オペル・アストラクーペ (4AT)【試乗記】
『ヤング・アゲイン』 2001.07.19 試乗記 オペル・アストラクーペ(4AT) ……293.0万円 2001年7月7日から販売が開始されたオペル・アストラクーペ。シリーズ中、最もスポーティな性格をもつベルトーネボディのスペシャルモデル。ターゲットユーザーは、カリブラやティグラが好きな「熱き心のオペルファン」、25から40歳代の「パフォーマンス指向」の男性、そして「Young Again」を望む子育てを終えたファミリーである。最後の顧客層に光を当てて、アストラクーペ購入前をシミュレートしてみました。■セミオーダーのスーツ
アナタは53歳。人生において、「まだまだ」より「こんなもの」ががぜん優勢になりつつあるのを感じる今日この頃、朝のボランティアから戻った妻が用意してくれた遅い朝食を取りながら、日曜版の新聞を広げる。外務省職員の不祥事に一応「けしからん」とツブやきながら、昨日見てきたクルマのことを考える。
「オペル・アストラクーペはどうだろう?」
すっかりくたびれたガレージのトヨタ・ビスタを思い浮かべて苦笑いする。太郎はソフトウェア会社に就職したし、次郎は地方の大学院で国文を専攻している。どうするつもりなんだか……。花子があんなに急いで結婚したのは意外だったけれど、自分が「おじいさん」になるのも早かったな。
ゆっくりとコーヒーを飲む。今日も暑くなりそうだ。
アストラクーペの大きさは、長さが4270mm、幅が1710mm、高さは1405mm。「車庫入れが楽になるぞ。女房の買い物にも付き合ってやるか……」。あとで一緒にショールームへ行こうとキョロキョロするが、妻の姿は見えない。
流麗なボディスタイルはともかく、アストラクーペはビスタより小さいから、“格落ち”と思うかもな。でも、「ヤナセ」で買うんだから。不満そうな顔をしたら、ボディサイドの「b」マークを示してからドアを開け、サイドシルのスカッフプレートを見せてやろう。「BERTONE EDITION」。ベルトーネというのはな、イタリアのカロッツェリアで、だからアストラクーペはセミオーダーのスーツみたいなもんなんだ。うん、それ以上は詳しく聞くな、ってか。
■4色のボディカラーと2種の革内装
アナタはヤナセで貰ってきたカタログやプライスリストをテーブルの上に広げる。2.2リッターツインカム16バルブ(147ps、20.7kgm)を積むドイツ車が293.0万円。しかもベルトーネボディ。帰り際にチラリと視界に入ったメルセデスベンツC240には、「500.0万円」のプライスボードが載っていたっけ。
アストラクーペのボディカラーは、「黒」「青」「金」「銀」の4色。黒にだけ赤い革内装が組み合わされる。しっかりしたシートだ。ちょっと派手なインテリアにアイツが尻込みしそうだったら、リアシートに座らせてやろう。驚くぞ。「2枚ドアのクルマなのに、後ろもちゃんと座れる!」って。そう、アストラクーペはな、ハッチバックじゃなくてセダンベースなんだ。トランクとの間にしっかりしたバルクヘッド、つまり仕切りがあって、堅実なつくりなんだコレが。
「糟糠の妻」という単語に続いて、なぜか「赤いちゃんちゃんこ」という言葉が頭に浮かんで、アナタはいきなり醒める。「やっぱり内装は黒かな。センターコンソールはシルバーだし、ステアリングホイールは黒と銀のコンビネーション。ホワイトメーターのまわりにはシルバーリング。やっぱりブラックレザーの方が……クールだぜ」。
妻の姿が見えない。アナタはコーヒーカップを持って応接間に行く。CDを整理しようと思ったのだ。アストラクーペには、Nakamich製オーディオと6スピーカーが奢られる。
■あの日をもう一度
「あし〜たがあるぅさ、あすがある」と鼻歌を歌いながら、ソファでオペルの広報誌『Blitz』を繰る。ドイツの最速ツーリングカーレースシリーズ「DTM」にアストラクーペが出場しているのを知って、アナタはウレシクなる。4リッターV8を積む「ガルウィングのFRモデル」に改造されているとはいえ。
日本に輸入されるクーペは、本国ではターボモデル用の締まった足まわりをもつ。ただし、タイヤサイズはひとまわり小さい「205/50R16」。ボディ剛性のアップとあいまって、乗り心地は決して悪くない。サルーン比20%低い重心の影響もあってか、走りはじゅうぶんスポーティ。オペルのレーシングドライバー、マニュエル・ロイターとヨアヒム・ヴィンケルホックの記事を読みふけるアナタの期待を裏切ることはないだろう。
オプション価格11.0万円也の「チルトアップ機構付き電動サンルーフ」を付けるか付けないか楽しく迷っているうちに、いつしか想いは若かりしころに……。「仕事、仕事で、アレともろくに話をしないできたなァ……。これから会話を増やして、アウトバーンで鍛えられたクーペで遠出もしよう。ふたりっきりで」。報われること少なかった会社生活を振り切るんダ。「あの日をもう一度、だな」とすっかり優しい気持ちになって妻の姿を求めるのだが、とっくに午後のフラメンコ教室に行ったあとなのだった。
(文=webCGアオキ/写真=清水健太/2001年7月)

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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