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フォードが日本市場から撤退して8年たった今でも“新車”が売られているワケは?

2024.11.14 デイリーコラム 玉川 ニコ
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本国には注目に値するモデルも

月日がたつのは早いもので、2016年9月にフォードが日本市場から撤退して以来、気がつけば8年もの時間が経過した。そしてその8年間で、フォードの本国でのラインナップはずいぶんと進化したようだ。

2016年当時、フォード・ジャパン・リミテッドが取り扱っていた車種のなかで個人的に興味が持てたのは、大変失礼ながら「マスタング」と「フォーカス」ぐらいのものだった。しかし今、本国の公式サイトをのぞいてみると、そのラインナップには注目に値するモデルがけっこう多いことに気づく。

マスタングは知らない間にかなりシュッとした7代目にフルモデルチェンジされており、2021年に復活したクロスカントリーモデル「ブロンコ」は相変わらず超絶おしゃれなだけでなく、高性能モデル「ブロンコ ラプター」も追加されている。

ラプター(Raptor)とはフォードのハイパフォーマンスバージョンにつけられるネーミングで、それまではピックアップトラックの「F-150」と「レンジャー」に設定されていた。2022年に登場したブロンコのラプターは、通常モデルより約250mmワイドな特別仕立てのボディーに専用の足まわりなどを合わせ、そのうえで最高出力400HP以上の3リッターV6ツインターボエンジンも組み合わせたというゴキゲンなモンスターSUVだ。

また、2022年に北米と南米で発売されたコンパクトピックアップトラック「マーベリック」は、日本市場でもけっこう人気を博しそうなデザインとスペックであるように思える。

2016年9月にフォードが日本市場から撤退して以来、気がつけば8年がたった。本国アメリカではラインナップの世代交代が進み、電動化モデルも増えてきている。写真はフルモデルチェンジで7代目に進化した「フォード・マスタング」の2024年モデル。
2016年9月にフォードが日本市場から撤退して以来、気がつけば8年がたった。本国アメリカではラインナップの世代交代が進み、電動化モデルも増えてきている。写真はフルモデルチェンジで7代目に進化した「フォード・マスタング」の2024年モデル。拡大
1964年にデビューした「マスタング」は、2022年に7代目となる現行型が登場。日本にも導入された6代目モデルのイメージを残しつつ、よりモダンに進化している。北米での価格は3万1920ドル(邦貨換算で約490万円)から。
1964年にデビューした「マスタング」は、2022年に7代目となる現行型が登場。日本にも導入された6代目モデルのイメージを残しつつ、よりモダンに進化している。北米での価格は3万1920ドル(邦貨換算で約490万円)から。拡大
7代目「マスタング」のコックピット。12.4インチのメータークラスターと13.2インチのタッチ式ディスプレイを組み合わせた、横長の液晶パネルが目を引く。
7代目「マスタング」のコックピット。12.4インチのメータークラスターと13.2インチのタッチ式ディスプレイを組み合わせた、横長の液晶パネルが目を引く。拡大
2019年1月以来の開催となった2022年9月のデトロイトモーターショーでフォードは7代目となる新型「マスタング」を発表した。新型マスタングのデビューは、同ショー最大のトピックといえるものだった。
2019年1月以来の開催となった2022年9月のデトロイトモーターショーでフォードは7代目となる新型「マスタング」を発表した。新型マスタングのデビューは、同ショー最大のトピックといえるものだった。拡大
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フォードの新車を販売しているのは?

