BMW X5 4.4i (5AT)【ブリーフテスト】
BMW X5 4.4i (5AT) 2000.11.01 試乗記 ……863.0万円 総合評価……★★★★V8が歌えば……
地上から座面まで約80cm。「ヨッコラショ」と言わずに乗り込めるクールなSUV、もとい、SAV(Sports Activity Vehicle)。それでもあたりを睥睨できる「コマントポジション」に、くすぐられる自尊心。
目の前には、ダッシュ上面がシボ付き艶消し黒の、紛うかたなきビーエムのインパネが。ウッドとレザー。メーターナセルがちょっと高いことを除けば、そこはもう、ラグジュアリーサルーンの世界。「ブロン!」と唸るV8の音も5シリーズ。
225/55R18の大きなタイヤを履くためか、街なかでは凹凸を拾うが、ひとたび巡航に移れば、乗り心地は存外フラット。7シリーズゆずりの4輪独立懸架が効いて、ボディがワラワラ揺すられることもない。
286psと44.9kgmを誇る8発は、ハコネの急坂もものならず。2.2トンのボディをモリモリと押し上げる。
驚嘆すべきは山での身のこなし。不安にフラつくことなく、ビシッとコーナーをこなす。事実上の重量級スポーツワゴン。しかし「ブロロロン…」とひとたびV8が歌えば、燃費計の針は「ヒューン」と右へ、3.5km/リッター以下へ……。北米経済同様絶好調のビマーことBMW。CAFE(企業平均燃費)は大丈夫?
【概要】 どんなクルマ?
(シリーズ概要)
1999年のデトロイトショーでデビューしたBMWのSUV(ルックのスポーティワゴン)。BMWは、SAV(スポーツ・アクティビティ・ヴィークル)だと主張する。モノコックボディに、本国では、3リッター直6か、4.4リッターV8が載せられ、センターデフを介して4輪を駆動する。7シリーズに準じた4輪独立懸架の足まわりをもつ。生産地は、Z3同様、北米はサウスカロライナのスパータンバーグ工場。
(グレード概要)
2000年10月1日から日本での販売が開始されたBMW X5。当面、4.4リッターV8+5ATの「4.4i」のみ。右ハンドル、革内装のモノグレードである。11種類の外装色、5種類の内装色がカタログに載る。
【車内&荷室空間】 乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
みごとに「BMW」なX5のインパネまわり。ダークポプラウッドが使われる。革巻きステアリングホイールは、電動で前後上下に動かせる。TVチューナー付きモニターを備えたDVDナビゲーションシステムを標準で装備する。
(前席)……★★★★
厚く柔らかい革を使ったメモリー付き電動シート。ふんわりとした座り心地ながら、無闇にお尻が沈まず、カーブではバックレストのサイドサポートが上体をしっかりホールドしてくれる。シートヒーターが備わる。
(後席)……★★★★★
足元のスペース、ヘッドクリアランスともに文句なし。ソファのようなレザーシートに座っていると、応接間にいるようだ。エアコンの吹き出し口が、トンネルコンソール後端に備わるのもウレシイ。
(荷室)……★★★
床面最大幅123cm、奥行き90cmのラゲッジルーム。テイルゲートは、上下に分割して開く。ロアセクションを開けると、荷室フロアとの段差がないため、重いモノの搭載が楽だろう。また、200kgまでの重量に耐えるので、ベンチがわりに使用することも可能だ。
【ドライブフィール】 運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
740i、540iと同じ4.4リッターV8ユニット。チューンも変わらない。吸気側の可変バルブタイミング機構をもつ。スロットルに応じてスムーズに回転を上げ、巡航時には粛々と回るが、しかし心地良いざわめきで、常に存在を主張するエンジンだ。5段ATからの出力は、センターデフを介して、前38%:後62%にトルクを配分する。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
2トン超の(一見)クロカンで、よくぞここまで、と驚くハンドリング。3シリーズの「しまった」足まわりがそのまま重量級になった感じ。「曲がり」でのロールはプログレッシブで、切り返しにも遅れはすくない。また、エアサスの後輪がよく路面に追従すること! もったいなくて、オフロードでは使えません。そのうえで、ABS、トラクションコントロール、コーナーでの制動力制御、アンチスピンデバイス、ブレーキアシストなど、電子制御を満載する。
(写真=石原 康)
【テストデータ】
報告者: web CG 青木禎之
テスト日: 2000年10月31日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2000年型
テスト車の走行距離:-
タイヤ:(前)225/55R18 105H(後)同じ(いずれもMichelin Energy MXV4)
オプション装備:電動サンルーフ(18.0万円)/ホワイトターンシグナルレンズ(3.0万円)/メタリック塗装(7.0万円)
テスト形態:ロードインプレッション(プレス向け試乗会)
走行状態:市街地(4):山岳路(6)
走行距離:-
使用燃料:-
参考燃費:-

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。