非力さが否めないのも事実だ。それでいて「A3」のほうが価格が高いという状況を考えると、ライバルとの競合では苦戦を強いられそうである。
ドイツ本国には116ps仕様の1.6リッターFSI(直噴)エンジンも用意されるが、いまのところ6段オートマチックの組み合わせがない。なんとかこの組み合わせを実現して、ライバルに対抗してほしいものだ。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
“プレミアムコンパクト”を標榜する、アウディのスポーツハッチ「A3」。現行の2代目は、2003年のジュネーブショーでデビューした。日本への導入は、2003年9月から。
ラインナップは、「FSI」こと直噴化された2リッター直4DOHC16バルブ(150ps)を積む「2.0FSI」と、その上級版「2.0FSIスポーツ」。さらにトップグレードとして、3.2リッターV6DOHC24バルブ(250ps)を搭載する「3.2クワトロ」を用意。2004年2月には廉価グレードとして、1.6リッター直4SOHCの「1.6アトラクション」が追加された。
トランスミッションは、4気筒がティプトロニックの6段(!)AT、V6が「DSG」と呼ばれる2ペダル式6段MTとなる。
サスペンションは、フロントがマクファーソンストラット/コイル、リアは先代のトーションビーム式から、4リンク/コイルの完全独立式に進化した。
(グレード概要)
新たにエントリーグレードとなった「1.6アトラクション」は、1.6リッター直4SOHC(102ps/5600rpm、15.1kgm/3800rpm)を搭載する。インテリアがクロス生地になり、アームレストやシートヒーターなどが省略される。ESPやブレーキアシスト、エアバッグなどの安全装備は上位グレードと差がない。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
現在のA3のラインナップは、1.6リッターエンジン搭載のアトラクション、2リッターFSIエンジン搭載の2.0FSIと2.0FSIスポーツ、そして3.2リッターV6の3.2クワトロの4モデル。当然、アトラクションはA3のエントリーモデルという位置付けになるが、標準装備を見るかぎりは2.0FSIとほぼ同じレベルである。たとえば、デュアルゾーンのフルオートエアコンやFM/AM付きCDプレーヤー、7J×16の5スポークアルミホイール+205/55R16タイヤ、ESPなどはすべて標準で、装備は充実している。
室内のデザインも、いつものアウディらしさを備えており、シルバーのリングを施した大型メーターやエアベント、アルミのドアハンドル、質感の高いトリムなど、「エントリーモデル=安いクルマ」という印象はどこにもない。
(前席)……★★★
A3アトラクションに装着されるのは、控えめなサイドサポートを持つノーマルシートだ。表面は中央がストライプ、両サイドが単色のシンプルなデザインのファブリックとなる。座り心地はソフトだが、身体をシート全体で支えてくれる印象で、意外に疲労はすくない。
4スポークのステアリングホイールは、残念ながら革巻きではなかった。エントリーモデルとはいえ、値段が値段なのだから、革巻きステアリングを奢ってほしい。
ステアリングコラムにはチルトに加えてテレスコピック調整がつく。適切なドライビングポジションを得るための必需品である。
(後席)……★★★
日本車では、いまだにグレードによって安全装備に差をつけているモデルを見かけるが、A3ではエントリーモデルといえども安全装備をフルに搭載しているのがうれしい。後席に関しては、3人分すべてに3点式シートベルトとヘッドレストを備えるのは良心的だ。
シートそのものは、前席同様ソフトな座り心地を示し、ヘッドルーム、レッグルームともに十分な広さが確保されている。3ドアボディゆえ、後席へのアクセスが面倒なのがマイナス点。
(荷室)……★★★
コンパクトな前輪駆動車には定番のトーションビーム・リアアクスルに別れを告げ、マルチリンクを採用するリアサスペンションは、ダンパーとスプリングを別体にするなどして、トランクスペースへの侵入を最小限に食い止めている。おかげで、奥行き75cm(シートを倒せば135cm以上)のエリアは、開口部の大きなハッチバックと相まって、十分な実用性を誇っている。リアシートはワンアクションで倒せるようになった。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★
このクルマを試乗するうえでの最大の関心事が動力性能である。A3アトラクションに搭載される1.6リッターは、オールアルミの直列4気筒エンジン。ただ、現行ゴルフに搭載されるFSI(直噴ガソリン)DOHC16バルブではなく、旧型ゴルフ用のSOHC8バルブで、直噴タイプではない。
ティプトロニック付き6段オートマチックと組み合わされるが、出足やスロットルペダルをあまり踏んでいない場合の加速はかなり控えめで、力不足の印象は否めない。旧型ゴルフの1.6リッターと4ATの組み合わせが、必要十分の動力性能を示していただけに、やや期待はずれである。
一方、高速道路などでいったんスピードにのってしまえば、トルクの細さは気にならなくなる。追い越し車線で一気に加速……という具合にはいかないが、十分なレベルといえる。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
試乗車に装着されていたタイヤは、205/55R16サイズの「ダンロップSP SPORT 01」。やや硬めの乗り心地で、荒れた路面ではバネ下が多少ばたつく印象があった。一方、高速道路をクルージングする場面では、フラット感があって快適な乗り心地を示した。直進安定性も非常に高い。
ワインディングロードに持ち込むチャンスはなかったが、ノーズが軽く、回頭性に優れるのはこのモデルならでは。高速コーナーでの安定感も高く、走りっぷりに高級ささえ覚える。
(写真=清水健太/2004年6月)
テストデータ
報告者:生方聡
テスト日:2004年5月14日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2004年型
テスト車の走行距離:5453km
タイヤ:(前)205/55R16(後)同じ(ダンロップSP SPORT 01)
オプション装備:キセノンヘッドライトパッケージ(キセノンヘッドライト+ヘッドライトウォッシャー+自動ヘッドライトハイトコントロール+フロントフォグランプ)(12万6000円)
形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3):高速道路(4):山岳路(3)
テスト距離:504.7km
使用燃料:47.1リッター
参考燃費:10.7km/リッター

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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