とはいえフォードは前述のとおり2016年9月に日本市場から撤退してしまったため、それら魅力的なニューモデルも、正規輸入車として入手することはできない。

しかしJAIA(日本自動車輸入組合)の統計データを見ると、「フォードの新車」は今もなお、少数だがコンスタントに輸入・販売されている。具体的には2021年が633台で、2022年は421台、そして直近の2023年は299台であった。

これらの新車はどこの誰が、どうやって販売しているのだろうか──と考えたとき、思い当たるのは「フォード栃木」だ。

アメ車ファンの間ではおなじみの話だが、栃木・宇都宮に店舗を構えるフォード栃木は、フォード社が2016年に日本市場から撤退した後も「Ford」の看板を掲げ続け、新車販売とアフターサービスを続けてきた元正規ディーラー。それゆえきっとフォード栃木が、近年の統計データに上がってくるフォード新車の多くを販売しているに違いない──と思い、確認のため同社へ電話してみると、「残念ながら現在はフォード車の輸入はしていない」とのこと。なんと!

聞けばフォードのショールームは、すでにDSの正規ディーラーである「DS STORE宇都宮」に転換されているという。かつては注文があれば1台ずつフォードの新車を本国から輸入・販売していたが現在は行っておらず、取り扱いと在庫は中古車だけ──とのことだった。

……ううむ。ではいったいどこの誰が年間数百台もの「フォードの新車」を、日本で販売しているのだろうか?

日本で正規販売されたら人気を呼びそうなミドルクラスのピックアップトラック「フォード・マーベリック」。電動化が進む北米市場にあっても、ピックアップトラックの人気は衰えていない。
日本で正規販売されたら人気を呼びそうなミドルクラスのピックアップトラック「フォード・マーベリック」。電動化が進む北米市場にあっても、ピックアップトラックの人気は衰えていない。拡大
3列シート7人乗りの最新型「フォード・エクスプローラー」。スタイリッシュでよりモダンなSUVに進化した。2.3リッター直4ターボと3リッターV6ターボをラインナップしている。
3列シート7人乗りの最新型「フォード・エクスプローラー」。スタイリッシュでよりモダンなSUVに進化した。2.3リッター直4ターボと3リッターV6ターボをラインナップしている。拡大
快適さと機能性に磨きをかけたと紹介される「エクスプローラー」のコックピット。2025年モデルの最上級モデル「プラチナム」では、14スピーカーでトータル出力980Wを誇るバング&オルフセンのサラウンドシステムが採用されている。
快適さと機能性に磨きをかけたと紹介される「エクスプローラー」のコックピット。2025年モデルの最上級モデル「プラチナム」では、14スピーカーでトータル出力980Wを誇るバング&オルフセンのサラウンドシステムが採用されている。拡大
オーバーフェンダーが目を引くSUV「ブロンコ」のハイパフォーマンスバージョン「ラプター」。ワイルドなフォルムは、日本のクロカン4WDファンにも刺さりそうだ。
オーバーフェンダーが目を引くSUV「ブロンコ」のハイパフォーマンスバージョン「ラプター」。ワイルドなフォルムは、日本のクロカン4WDファンにも刺さりそうだ。拡大

旧正規ディーラー系の並行輸入車も

考えられるのは、2023年の場合で299台となるJAIAの統計データは、日本国内に多数存在する並行輸入業者が扱っている「新車並行輸入車」と「中古並行輸入車」の合算数ではないか? ということだ。

アメリカなどで乗られていた中古車を日本へ輸入した「中古並行輸入車」であっても、日本での初度登録は車検3年の新車扱いになる。それゆえ、年間数百台もの「フォードの新車」が統計データに載る──という、至極まっとうな結論だ。

しかしながら、比較的小規模な並行輸入業者が輸入したフォード車だけで、そこまでの数になるとも思えない。きっとどこかに「比較的大規模な、今なおフォード車を取り扱うネットワーク」があるのではないか──ということで探してみると、やはりあった。

フォード社の撤退に伴ってフォード・ジャパン・リミテッドの正規ディーラー網は消滅した。だが東京・日本橋浜町のピーシーアイが2016年10月1日、日本国内でのフォード車オーナーのアフターサービス業務を提供するフォード・モーター・カンパニーのパートナー企業となった。そしてピーシーアイのネットワークに加盟する各企業が今も「フォード〇〇サービスセンター」などの看板を掲げ、まずはフォード車オーナーのためにアフターサービスを請け負っている。

