スズキ・ジムニーXC(4AT)【試乗記】
地力をみせつけろ! 2005.08.15 試乗記 スズキ・ジムニーXC(4AT) ……158万250円 1970年に初代が誕生した「スズキ・ジムニー」は、軽自動車で本格派クロスカントリー4WDが楽しめることで、一躍人気を集めた。が、3代目となる現行モデルは、人気低迷ぎみ。その理由は……。変わった点、受け継いだ点
SUV特集に登場させはしたものの、ジムニー自体は言うまでもなく、SUVなんて言葉が生まれるずっと前から、ブームとは一切関係なく愛され続けてきた存在である。軽自動車とはいえ、その中身は正真正銘の本格オフローダーだ。強靱なラダーフレームを持つボディは、前後リジッドサスペンションで四輪を吊り、4WDシステムにはローレンジ付きのパートタイム式を採用。そのコンパクトなサイズとあわせて、まさにどんなに険しい道へも入っていける優れた踏破性を実現している。「小さいくせに」というよりは、小さいからこそ獲得できた究極のオフロード性能が、そこに具現されているのだ。
そんなジムニーではあるが、現行モデルではずいぶんとソフィスティケイトされた印象ももたらしている。基本フォルムは先代と変わらないが、ボディのエッジというエッジが落され、異形ヘッドランプなどとあわせて以前よりはやわらかな雰囲気だ。
その傾向はインテリアにおいてさらに顕著。フルトリムのダッシュボードはいかにも乗用車風で、汚れたらそれこそ丸ごと水をかけて洗っちゃおうかと思わせた、昔の面影はもはや無い。それどころかテスト車の場合、キーレスエントリーも付いているし、エアコンには抗菌エアフィルターまで装備。メーターパネルの意匠はスタイリッシュで、4段ATはゲート式となり、従来モデルとは見違えるほどだった。
一方、走りの印象は良くも悪くも従来のジムニーのイメージを色濃く受け継ぐものだった。パワーアシストされたステアリングは操舵力がきわめて軽く、剛性感もどことなく頼りない。660ccターボのエンジンは、パワーはそこそことしても吹け上がりは粗いし、ATの制御も洗練が足りず、シフトにどうにもぎこちなさがある。一方、こちらも変わらぬ美点と言えるのが、シャシーの剛性感の高さ。今回はオフロードは一切走っていないのだが、その頼りない操作系の向こうに、おぼろげながら体躯の頑健さを感じることはできた。
存在感が薄いワケ
とはいえ総じて見ると、その走りの感触には物足りない印象が残ったというのが正直なところ。オンロードでチラチラと垣間見えた頼もしさも、きっとオフロードに持ち込めば、もっと鮮烈に感じることができるのだろう。けれど、それを体験するユーザーはほんのひと握りのはずだ。ならば、普段からもっと「自分は今、ホンモノに触れているんだ」という思いを強く味わわせてほしいところ。たとえばステアリングフィールや足さばき、エンジンのトルク感。これらすべてにおいて華奢な印象を排し、タフで濃密な味わいを身に付けてくれれば、地力はあるだけに、もっともっとアピール性が高まるのではないだろうか?
以前と違い、最近のジムニーに存在感が薄いのは、化粧した内外装とその中身のギャップ、というかハッキリいって中途半端なところが、コアなファンからも一般ユーザーからも今ひとつ受け入れられなかったからではないかと想像する。
「スイフト」や「エスクード」など、最新のスズキ車はそうした走りや操作系のクオリティの面で目を見張るほどのレベルアップを果たしているだけに、今後そのクルマ作りを、このジムニーを含む軽自動車の世界にまで広げてくれれば、きっと新しい世界が開けるのではないだろうか。
繰り返すようだが、地力はあるのだ。老舗ジムニーの今後の進化、前向きに期待したい。
(文=島下泰久/写真=郡大二郎/2005年8月)

島下 泰久
モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。
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