メルセデス・ベンツML500(4WD/7AT)【試乗記】
ブランドに追いついたクオリティ 2006.01.11 試乗記 メルセデス・ベンツML500(4WD/7AT) ……1003万8000円 2005年10月11日に発売された、メルセデス・ベンツの新しいSUV「Mクラス」。やや大きくなった2代目はどう変わったのか。5リッターモデルに試乗する。サイズアップした2代目
いまにして思えば、初代Mクラスは、生まれてくるのが少し早すぎたのかもしれない。
ヨーロッパのプレミアムブランドとしては初めての、オンロードを重視したSUV。しかもアメリカで生産される初のメルセデス。いろいろな意味で、鳴り物入りで登場した初代Mクラスだったが、とくに初期のモデルはこのブランドらしからぬクオリティの低さに非難が集まった。
さらにボディ構造では、それまでのSUVと同じようにラダーフレームを採用したために、その後登場したモノコックボディのライバルと比べると、乗り心地やハンドリングがトラック的で、古臭いという印象がつきまとった。
ということで、2代目となる新型は、モノコック構造を取り入れた。ややサイズアップしたボディはシャープなラインを多用して、最近のメルセデス各車に共通するエモーショナルな雰囲気。ドアを開けると、フロアはたしかに旧型より低くなっている。
ただし、シートはそんなに低くはなく、側面衝突を考えてかかなり中央寄りにセットされているので、サイドシルがかなり幅広く、乗り降りはそんなにしやすいとはいえなかった。
高級感のあるインテリア
インテリアのクオリティは確実に上がった。これならメルセデスと認めてあげていいだろう。そんなインテリアでまず目につくのは、ATセレクターがシート間にないことだ。Sクラスに続いて、ステアリングコラムに移動した。
おかげでセンターコンソールボックスは大容量。リッドを開けると、淡いオレンジの光が中を照らす。ドアオープナーの内側にも、オレンジの間接照明が仕込まれている。メーターのホワイト、センターパネルのオレンジなど、それ以外の照明も淡い色調。すみずみまで高級感の演出が行き届いている。
ただ、これはSLKに乗ったときも感じたことだが、最近のクルマとしてはスイッチがかなり多く、しかも似た形なので、わかりずらい。Sクラスには装備された、BMWの「iDrive風」のインターフェイスを、早く他の車種にも波及させてほしいところだ。
フロントシートはクッションが硬く、体重60kgの自分ではほとんど沈み込まない。1時間ぐらい乗ったら、お尻のあたりに圧迫感を覚えてきた。シートサイズは大きめではあるものの、形状は大柄な人間を想定したものではなく、自分レベルの体格でも満足のいくサポートが得られた。
リアシートはフロントより一段高く、クッションやシートバックには十分な角度がつけられていて、くつろいだ姿勢が取れる。身長170cmの自分が前後に座ると、ひざの前には20cmぐらいの空間が残り、頭上もけっこう余裕がある。こちらのクッションはしっかり沈み込みがあって心地よい。シートバックはピシッと張っていて、上体をしっかり支えてくれる。Eクラスと同じように、フロントよりもリアのほうが座り心地がいい。
視点の高いEクラス
日本仕様はML350とML500。エンジンは3.5リッターV6DOHC24バルブと、5リッターV8SOHC24バルブになる。つまり今回乗ったML500は、ひと世代前のエンジンを積んでいることになる。
事務的なサウンドを響かせながら、ゆったりと回転を上げていく感触は、実直という言葉が似合う。排気量は5リッターだし、車重はこのサイズのSUVとしては軽めの約2.1トンだから、アクセルを全開にすれば迫力ものの加速が手に入るが、レスポンスやサウンドの気持ち良さは、設計の新しいV6が上だ。
7段ATは、自分の経験からいけば、個体差が大きい。試乗会で乗ったML350は、スムーズな変速をしてくれたのに、今回のML500はスタートダッシュが唐突で、1〜2速間のシフトショックが目立った。コラムレバーは慣れれば使いやすく、ワンプッシュでD/RレンジからPレンジに移行できるのは便利だ。
試乗車はオフロードパッケージ装着車で、車高調節も可能な電子制御エアサスペンションを装備していた。街中ではやや硬めに感じるが、大きな入力をやわらげつつ、姿勢をフラットに保ってくれるという二面性は、エアサスならではのメリットだ。もちろん旧型のような、フレームとボディが別々に振動するようなことはなく、洗練された乗り味である。スポーツモードを選べば身のこなしが軽快になり、ロールは抑えられる。
ステアリングは最近の他のメルセデスがそうであるように、低速では操舵の軽さに対して戻しの重さが気になるが、100km/hぐらいになると両者の重さの釣り合いがとれてくる。コーナーでは旧型のような腰高感はもはやなく、フルタイム4WDということもあって、グリップレベルも高い。Eクラスを屋根の上で操っていると錯覚するほど、乗用車的なマナーを身につけていた。
今回はオンロードを走っただけだが、試乗会のオフロードコースで試した走破性は、この面では優れていた旧型を上回るのではないかというレベルで、ライバルとは一線を画す存在であることが確認できた。フレームは捨てても、オフロードは捨てない。そんな姿勢に頼もしさを抱いた。
(文=森口将之/写真=高橋信宏/2006年1月)

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
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