フォード・フォーカス 2.0(4AT)【ブリーフテスト】
フォード・フォーカス 2.0(4AT) 2005.09.16 試乗記 ……270万円 総合評価……★★★ 世界的なヒットを飛ばした初代を継ぐ新型「フォード・フォーカス」。峠道だけでなく、都市部をも含めたクルマの印象やいかに。 |
成熟か守りか
『webCG』でも活躍したフォーカスの2代目。初代目が世界的なヒットだったために、これをうまく継承して、さらに新しい時代にフィットさせるのは、簡単ではなかったはずだ。
フォードがとったのは、初代は “このクラスで最良のクルマ”だったという自信を裏付けに、初代をベンチマークとして開発するという大胆な方法。つまり旧フォーカスの精神をそのまま時代に合わせて受け継ぎ、美点をさらに磨きつつ、欠けていた面を改善したのだという。
結果として登場した2代目は、初代ほどのインパクトはないし、デザインもコンセプトもあれほど尖っていないが、ドライバーズ・カーとしての精神は生かされ、さらに円熟味が与えられた。
同時にボディは肥大化し、全体の個性は薄らいだ。この新型、“成熟”と見るか、“守りに入った”と見るか、ちょっと難しいところがある。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
1998年にエスコートに代わるフォードのCセグメントカーとして登場。ニュー・エッジを標榜した先進的なスタイリングと、何よりもドライバーズカーとしての純粋な走りを追求したことによって、それまでのフォードのイメージを大きく変える世界的なヒットとなったのがフォーカス。この初代は6年間で世界中で約400万台が売れた。日本でも2000年から5年間で累積約1万台が販売されたという。
今回のモデルは1年前のパリサロンでデビューした2代目。このクラスで無敵といわれたハンドリング能力をさらに高めるべく、タイヤのフットプリントをより広げ、さらなるスタビリティと敏捷さ、そして乗り心地と剛性の向上を図った。結果として前身よりもホイールベースは25mm延ばされ、トレッドは前50mm、後ろ55mm拡大された結果、「ボルボS40/V50」「マツダ・アクセラ」と同系のプラットフォームはかなり巨大化する。特に全幅は1840mmと、二周りも広がったが、メーカーによれば両側のミラーまで計算すれば、旧型よりも7mmだけ狭くなったのだという。
エンジンはモンデオと同系のデュラテック2リッター直4だが、年末には1.6リッターも追加される。トランスミッションは4ATのみ。
(グレード概要)
さしあたって2.0の1種類で、従来のように「GHIA」などのサブネームも付かないシングルグレードである。ボディも5ドアハッチバックのみ。前述のように12月には1.6リッターモデルが導入されるし、いずれ別種のボディやMT版も追加されるだろう。この仕様でも3Dエアバッグやサイドカーテン・エアバッグ、ESPやブレーキアシストなどの安全装備、左右独立フルオートエアコン、ドライバー用6ウェイパワーシート、オートランプ、雨滴感知ワイパーなど、大体必要なものは付いている。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
妙にデザインされていながら、ひどく安っぽかった先代に比べると、ダッシュやメーター周りの仕上げやデザインはモンデオ並みによくなった。基本的に機能主義のデザインで統一されているが、細かいところを見ていくと、今のこのクラスの水準からするなら、質感はもう一歩というところだろう。ただし室内装備水準は格段に良くなっている。一見センターのオーディオ/エアコン関連のパネルはひどく大きく見えるし、慣れるまでは使いやすいとは言えないが、先代に比べるならずいぶん努力した。
(前席)……★★★
中央と両端で素材を使い分けてスポーティに仕立てられたシートは、広がった幅の恩恵も受けてサイズ的に余裕がある。全体に大ぶりに感じるがサポートそのものはかなりいいし、腰痛持ちには基本構造がしっかりしているのがわかる。単純なランバーサポートは結構効く。ただしドライバーからの視界は賛否が分かれるだろう。
実はデザインのためにウィンドシールドの傾斜を強め、一方でドライバーの頭上空間を確保するために、フロントウィンドウ自体がかなり前方に位置する。要するにダッシュ下端が相当前進して、あたかもワンボックスのミニバンのような風景をつくり出す。ということは、ミニバンと同様に、比較的短いノーズはまったく見えない。前方が広びろして気持ちがいいととるか、スポーティさに欠けるととるか、そこが問題だろう。
(後席)……★★★
