マツダ・ロードスター(6MT)(北米仕様車)【海外試乗記】
生真面目な三代目 2005.06.30 試乗記 マツダ・ロードスター(6MT)(北米仕様車) 日本発売が待ち遠しい新型マツダ「ロードスター」。南国ハワイで試乗した『NAVI』編集長の高平高輝は、「文句なし!」と絶賛するが、ちょっと残念なことも……。基本は変わらない
キリッとした紫外線たっぷりの陽光降り注ぐビッグ・アイランド。コハラ海岸のフアラライ・リゾートから雲を戴くマウナ・ロア目指して、オープンカーで走り出す。
まあ、ひと言で言って「最高!」のシチュエーションではなかろうか。しかもクルマは、待望の新型マツダ・ロードスターである。これで満足できないという難儀な御仁がいるのなら、お目にかかってみたいものだが……、いや実際のところ、天気もクルマも文句なし。些細なことは気にせずに、8月末の発売を待つのみ、である。けれども、それで済ませてはあまりにも気が引けるので、もう少し詳しく新しい三代目のロードスター、正確には北米仕様の「MX-5」のどこがどういう具合に文句なしなのか、について報告しよう。
世界的なオープン2シーター復活のきっかけとなった初代ロードスター。デビューから16年経った今年夏に発売予定の3代目ロードスターは、従来型からエンジンもシャシーも一新されたブランニューモデルだが、基本コンセプトは初代から少しもぶれていない。つまり「FUN」を第一義とする人馬一体のライトウェイトスポーツカーだ。
ただし、ハワイ島での国際試乗会で対面した新型ロードスターは、これまでに比べて大きくなっていた。2代目より全長も全幅も40mm拡大され、ホイールベースも+65mm。安全性など、時代の要請に対処するための最低限の拡大というが、その恩恵は座ってみれば一目瞭然だ。
大きくなったうえにしっかりしたシート、分厚くなったドア、余裕の生まれたコクピット周り、さらにいえばステアリングホイールやシフトレバー、サイドブレーキの操作感にもかつてのような“おもちゃっぽさ”は微塵もない。とにかく上等にリッパになっている。
しっかりした大人
走り出すとその印象はますます強くなった。何しろ乗り心地がいい。試乗会に用意されていたクルマは、ビルシュタイン・ダンパーと17インチタイヤを組み合わせた仕様。おそらく日本スペックでいえば「RS」に相当するモデルのはずだが、それでもボディの剛性感はもちろん、スムーズでしなやか、かつしっかりした足まわりにも率直に驚いた。こんなことを言ったらマツダの熱血エンジニアに叱られるかもしれないが、これまでのロードスターのある種“薄っぺらな”フィーリングが消え、まるでBMWのオープンカーのようなしっかり感に満ちている。
もちろん、だからと言って旦那仕様的プレミアムカーに転向したわけではない。ボディが大きくなり装備を充実させたにもかかわらず、ロードスターは依然としてライトウェイトだ(北米仕様の5MTで1122kg)。
マツダが「グラム戦略」と称する徹底した軽量化、たとえばルームミラーのデザインをシンプルにして84gの削減など、まさしくグラム単位での重量軽減策を遂行したおかげで、車重は従来型比でおよそ10kg増に留めることができたという。
しかも、エンジンは170ps/6700rpmと19.4kgm/5000rpmを発揮する2リッターDOHC、実用域でのトルクやレスポンスも、回した時の力強さも当然先代より一枚も二枚も上手である。前ダブルウィッシュボーン、後ろマルチリンクというサスペンションの基本能力もきわめて高く、アメリカらしい広く真っ直ぐな道が続くハワイ島では限界付近の挙動を試せなかったほどだ。
ちなみにこのサスペンション、形式でいえばマツダ「RX-8」と同様だが、実際の共用パーツはゼロという贅沢さ。実際にも兄貴分の立つ瀬がないんじゃないかと心配になるほど質感は高い。
他にも、スペアタイヤを廃してパンク修理剤に換えたことで、深さが増し150リッターの容量を持つトランクや、BMWのようにルーフ表面を上にすっきり格納されるようになったソフトトップなど、見逃せない改良点は少なくない。要するに三代目は、文句のつけようがない大人に成長したのである。
立派すぎて寂しい
ここからは蛇足かもしれないが、全方位的に成熟し、かつ肥大化を極力避けて、見事に出来上がった新型ロードスターにあえてひとつだけ言わせてもらえれば、なんと言うかちょっと立派になり過ぎたようにも思う。かつてのロードスターは裸足で草の上を走るような“素肌感覚”が最大の魅力だったと思うが、新型は安っぽさがなくなった代わりに、シンプル、カジュアル、ベーシックといった素の魅力、剥き出しのダイレクト感が薄れてしまったことも否めない。
十分リーズナブルであることは認めるが、ベーシックな5MTで220万円(すべて予定価格)、6MTは250万円、上級グレードの6ATで260万円という価格レンジもそろそろ微妙なところに足を踏み入れたのではないだろうか。ここから先はまた別のライバルが待つ、別の戦場との境界ぎりぎりと言えるだろう。
一途な情熱と努力で生を受けた新しいロードスターの優秀さに疑いはない。客観的に言えば文句なし、だ。それでも、オリジナルの粗野と言っていいほどのシンプルさを懐かしむアナクロ派はちょっぴり寂しさも拭えないのである。
(文=高平高輝/写真=マツダ/2005年6月)

高平 高輝
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