第212回:「メルセデス・ベンツAクラス」に試乗 そうとう良くなってます!が……
2005.06.02 小沢コージの勢いまかせ!第212回:「メルセデス・ベンツAクラス」に試乗 そうとう良くなってます!が……
■すんごくマトモ
新しくなった「メルセデス・ベンツAクラス」、やっと乗ってきました。週刊誌の撮影で借りたんでね。そしたらすんごくマトモになってたんで驚き!
まずは乗り心地だよね。旧型の妙なカタさ、発表当時のエルクテスト対策というか、“ベンツらしさ”を出そうとするあまりに締め上げられたような感触がなく、自然にソフト。感覚的にはCクラスよりも若干ユルい感じか。
それから感心したのはステアリングフィール。ベンツ初という電動パワステなんだけど、これまた非常に自然。ベンツらしい適度なフリクションとしっかり感がナイスです。
あとはCVTだよね。これまたベンツ初の技術らしいけど、加速中、CVT特有の不自然な回転の高まりは全然感じないし、エンジンブレーキにしても我が愛車、MINIコンバーチブルのようなギクシャクは一切ない。総じて非常によくできてます。さすがはベンツ。
■ベンツとしての価値はあるのか?
が、ここからは一転翻ってちょっと辛口、っていうか「ないものねだりのボヤキ」かな。ふと、これって“メルセデス・ベンツ”として乗る価値があるのかな? と思ってしまいました。
なんていうかね。フツーに良くなればなるほど「これだったらゴルフでいいんじゃん!」っていう思いがこみ上げてしまうのだ。
たしかにスタイリングはどっからみてもメルセデスそのものだし、旧型より洗練されている。フロアのサンドイッチ構造は相変わらず衝突安全性が高そうだし、シートはコンパクトカーのわりにしっかり作ってある。ボディサイズのわりにノーズが短く、リアシートやトランクが広いのもわかる。ベンツ製の“プチブランド車”としては立派に役目を果たしているでしょう。
でもね。「メルセデス・ベンツ」というブランド名から一部が勝手に抱くであろう「圧倒的ななにか」はないのだ。乗り心地にしても小さいクルマならではのピッチング、つまり前後のゆれは結構あったし、左右のゆさぶりもそれなり。「クラスを超えた超絶フラット感!」ってほどじゃない。ステアリングフィールもたしかにいいけど、「これぞメルセデス」っていう圧倒的な剛性感や「FR車顔負け」ってほどの味わいはない。
スタイリングも横からみた感じはいいけど、正面からの迫力は逆に落ちた気がする。インテリアもよりオーソドックスに質は高くなったが、旧型の方が個性的で良かった部分もあるし。
ってなわけで、ベンツならではの“感動”は逆に薄れた部分もあるのだ。
■もっとデキるんじゃない?
でね。たしかに「ないものねだり」ではあるんだけど、それなりの根拠もあって、それは、ほかならぬ愛車「MINI」の存在。MINIにはCVTのギクシャクなど欠点もないことはないが、圧倒的なBMWらしい走りがある。マジメな話、最初乗った時は「これ、FRじゃないの?」と思ったほどだし、インテリアはデザインにしろ、質感にしろ、新しいし圧倒的。ほかのどのクルマにも似てないし、なおかつ完全にコンパクトカーのレベルを超えている。最初にBMWが手がけたFF車として、「とことんやったろうかい!」 って作った感じがする。
それにくらべてAクラスは、たしかにベンツクオリティはクオリティなんだけど、「こんなもんか?」って作った気がするのだ。それは具体的にはCクラスと比べるとわかりやすくて、室内スペースは同程度ぐらいありそうなんだけど、乗ると「やっぱりCクラスのが全然いいわ〜」となる。
なんつーかAクラス、ヒエラルキーの一番下にくるべくしてつくられた気がするのだ。理想的にはだよ、Sクラスオーナーが見ても、「へぇ、ベンツもこんなの作れるんだ、小さくて便利だし、一回乗り換えてみよっかな?」と思えるものも作れたんではあるまいか。わからんけど。
ってなわけで俺は個人的にはAクラスは「やればもっとデキたんじゃない?」と思うんですけどね。
(文と写真=小沢コージ/2005年6月)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
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