ランドローバー・レンジローバースポーツ・スーパーチャージド(4WD/6AT)【ブリーフテスト】
ランドローバー・レンジローバースポーツ・スーパーチャージド(4WD/6AT) 2006.01.27 試乗記 ……1090.0万円 総合評価……★★★★ 「カイエン」「トゥアレグ」に負けじと4×4の老舗ランドローバーが出した“スポーツ仕様レンジ”。390psのスーパーチャージャーユニット搭載車にはレンジらしさが……。 |
懐の深さこそ魅力
新規参入組ながら、ハイパフォーマンスを前面に押し出して、一気に「パフォーマンスSUV」の覇権を手に入れた「ポルシェ・カイエン」と「VWトゥアレグ」。その成功をSUVの頂点を極めるランドローバーが黙って見ているはずがない。
ラクシュリーSUV・レンジローバーのイメージを色濃く残しながら、パフォーマンスSUVにふさわしいパワーと走りっぷりを備えた新しいSUVの開発が進められていたのだ。それこそがランドローバー第5のモデル、「レンジローバースポーツ」である。
その性能については後ほど詳しく触れるが、ドイツのライバルたちが無機質な印象を持つのに対して、レンジローバーの血を受け継ぐこのクルマからは、どこか人間味や暖かさが感じられる。そのせいか、運転していてもさほど緊張することはないし、ワインディングロードで汗をかく場面以外はとてもリラックスできる。クルマの魅力はスピードだけでは語り尽くせない。その懐の深さこそ、レンジローバースポーツの一番の魅力じゃないかと、試乗を終えた私は思った。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
ランドローバー第5のモデルとして2005年1月のデトロイトショーで披露され、日本では2006年1月に販売開始。高級4×4「レンジローバー」を文字どおりスポーツよりに振った「スポーツツアラーSUV」で、新興のライバル「ポルシェ・カイエン」や「VWトゥアレグ」あるいは「BMW X5」などに対抗する。
名こそレンジだが中身は「ディスカバリー3」で採用した、モノコックとラダーフレームを融合させた「インテグレイテッド・ボディフレーム」構造をもとにしている。フロントのメッシュグリルや口を開けたバンパー、張り出したホイールアーチ、傾斜のあるウインドウスクリーンなど外観はマッチョな仕上がり。ボディサイズは小型化し、レンジローバー比で155mm短く、25mm狭く、90mm低く、ホイールベースは135mmショートだ。
エンジンはジャガー譲りのV8が2種類。4.4リッターは299ps、43.3kgmを発生、スーパーチャージャー付き4.2リッターは390ps、56.0kgmというアウトプット。ZF製6段ATと組み合わされる。
技術的ハイライトは、「ダイナミック・レスポンス・システム」なるアンチロールコントロール装置。コーナリングフォースを感知し、油圧モーターによってアンチロールバーの硬さを変化させるシステムだ。加えて、オン/オフロードで最適な走行モードを選択できる「テレイン・レスポンス」、電子制御センターデフロック付きフルタイム4WD、前後ダブルウィッシュボーンの電子制御エアサスペンションなどを備える。
(グレード概要)
日本仕様はNAの「HSE」とスーパーチャージャー付き「スーパーチャージド」の2本立て(2005年11月に先行発売した限定車「ファーストエディション」は後者ベース)。ダイナミック・レスポンス、ブレンボ製ブレーキキャリパー、スポーツレザーシート、電動サンルーフ、20インチアロイホイール、ツインマフラーなどを盛り込み、上級に仕立てた。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
プレミアムSUVと呼ばれるモデルの多くが乗用車と見紛うばかりのインテリアデザインを採用するのに対し、このレンジローバースポーツのインパネはディスカバリー3ほどではないが、乗用車とはやや趣を異にしている。なかでもセンターコンソール部分に強い存在感のあるデザインである。
オーディオのパネルがちょっと出っ張った形がユニークで、それを縁取るメタル調(“ロジウム”)のパネルがスポーティな印象を強めている。
スーパーチャージドではインテリアカラーは選べないが、HSEではロジウムパネルのほか、チェリーのウッドパネルや明るい色のレザーシートが選べる。個人的にはスーパーチャージドでもこれらの内装が選べるといいと思う。
(前席)……★★★★
レンジローバーよりも全高が90mm低いとはいえ、ドライバーのシートポジションはかなり高い。おかげで、足を伸ばして運転席にたどり着くと、そこからの視界は良好。ボンネットの見切りがよく、さらにボンネットの左前端にはサイド/アンダーミラーが付くから、1930mmの全幅を忘れてしまうほど運転はしやすい。
スーパーチャージドにはレザーのスポーツシートが標準装着される。当然、各調整は電動で、運転席にはメモリー機能が付く。座ってみるとやや硬めの印象だが、腰をしっかりサポートしてくれるおかげで、疲れは少ない。
(後席)……★★★
全長4795mm、全幅1930mmを誇るレンジローバースポーツだけに、後席の足元や膝まわりの余裕は十分に確保されている。
気になったのは後席からの眺めだ。身長167cmの私だと、頭上には拳2個分ほどの空間が確保されるのだが、スライディングルーフが標準のスーパーチャージドでは、スライディングルーフを納めるためのルーフライニングの出っ張りが視界に入ってくる。私よりも長身の人ならかなり目障りに違いない。
(荷室)……★★★
レンジローバーやディスカバリー3が上下分割式のテールゲートを採用するのに対し、このレンジローバースポーツには単に跳ね上げるタイプのテールゲートが備わる。そのぶん、テールゲートは大型になるが、ガラス部分が独立して開閉可能なため、狭い場所でも小物の出し入れは容易である。
ドライビングポジションが高いわりに、荷室の床は低い位置にあるのは、荷物の出し入れには便利。奥行きが1mほどある荷室は、ダブルフォールディング式のリアシートを倒せば1.8mまで拡大が可能だ。荷室の高さも十分すぎるほどで、スポーツや遊びの道具をたくさん呑み込んでくれるはずだ。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
ハイパフォーマンスをウリにするレンジローバースポーツ。その上級モデルであるスーパーチャージドだけに、エンジンは余裕たっぷり。ジャガー製のスーパーチャージャー付き4.2リッターV8をSUV用にモディファイしたこのエンジン、最高出力390ps、最大トルク56.0kgmというスペックを誇るが、実際運転してみると、低回転から太いトルクを発揮するのはもちろんだが、3500rpmあたりからさらに盛り上がりを見せ、6000rpmを過ぎるまで力強く回る様は、“スポーツ”の名に恥じない気持ちよさだ。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
そのハイパワーを支えるのが、電子制御エアサスペンションと、275/40R20サイズのタイヤである。やや硬めな乗り心地を示す一方、路面の小さな凸凹はタイヤが巧みに遮断してくれるため、20インチを履くとは思えないほどの快適さである。
今回はオンロードのみの試乗だったが、ワインディングロードではロールがよく抑えられていて、これでアイポイントが高くなければまさにスポーツワゴンの感覚だ。
ただ、後席の乗り心地は前席ほど快適ではなく、路面の凹凸を伝え気味。後ろに乗せられるよりもステアリングを握りたいクルマである。
(写真=荒川正幸)
【テストデータ】
報告者:生方聡
テスト日:2005年12月21日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2005年式
テスト車の走行距離:2435km
タイヤ:(前)275/40R20(後)同じ
オプション装備:--
走行状態:市街地(4):高速道路(6)
テスト距離:314.4km
使用燃料:65リッター
参考燃費:4.8km/リッター

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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