プジョー307CC【海外試乗記】
若いカップルよりも 2003.09.23 試乗記 プジョー307CC(4AT/5MT) 電動格納式ハードトップがウリのプジョー「CC」(クーペ・カブリオレ)が、307にラインナップされた。206CCより一まわり大きいオシャレなオープンモデルに、自動車ジャーナリストの笹目二朗が、南仏プロヴァンスで乗った。グレードは2種類
プジョーは206CCに続いて、307にも「CC」を追加した。CCとは、電動格納式オープントップをもつ「クーペ・カブリオレ」のこと。ハッチバックやブレーク(ワゴン)とは、大いに趣の違ったクルマに仕上げられていた。
そのプジョー307CCの試乗会が、南仏プロヴァンスで開催された。
307CCに搭載されるエンジンは2種。従来と同じ「EW10J4」と呼ばれる2リッター直列4気筒ながら、206から406まで搭載される標準的な137ps/19.4kgm版、さらにスポーティな「206RC」用として先頃登場した、「EW10J4S」と呼ばれる177ps/20.6kgmにチューンされた仕様だ。
組み合わされるギアボックスは、5段MTが基本であるが、136ps版には4段ATの用意もある。日本へはこの右ハンドルAT仕様に加え、177psの高性能版は左ハンドルのまま輸入されることが検討されている。
ボディ寸法は、全長が4347mmとやや長く、幅1759mm、高さは1424mm。ホイールベースは2605mm、トレッドは前1497/後1506mm。タイヤサイズは205/55R16(6.5J)が標準で、高性能版にはオプションで205/50R17(6.5J)も用意される。車両重量はボディ補強やルーフの折り畳み格納機構などをもつ結果、5MT/4AT=1457kg/1488kg(ハイパワー版は1490kg)。4AT仕様の車重は、2リッターを積むハッチバックモデル「XS」(4AT)より約190kg増加した。
発表されている性能数値は、最高速度が4ATで204km/h、177ps版が225km/h。0-400m加速は、それぞれ18.9秒と17.4秒である。
窓を開閉する要領で
「206CCがあるのに、似通ったサイズの307にもCC?」と、疑問をもたれるかもしれないが、現物を見て、乗ってみればすぐ納得がいく。4シータークーペカブリオレとはいえ、206CCのリアシートはホモロゲーション用であり、事実上、大人は乗れなかった。307CCは一応乗れるスペースが確保されている。206CCはスポーツカー的な固いサスペンションをもち、操縦安定性指向であったが、307CCは快適な乗り心地を実現した。これが、大雑把な性格の違いである。
より詳細に観察していこう。307CCの絶対的な寸法は、そう大きくない。にもかかわらず、キャビンを小さくまとめたクーペスタイル、コンパクトなはずなのだが丸い印象のノーズやテールの造形により、実際より大きな存在感がある。
なかに座ると、室内は広々。ルーフの開閉は進化し、ロック操作も何もいらず、文字通りスイッチを押すだけのワンタッチで開閉する。その間約25秒。だからちょっと長めの信号待ちに、窓を開閉する要領で“変身”可能だ。
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オープンにした方が……
走り出して最初の嬉しい発見は、プジョー本来のフラットで快適な乗り心地が与えられていたことだ。大きく寝ていていかにも空気抵抗のすくなそうなフロントウィンドウは、ややヤリスギの感もある。ピラー先端が乗降性を邪魔してもいるが、風切り音や、キャビンへの風の巻き込みはすくない。ルーフを2つに折って畳込む関係で、ルーフ長をできるだけ短くしたい構造上の理由を理解すれば、Aピラーの長さは仕方ないのだろう。とにかく、簡単にオープンカーの解放感を手に入れられることは、このクルマの最大の魅力だ。
乗り心地の快適さは、けっして操縦安定性を犠牲にしていない。コーナーでグラリとロールするわけでもなく、ノーズを孕んでアンダーステアの恐怖に晒されることもない。電動ポンプで油圧を発生させるパワーステアリングの感触も上々。応答性や直進安定性も不満はなかった。
ただし、重量物が移動する機構の構造上、ルーフを上げた時と下ろした時では、重心高が変化する。クーペ状態で走っている時には、重いルーフが車両上部にかぶさるため、横風安定性でやや不利となる。
ハッチバックと違う点は、オープン時に重量配分がやや後ろ寄りにくることにより、FF(前輪駆動)ながら前:後=57:43と、重量バランスが改善されることだ。クーペよりカブリオレ状態で乗った方が、よりニュートラルな旋回特性が得られる理屈である。
プジョー本来の快適性と4人乗りの居住性、さらにオープンの楽しさを手軽に楽しめる307CC。若いカップルよりももうすこし上の、小中学生のお子さまをもつ家庭のファミリーカーに最適な1台か、と思う。
(文=笹目二朗/写真=プジョージャポン/2003年9月)

笹目 二朗
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