アウディS6(4WD/6AT)【海外試乗記】
V10を得てもなお奥ゆかしい 2006.05.03 試乗記 アウディS6(4WD/6AT) ハイパフォーマンスカーにV10エンジンという組み合わせは珍しくなくなった。ここに新たに加わったのが、アウディの5.2リッターユニット。それを搭載する新型「S6」にドイツで乗った!時代に遅れないように
「ランボルギーニ・ガヤルド」に「ポルシェ・カレラGT」、そして「BMW M5/M6」……。さらにはトヨタやホンダまでもが、近い将来に同様デザインのエンジンを搭載したモデルをリリースする事を明らかにした今の時代、“V10”という記号はハイパフォーマンスカーの心臓を指し示す記号として、一気にポピュラーになりつつある印象が強い。
「V8エンジンよりもプレミアムなイメージが強く、V12エンジンよりはコンパクト」――単純ではあるがやはりこうしたポイントがこのところの“V10ブーム”へと繋がるひとつの理由である事は間違いないだろう。そして、そんな時代の流れに乗り遅れるなとばかり今、また新たなブランドがV10エンジン搭載モデルを発表した。2005年の東京モーターショーで「S8」を、明けて2006年のデトロイトショーでは「S6」を立て続けにお披露目したアウディがそれだ。両車が搭載するのは共通のV10ユニット。ただし、S8がS6の上に立つというヒエラルキーを明確にするためか、その最高出力はS8用が450ps、S6用が435psと、敢えて微妙な差が付けられている。
ここまで読み進んで「おっ、それではアウディはランボルギーニ用のユニットをリファインしてA8とA6のボディに積んだんだナ」と推測する人もいるだろう。なるほど、今やランボルギーニはアウディ傘下にあるグループ企業。が、本国ドイツで開催された国際試乗会へと赴き、ガヤルド用ユニットとの関連性を担当エンジニア氏に問うてみると「S8/S6用のユニットはそれとは全くの別物」という答えが返ってきた。「ピュアなスポーツカーであるガヤルドと、高級リムジンであるS8/S6とは求められる特性が異なるし、全長が5cmほど長いガヤルド用のユニットはそもそもA6のボディには収まらない。エンジン組み立てのラインは同じだがボア・ピッチも異なるので、両者は完全に別物」というのが、アウディサイドの公式コメントだ。
カリスマ性は感じない
果たして、フロントグリル内にアルミ調の縦ラインを加えたり、(片バンクが5気筒である事を示すために)5つのLEDから成るDRL(デイタイム・ランニング・ライト。ただし日本仕様ではポジション・ランプとされる)をフロントバンパーの左右にビルトインしたりという軽いドレスアップを行ったS6の動力性能は、走り出しの瞬間から「いかにも高級車然とした上質な力強さ」が印象に残るものだった。
その心臓が放つフィーリングは高回転・高出力型というよりはむしろ低回転・高トルク型と実感できるもの。最大トルクの発生回転数は3000rpmに過ぎないし、さらに「その90%の値はすでに2300rpmで発揮する」という点からもそれは明らかだ。実際、組み合わせるトランスミッションがトルコン式ATという事もあり、1000rpm台でも十分なトルク感が味わえるその心臓は、日常シーンでは気筒数の事など意識させない「高級なパワーユニット」という印象。耳に届くサウンドも低中回転域では、一般的なV8ユニットのそれとほとんど区別がつかない。
一方、アクセルペダルを深く踏み込むとV8エンジンよりもきめの細かいサウンドに「特別な心臓」らしさが一瞬顔を覗かせる。そうはいってもレッドラインは7000rpmと控え目な設定。0→100km/hが5.2秒という速さにもちろん文句はないが、やはり既存の“V10モデルたち”ほどのパワーフィールのカリスマ性はそこには感じられない。
サスペンションは少々不快
幸か不幸かテストデーは時に小雨という状況。しかも、もう春も真っ盛りという季節なのに場所によってはそこに白いものも混じるという荒天に見舞われてしまった。
が、そうしたシーンでもドライ路面の場合とほとんど変わらぬ気分でドライブを続けられたのは、「Sのバッジを付けるモデルにはマストアイテムとして採用する」という“クワトロシステム”が備わっていたからでもある。イニシャル状態でフロント40/リア60という割合でのトルクスプリットを行う4WDシステムを介し、S6のシャシーはそんなV10ユニットが放つオーバー400psのパワーを、どんなシーンでもしっかりと受け止めてくれるのだ。
ただしそうした目的をことさらに追求したゆえか、時に少々不快なほどに、路面凹凸を拾っての上下Gが強く感じられるのはちょっと残念だった。ちなみに、その印象はセダンよりもアバントのほうがやや顕著。やはりボディ後端に大きな開口部を備える事が影響しているのか、もしくはセダン以上の“重積載”を想定してサスペンションのチューニングも大きく異なっているのであろうか。
すでに述べたように外観上のドレスアップは――14mm張り出しを強めたというフロントフェンダーのリデザインも含めて――わずかなもの。インテリアでも、サポート性を高めた専用フロントシートの採用といったニュースはあるものの、それでもやはり“標準のA6”から比べても雰囲気の違いはさほど大きいとは思えない。