そしてネットワーク内のさらに一部の企業は、フォード車の新車並行輸入も、ユーザーからの注文に応じて行っている。特に中京エリアの「フォード岐阜」「フォード四日市」「フォード松坂」を展開しているエフエルシーは、フォードの最新ラインナップを積極的に取り扱っているもようだ。

またピーシーアイのネットワークとは異なるが、光岡自動車が展開しているBUBU MITSUOKAも、B.C.D(BUBU CALIFORNIA DIRECT)なる独自の直輸入システムを通じて、フォード車の中古並行輸入に積極的である。

もちろんアメ車フリークにはおなじみとなる有名並行輸入業者の取扱数も少なくないだろう。そうした背景をベースに、フォードの“新車”は今も海を渡り日本に上陸。年間数百台が売れているのだ。根強い人気があるブランドゆえに、アメリカの大統領が交代するこのタイミングを機にフォード本体がまた日本へ戻ってきてくれないかなぁ……とも思うわけである。

(文=玉川ニコ/写真=フォードモーターカンパニー/編集=櫻井健一)

かつて日本で販売された「エクスプローラー」の最終型となった2016年モデル。フォードが日本市場から完全撤退した後もその人気は衰えず、同年式の正規ディーラー車が400万円以上の価格で販売されているケースもちらほら見受けられる。
かつて日本で販売された「エクスプローラー」の最終型となった2016年モデル。フォードが日本市場から完全撤退した後もその人気は衰えず、同年式の正規ディーラー車が400万円以上の価格で販売されているケースもちらほら見受けられる。拡大
キビキビした走りで人気の高かった「フォーカス」は、Cセグメントのコンパクトハッチバック。欧州フォードが開発・製造を担当した。写真は2016年モデルで、日本で正規販売された最終型。2018年にフルモデルチェンジされ、現在は4代目に進化している。
キビキビした走りで人気の高かった「フォーカス」は、Cセグメントのコンパクトハッチバック。欧州フォードが開発・製造を担当した。写真は2016年モデルで、日本で正規販売された最終型。2018年にフルモデルチェンジされ、現在は4代目に進化している。拡大
コンパクトSUV「エスケープ」の後継モデルとしてラインナップした「クーガ」。写真は日本導入の最終型となった2016年モデルで、「フォーカス」と同じく欧州フォードが開発・製造を担当した。最新モデルにはプラグインハイブリッド車もラインナップしている。
コンパクトSUV「エスケープ」の後継モデルとしてラインナップした「クーガ」。写真は日本導入の最終型となった2016年モデルで、「フォーカス」と同じく欧州フォードが開発・製造を担当した。最新モデルにはプラグインハイブリッド車もラインナップしている。拡大
電気自動車専用車種として2019年に登場したクロスオーバーモデル「マスタング マッハE」。2021年に欧州での販売もスタートした。
電気自動車専用車種として2019年に登場したクロスオーバーモデル「マスタング マッハE」。2021年に欧州での販売もスタートした。拡大
ラダーフレームのシャシーにエンジンを縦置き配置する本格クロスカントリーモデル「ブロンコ」に対して弟分に位置づけられる「ブロンコ スポーツ」は、FFプラットフォームを用いたコンパクトな都市型SUVとして2020年に登場。2023年には13万台近くを販売するスマッシュヒットを飛ばした。
ラダーフレームのシャシーにエンジンを縦置き配置する本格クロスカントリーモデル「ブロンコ」に対して弟分に位置づけられる「ブロンコ スポーツ」は、FFプラットフォームを用いたコンパクトな都市型SUVとして2020年に登場。2023年には13万台近くを販売するスマッシュヒットを飛ばした。拡大
玉川 ニコ

玉川 ニコ

自動車ライター。外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、自動車出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。愛車は「スバル・レヴォーグSTI Sport R EX Black Interior Selection」。

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