「日本車のホイールアーチは大きい?」
2005.07.09 クルマ生活Q&A ボディ「日本車のホイールアーチは大きい?」
ホイールアーチとタイヤの隙間ですが、日本車は欧州車に比べて広くなっているものが多いような気がします。そのためタイヤがやけに小さく見えてしまい、カッコ悪く感じます。友人はその理由を「日本車はスノーチェーンを取付けやすくするために広くあけてあるんだ」と言っています。とはいえ欧州でも雪が多く降るところもあるでしょうし、路面が凍ることもあるでしょう。それなのにスノーチェーンのことを想定していないとは思えないのです。なぜ日本車のホイールアーチは広めに取られているのかを教えて下さい。(KYさん)
お答えします。隙間が広い理由として、たしかにチェーンを装着した時にボディと接触するのを防ぐことなども考えられます。しかし私は、主に開発コストに関係するのではないかと思います。
自動車メーカーは一つの基本プラットフォーム(車台)を使い、さまざまなタイプのクルマを開発します。基本的な構造は同じでありながら、クルマによって求めている乗り心地が違うわけですから、サスペンションストロークなどを同じにするわけにはいきません。特に日本の大衆車は柔らかい足まわりを持つクルマが多く、見た目優先でホイールアーチとタイヤ隙間を狭くすると、ホイールハウス内部に干渉したりすることがあります。
高級車の場合は、サスペンションの開発にお金をかけ、乗り心地を損なわずにストロークを確保したりできるのですが、大衆車の場合はコストの関係でなかなかそうもいかず、見た目がアンバランスになることが多いと思われます。
欧州車(特にドイツ車)にアーチが狭くとられているクルマが多いのは、足まわりが硬いためにサスペンションストロークが少ないからともいえるでしょう。
また欧州では早くからプラットフォーム共通化を意識した開発が行われており、少しオーバーフェンダー状にして空間を確保するなどしてタイヤとの干渉を減らす工夫も取り入れられていました。
最近の国産乗用車も、そのあたりのデザインとエンジニアリングのバランスをちゃんととっていると、個人的には思います。

松本 英雄
自動車テクノロジーライター。1992年~97年に当時のチームいすゞ(いすゞ自動車のワークスラリーチーム)テクニカル部門のアドバイザーとして、パリ・ダカール参加用車両の開発、製作にたずさわる。著書に『カー機能障害は治る』『通のツール箱』『クルマが長持ちする7つの習慣』(二玄社)がある。