しかし、ちょっと“奥ゆかし過ぎる”と思えるほどのこの程度のドレスアップのレベルというのも、また計算づくというところなのだろう。何故ならば、このモデルの後にはきっとさらなるハイパフォーマンスを誇示する「RS6」なるスーパーモデルの存在も控えているはずなのだから……。
(文=河村康彦/写真=アウディジャパン/2006年5月)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
-
ボルボXC90ウルトラT8 AWDプラグインハイブリッド(4WD/8AT)【試乗記】 2026.4.18 2016年に上陸した2代目となるボルボのフラッグシップSUV「XC90」の最新アップデートモデルに試乗。パワフルなプラグインハイブリッドシステムを採用する3列シートSUVの走りを、先にステアリングを握った「V60」や「XC60」との比較を交えながら報告する。
-
ハーレーダビッドソン・パン アメリカ1250リミテッド(6MT)【レビュー】 2026.4.17 アメリカの大地が鍛えたアドベンチャーモデル「ハーレーダビッドソン・パン アメリカ1250」に、充実装備の上級モデル「リミテッド」が登場! 試乗して感じられた、日欧のライバルに勝るとも劣らない魅力と、どうしても気になるポイントを報告する。
-
レクサスIS300h“Fスポーツ”(FR/CVT)【試乗記】 2026.4.15 「レクサスIS」のビッグマイナーチェンジモデルが登場。もはや何度目か分からないほどの改良だが、長年にわたってコツコツとネガをつぶし続けてきただけあって、スポーツセダンとしてひとつの完成形といえるレベルに達している。“Fスポーツ”の仕上がりをリポートする。
-
モーガン・スーパースポーツ(FR/8AT)【試乗記】 2026.4.14 職人の手になるスポーツカーづくりを今に伝える、英国の老舗モーガン。その最新モデルがこの「スーパースポーツ」だ。モダンながらひと目でモーガンとわかる造形に、最新のシャシーがかなえるハイレベルな走り。粋人の要望に応える英国製ロードスターを試す。
-
ボルボV60ウルトラT6 AWDプラグインハイブリッド(4WD/8AT)【試乗記】 2026.4.13 1990年代のステーションワゴンブームでトップランナーであったボルボ。その伝統を受け継ぐモデルが「V60」だ。現行型の登場は2018年とベテランの域に達しようとしているが、アップデートされた最新プラグインハイブリッドモデルの印象やいかに。
-
NEW
ディフェンダー110 X-DYNAMIC HSE P300e(4WD/8AT)【試乗記】
2026.4.20試乗記本格クロスカントリービークルの「ディフェンダー」にプラグインハイブリッド車の「P300e」が登場。電気の力を借りて2リッターターボとしては格段にパワフルになった一方で、カタログ燃費はなかなか悲観的な数値を示している。果たしてその仕上がりは? -
NEW
ポルシェジャパンのイモー・ブッシュマン社長に聞く 日本での展望とスポーツカーの未来
2026.4.20デイリーコラム2025年8月に着任した、ポルシェジャパンのイモー・ブッシュマン新社長。彼の目に日本はどう映り、またどのような戦略を考えているのか? 難しい局面にあるスポーツカーや電気自動車の在り方に対する考えを含め、日本における新しいリーダーに話を聞いた。 -
スバル・ソルテラET-HS(前編)
2026.4.19ミスター・スバル 辰己英治の目利きスバル&STIでクルマを鍛えてきた辰己英治さんが、“古巣”スバルの手になる電気自動車「ソルテラ」に試乗。パワートレインの電動化以外にも、さまざまな試みが取り入れられた一台を、ミスター・スバルはどう評価するのか? -
第57回:スズキはなぜインドに賭ける? 変わらず牛が闊歩するインドの最新工場を小沢コージが直撃
2026.4.18小沢コージの勢いまかせ!! リターンズ小沢コージがインドへ。日本の自動車ファンにとってインドといえばスズキのイメージだが、実はスズキは現在、インドへの大型投資の真っ最中だ。なぜスズキはインドでこれほどまでに愛されるのか。最新工場を見学して考えた。 -
ボルボXC90ウルトラT8 AWDプラグインハイブリッド(4WD/8AT)【試乗記】
2026.4.18試乗記2016年に上陸した2代目となるボルボのフラッグシップSUV「XC90」の最新アップデートモデルに試乗。パワフルなプラグインハイブリッドシステムを採用する3列シートSUVの走りを、先にステアリングを握った「V60」や「XC60」との比較を交えながら報告する。 -
谷口信輝の新車試乗――ディフェンダー・オクタ編
2026.4.17webCG Moviesブーム真っ盛りのSUVのなかで、頂点に位置するモデルのひとつであろう「ディフェンダー・オクタ」。そのステアリングを握ったレーシングドライバー谷口信輝の評価は……? 動画でリポートします。




















