第245回:復活! 空冷ポルシェ(その3)コーティングはエステと一緒!?
2005.12.28 小沢コージの勢いまかせ!第245回:復活! 空冷ポルシェ(その3)コーティングはエステと一緒!?
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■記憶と感情が蘇る
ってなわけでしばらく空いちゃったけど、“ただれた”お肌を直すべく磨きに出した我が復活911。早朝、磨き屋に出して、その日の夕方取りに行って驚きました。なんじゃこりゃ! キレイっていうより別人(別車)。 “たまってた汚れ”が全部落ちたというか、“ニキビが全部取れた”というか、すんごいスッキリ。蛍光灯がよく映ってます。
「ほとんど全部落ちましたよ。結構手間かかりましたけどね。なにしろ4回磨きましたから(笑)」とは前回登場の磨き屋、加藤さん。
しかし、不思議なのは、キレイになってうれしいのと同時に、昔の記憶がよみがえってきたことだ。
「ほら、こうしてみると緑にも見えますよ」
加藤さんが言うとおり、このポルシェに使われているデュポンの『クロマリュージョン』という塗装は、基本ブルーメタリックだが、斜めからだと緑に見え、さらに角度を変えるとゴールドっぽくも見える。聞けば顔料のフレークが5層構造になっており、中央層にメタルが含まれてるとか。それでサバみたいな光り方するワケよ。
で、そのナナメからだと見える緑色は、表面が花粉で汚れていた時はほとんど見えず、今になってやっと出てきたというわけ。そして同時に俺が約5年前にポルシェを買った時の感情も蘇ってきたと。
不思議だよなぁ。人の記憶は、まず匂い、次に味覚に残るっていうけど、視覚にも残るとはねぇ。
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■コーティングも第3世代に!
ただ、逆効果もあって、こんだけキレイになっちゃうとあんまり気軽に乗れなくなるんだよね。贅沢な悩みだけど(笑)。「おそらく小沢さんのクルマは管理状態が良かったんでしょうね。汚れは表面だけでした」
やっぱりクルマはワインに似ていて保存状態も問題になる。俺の復活911は確かに花粉がガンコに付いていたけど、実家の屋根付き駐車場でボディカバーかけて惰眠を貪っていたから、汚れの侵食は浅かったみたい。
「それから水をかけるとわかるんですけど、今度のコーティングは水をはじくんです。ワックスよりも細かい水滴で」これは最近のトレンドにそったものだとか。
「最近のコーティングはガラス系が多いんです。専門的にはケイ素を含んでいる。いわば“コーティング第3世代”とでも言うべきもので、今までのより硬いんです」
そういえば俺も90年代の洗車ブームで取材した時に知ったけど、コーティング剤は最初シリコン系から始まり、それからフッ素入りときて、今はガラス素材入りがトレンドになってるんだってね。
でも一番のキモはコーティング表面の硬さらしい。
「エンピツの芯でいうと4H、ガラス素材だとそれぐらいの硬さまでいけるね。というか本当は塗装より硬くできるんだけど、そうすると逆に塗装から剥がれちゃう」
うーむ。かなりマユツバなコーティングの世界だけど、どうやら進化しているみたい。
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■思いこみでいい
とはいえ、キホン疑り深い性格の俺。このコーティングというものには根本的な疑問がある。
というのも結局、効果がよくわからないのだ。素人目には“キレイになった”のと“水をはじいてる”のしかわからず、いくらコーティング剤が良くなったとはいえ、その後の効果の持ち、違いはよっぽどの専門家じゃないと判定できない。ようするに女性のエステと一緒よ。確かにエステ直後の肌のツヤはいいかもしれないけど、それがその後、どれだけの違いを生み出してるかというと、それはほとんど“思いこみ”でしかない。
実際、顔の半分だけエステして、半分しないで比べるってわけにもいかないもんねぇ。その後、肌が荒れたとして「それは酒の飲みすぎ」「働きすぎ」とかいわれたら大抵はグゥの音も出ない。すると加藤さんはこういった。「それでいいんですよ。結局、どんなコーティング剤でも全く傷つかないものはないし、永遠にワックスがけ不要なんてこともありえませんから。僕は溶剤2割、磨き8割っていつも言ってます(笑)」うーん、正直。
でもまあエステもそうだけど、“その後”にあんまり期待しないで、その時どきの美しさに酔うってのが、正しい楽しみ方かもしれませんねぇ。クルマ磨きなるものは。
(文と写真=小沢コージ/2006年1月)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
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