延びたホイールベース、広がった全幅は、結果として先代より広いルームをもたらしたが、これは後席で顕著である。単に幅が広がり、足下のスペースが拡大されただけでなく、シートそのもの、特にクッション長が大きくなった。
前と同様、後ろの窓も大きく傾いているが、傾斜そのものは頭上空間のより後ろから始まるから、ヘッドクリアランスは犠牲にされていない。だがドアハンドルに残ったプラスティック・モールドの痕跡やリアドア後端の隙間から見える外板など、実際の機能とは関係ないとはいえ、商品としてみるとちょっと失望する。
(荷室)……★★★
寸法が大きくなった分、たしかにトランクルームも広がった。一クラス下のフィエスタの倍ぐらいはある。容量だけは広い。リアシートが分割だけでなく、ダブルフォールディングできるから、その場合のスペースはかなりのものになる。ただ、ワゴンではなくハッチバックゆえにリアバンパー上の敷居は高く、重い荷物の出し入れはしにくい。内装の仕上げも日本のクルマと比べると、かなり質素になる。ここも機能的にはいいが、ユーザーの気持ちを掴もうという神経はさらさらないのがわかる。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
デュラテック2リッターは、マツダ・アテンザ用の姉妹エンジンだが、それぞれまったく違ったエンジンのように仕上げられている。基本的に低回転域のトルクは充分、あとは4000rpmから上の活発さが魅力。同系のエンジンを古いフォード・ボルドー製ATと組み合わせた。クルマの性格、スペース、製造システムなどから、モンデオやマツダのようにJATCO製を使わず、あえてこのATを選んだという。
4段というのは現代のこのクラスとしては当然ハンディになるが、Dレンジでキックダウンをかなり活発に誘発させることで、特にトルクカーブが落ち込む領域を避けている。BMW式に前方がダウン、後方がアップのティップシフトは、物理的には正しいが心理的にはちょっと戸惑う。それ以上にシフトをしたときのレスポンスがかなり遅れるのが難点。
いずれにしても、マニュアルが欲しいというのは誰もが言うことで、ヨーロッパには5MTのほかに6MTもある。たしかに段数が多いのはイイだろうが、ティップシフトなどあまりせず、Dのままでイージーに使いこなせば、それなりに活発に走れる。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
いうまでもなく、このクルマの最大の魅力がハンドリングである。これは先代のそれを受け継ぎつつも、広いフットプリント、高まった剛性や、充分なサスペンションストローク、そして電動油圧パワーステアリングなどによって、さらに一段と磨きがかかった。というより、より円熟して奥深いハンドリングを楽しませるクルマになった。ステアリングを通じて前のタイヤが手に触れるように感じられるし、スロットルでもブレーキでも短いノーズを意のままにできるのは、フォーカスの最大の魅力。それに少なくともフロントシートでは、乗り心地も向上し、小さなストロークでの突き上げはほとんど感じなくなった。
だが5つ星にしなかったのは、リアシートでの乗り心地が、フロントより格段に落ちるからである。突き上げはひどくなり、フロントでは軽いピッチも、リアでは大きな揺動に感じる。それに下回りからの音がかなり伝わってくる。
今回、箱根での試乗会の前に一般道でかなりの距離を乗る機会があった。多分箱根だけでしか乗らなかったなら、このクルマの評価はもっと上がっただろう。でもいったんドライバーズシートを離れて、長時間後ろで一般の道を走ったりすると、昔のフォードの世界がまだ残っていることを知った。やはりフォーカスは、あくまでもドライバーズカーなのであり、だから特にイギリスで評価が高いのもあらためて理解できた。
(写真=高橋信宏/2005年9月)
【テストデータ】
報告者:大川悠
テスト日:2005年7月26〜30日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2005年型
テスト車の走行距離:1917km
タイヤ:(前)205/55R16 91W(後)同じ(いずれも ミシュラン Pilot PRIMACY)
オプション装備:--
走行状態:市街地(2):高速道路(5):山岳路(3)
テスト距離:339.9km
使用燃料:33.8リッター
参考燃費:10km/リッター

大川 悠
1944年生まれ。自動車専門誌『CAR GRAPHIC』編集部に在籍後、自動車専門誌『NAVI』を編集長として創刊。『webCG』の立ち上げにも関わった。現在は隠居生活の傍ら、クルマや建築、都市、デザインなどの雑文書きを楽しんでいる。
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