BMW630i(6AT)【試乗記】
二人だけの時間を作るクルマ 2005.08.05 試乗記 BMW630i(6AT) ……902万5500円 BMWの高級4座クーペ「6シリーズ」のエントリーモデルとなる、3リッター直6の「630i」に試乗。4.5リッターモデルとの違いとは……。6シリーズのエントリーモデル
「メルセデス・ベンツCLS」が売れているという。2005年2月4日に日本でリリースされ、わずか5か月でおよそ2400台を販売したそうだ。「ちょいモテオヤジ」の心を射止めたのか??
一方、どういう人が買うのかがイマイチ見えてこないのが、14年ぶりに復活したBMWのスタイリッシュクーペ「6シリーズ」。クリス・バングルが手がけた、アクの強い顔つきが特徴だ。
CLSより国内デビューは早く、4.5リッターの「645Ci」と同カブリオレがラインナップされ、2004年11月にエントリーグレードとなる3リッターが追加された。今回のテスト車は、それ。
630iのエンジンは「BMWといえば……」に続く、直列6気筒エンジン。「シルキー」と形容されるこのBMWの直6は、新型3シリーズのトップグレード「330i」に搭載されるものと基本的に同じ。ダブルVANOSことバリアブルカムシャフトコントロール、バルブトロニックなど、お得意の技術に加えて、3レベルレゾナンスインダクションインテークマニフォールドと呼ばれる可変吸気システムの採用により、低回転でのトルク増強を実現したという。
アクセルレスポンスや、ATのシフトプログラム、電動パワステのアシストが変化する、DDC(ドライビングダイナミックコントロール)も標準装備。645Ciとの違いは、アクティブシャシーコントロールのダイナミックドライブがオプションであるところと、タイヤサイズ。あとは若干の快適装備が省かれるにとどまる。
ジェントルなエンジン
クロスとレザーのコンビネーションとなるシートに腰を下ろすと、シンプルなインパネが目に入る。昨今のBMWは、iドライブの採用と相まって、ボタン類も少なくアッサリとしたインパネになっている。そのせいもあり、パネル類の面積が広くなるわけで、もし6シリーズの購入をお考えなら、素材の選定は慎重にすべきだろう。言わずもがな、ですが。試乗車は、赤内装に木目パネルがミスマッチに感じた。BMWはスポーティなカラーリングを選ぶ方がフィットするのではないだろうか。
645Ciと大きく違う印象を受けたのはエンジン音。645CiのV8エンジンはかなりワイルドなサウンドを響かせる。同一のエンジンを搭載するカブリオレはより顕著だった。対して630iはジェントルなノートを奏でる。音だけを聞くと、645Ciよりも上級に感じるかもしれない。
排気量の小ささが不満になることはなかった。2500回転から最大トルクを発生するというエンジンはトルキーで扱いやすく、きめ細かい変速をする6段ATもドライバビリティに大いに貢献している。低速ではクイックになるアクティブステアリングも好印象。市街地をスムーズに走り抜けることができた。
ニュー6シリーズの図体を考えると、1590kgというボディの軽さも特筆に値する。日本車でいえば、「ホンダ・アコードワゴン」あたりと同じレベルである。マグネシウム合金やアルミニウム合金を使い、エンジンを軽量化した効果が出ている。もちろんエンジンだけの重量差ではないが、車重は645Ciと比べ150kgも軽い。630iのウェイトは、実は同エンジンを搭載する「330i」とは40kgしか違わないのだ。コーナリング時には、このボディの軽さゆえに慣性マスが小さくなり、ロール量が少なくなる。ダイナミックドライブ非装着のため、スタビライザーが電子制御されないが、コーナリング時の安定感は高い。もちろんBMWの流儀である硬いダンパーセッティングに由来するところも大きいのだが。
使いやすいクルーズコントロール
高速道路での走行では、クルーズコントロールを多用した。10km/h刻みで設定できるそれは、ざっくりとして使いやすい。設定速度はスピードメーター外周にマーキングされる。またオプションとなるアクティブクルーズコントロールは、前車との距離を自動で維持することもできる。車間は4段階に調整可能。こちらもメーター内にわかりやすく表示される。
クルージングスピードになるとアクティブステアリングは重さを増し、タイヤの切れ角も小さくなる。直進安定性は高い。ランフラットタイヤがもたらす路面の凹凸からの突き上げは、話題にされるほどするどいものではなく、むしろ乗り心地は良好。巡航時には車内へ侵入する騒音は少なく、標準の8スピーカーから流れるBGMにうっとりしながら、ロングツーリングが楽しめる。
6シリーズのエントリーグレードとして設定されたモデルだが、単に廉価版にあらず。性格の違いがハッキリしていた。音質や走行性能でグレードを分けるとすれば、「645Ciがスポーティ、630iがエレガント」といえよう。
ちょっとターゲットが見えた。
家族持ちの「ちょいモテオヤジ」は4ドアという逃げ道があるCLSを選び、「子供がいないアツアツ夫婦」には6シリーズがいいんじゃないだろうか。
結婚したって、恋人同士の時と同じ二人だけの時間が作れそう。そんな二人はお金も余ってそうだし。
(文=webCG本諏訪裕幸/写真=荒川正幸、峰昌宏(M)/2005年8月)

本諏訪 裕幸
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