第222回:コレで人気爆発「VWゴルフGTI」の隠し味!ヤリ手エンジニアが語る「DSG」の凄さ
2005.07.19 小沢コージの勢いまかせ!第222回:コレで人気爆発「VWゴルフGTI」の隠し味!ヤリ手エンジニアが語る「DSG」の凄さ
■クルマ以上に評判(!?)の「DSG」
そう言えば忘れてたけど、「フォルクスワーゲン・ゴルフGTI」、めちゃくちゃ評判いいですね。昔からのゴルフファンが「こ、これは初代GTIの再来だ〜」とか、「ここからが新しいGTIの歴史の始まりだ〜」とか言っちゃったりして。まったくクルマバカって奴ぁ、どーでもいいことを熱心に語りますよ。って俺もそのうちの一人なんだけどさ。
さて肝心のGTI、実はクルマ以上に評判がいいのがトランスミッションだ。れいのDSG「ダイレクト・シフト・ギアボックス」というシーケンシャルタイプなんだけど、たかがギアボックス、されどギアボックス。作動は確実でタイムラグがなく、ショックもすくなく、構造はMTに毛が生えたぐらい軽量&コンパクトという、まさに夢のトランスミッション。先日、機会があったんで来日した担当エンジニアを直撃してみました。40歳の若さで80人ほどのチームを支えるというミハエル・シェーファーさん。かなりのヤリ手である。
■「スポーティだから」じゃない
小沢:DSG、スポーティかつ感性に忠実で、本当に素晴らしいと思うんですけど、プロに言わせるとどこが一番優れてるんですか。
シェーファー:コンフォート性です。ショックがすくなく、ストレスがなく、燃費もいい。
小沢:「スポーティだから」とは言わないんですね。
シェーファー:燃費は機械効率的にはMTが一番よく、DSGは制御系のポンピングロスで若干落ちます。ただ、シフトプログラムを改善していくと燃費が向上し、普通のドライバーの場合、ドイツなどではDSGの方がイイんです。MTの3倍も頻繁にシフトして、より最適なギアを選んでくれます。
小沢:燃費のいいトランスミッションといえば、CVTはどうなんですか?
シェーファー:CVT は現在、存在意義が薄れつつあります。CVTのよさは、エンジンの燃焼効率がいいところばかりを使えるところなんですが、最近はエンジン全体の性能が上がっていて、全域で燃費がよくなってますから。ガソリンエンジンの場合はCVTよりDSGの方が低燃費なくらいです。
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■生産するのがムズカシイ
小沢:燃費が向上するとか合理的なトコロをみると、ドイツじゃ装着率は上がってるんでしょう?
シェーファー:すべてのクルマに備わってるわけじゃないんですが、従来、AT装着率が5%だったのが、DSGでは30%に向上した車種があります。
小沢:ヨーロッパのガンコなMTユーザーの心も溶かした、という感じですかね。
シェーファー:DSG はネガらしいネガがなく、最大トルクにもパワーにも制限がない。重量もMTよりは重いですが、ATより軽い。今後は「パサート」にも載りますし、2005 年末には「ブガッティ・ベイロン」にも載る予定です。縦置きの7段DSGで、1300Nm(132.6kgm!)までOK!
小沢:では今後、全車種をDSG化する?
シェーファー:唯一の問題が生産体制ですね。今は年間20万台という感じなんです。
小沢:どこが難しいんですか。
シェーファー:制御ですよ。滑らかなシフトを確保するために、バルブの一個ずつからチューニングしなければならない。
小沢:ハードというよりソフトの問題なんですね。
シェーファー:そうです。
小沢:ところでそのDSG、ポルシェが作るってウワサを聞いたんですが。
シェーファー:ハハハ(笑)。なんとなく他のメーカーがやってくることはわかってますが、あと2〜3年は出ないでしょうね。
大した自信である。でもまあ、このDSGが今後のVWグループ(VW、アウディ、ランボルギーニ、シュコダなど)の大きな切り札の一つになってくるのは間違いない。他のメーカーもノドから手が出るくらい欲しいモノでしょう。ま、トヨタのハイブリッドには負けるけどね。
(文と写真=小沢コージ/2005年7月)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
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