フォルクスワーゲン・ゴルフGTI(DSG)【ブリーフテスト】
フォルクスワーゲン・ゴルフGTI(DSG) 2005.05.25 試乗記 ……360万6750円 総合評価……★★★★ 『GTI is back』のキャッチコピーを従えて、かつての栄光を取り戻すべく、新型となった「ゴルフ GTI」。不安と期待を胸に、自動車ジャーナリストの生方聡が試乗した。尖らずグレードアップ
新型「ゴルフGLi」オーナーの私にとって、一日も早く乗りたい気持ちが半分、乗って後悔するのが怖いという気持ちが半分の「GTI」ブリーフテストである。
結論からいえば、もしも私がゴルフを買うときにGTIがラインアップされていたら、きっとGTIを選んだだろう。ゴルフのなかでGTIは最も魅力あるモデルだと思うからだ。
全域でトルキーで扱いやすく、しかも自然吸気のように気持ちよく吹けあがるパワーユニット、トルコン型オートマチックに引けを取らないくらい洗練された動きをするDSG、毎日乗っても我慢しないですむ乗り心地、そして、スペックや装備を考えるとむしろ安いと思わせる価格設定など、GLiのオーナーとしては悔しいほどの内容をGTIは誇っていたのだ。
しかし、GTIが特別なモデルかというと、私はそうは思わない。派手なフロントマスクを与えられてはいるが、尖った部分はなく、バランスよくグレードアップが図られたという印象である。
それは、裏を返せばベースモデルの完成度の高さを物語っているわけで、GLiオーナーの私としては、なんだかホッとした。現実問題としては、GLiからGTIに乗り換えることは難しいが……やはり心のどこかで「買い換えたいなぁ」と思っている私である。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
「ゴルフV」上陸から1年を経て導入された、ゴルフのスポーティスペシャルモデル「GTI」。“スポーツ回帰”という意味か、復活をアピールしたいからか、新型のプレスリリースには「GTI is back.」のキャッチコピーが踊る。
外観の特徴は、GTI史上初という専用フロントマスク。蜂の巣状の専用グリルを囲う赤いフレーム、グリルとバンパーのエアインテイクを一体化させたかのような意匠が、アグレッシブな面構えを形成する。
インテリアは、赤白ラインのチェックがあしらわれたファブリックシート、アルミのGTIロゴプレート付きのレザーステアリングホイール、専用メータークラスターなどが配され、スペシャル感を煽る。
メカニズムは基本的に先行発売された最上級「GTX」(367.5万円)と同じ。2リッター直噴エンジンにターボチャージャーを装着した「T-FSI」ユニットは、先代1.8リッター直4ターボ比で50psもパワーアップし、200ps/5100-6000rpm。28.6kgmの最大トルクは1800から5000rpmの間で発生する。
トランスミッションは6段MT、あるいはVW自慢の2ペダル6段MT「DSG(Direct Shift Gearbox)」。リッター13km(6MT仕様、DSGは12.6km)の燃費もセリングポイントだ。
サスペンションは、前マクファーソンストラット、後4リンクをベースに、25mmローダウンされ、専用チューニングが施されたもの。スプリング、ダンパーをハードにし、リアスタビライザーは20%剛性アップが図られた。
17インチの専用アルミホイールを履き、最高速度235km/h(6MT)というパフォーマンスにあわせ、16インチのブレーキシステムを搭載する。
(グレード概要)
GTIの外観は専用フロントマスクのみならず、カラードサイドモールや前後スポイラーでドレスアップ。GTXより若干簡略化されるとはいえ、フルオートエアコンはもちろん、CD&10スピーカー付きオーディオ、キセノンヘッドランプなど、快適装備にはこと欠かない。スポーティスペシャルならではの装備として、初代GTIを彷彿させるチェック柄ファブリックスポーツシートや、GTI専用メータークラスターによる演出も忘れない。ちなみに、オプションでレザーシートが選べる。
【車内と荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
見慣れたゴルフ(GLi)の眺めとはちょっと違ったGTIのインテリア。専用のステアリングホイールやシフトレバー、ヘアライン仕上げのアルミ調パネル、ダークグレーのルーフライニングなどがスポーティな雰囲気を盛り上げる。
メーターパネルも専用デザインで、通常はメータークラスター全体がプラスチックのカバーで覆われているが、このGTIでは、速度計、回転計、燃料系、水温計の大小4個の丸型メーターそれぞれにカバーが施されている。実はコレ、初代ゴルフGTI(前期型)のメーターをイメージしたもの。シンプルで見やすいデザインはあくまでフォルクスワーゲンのスタイルだ。
スポーティグレードとはいえ、装備に抜かりはなく、CDプレーヤー+10スピーカーやオートライトシステム、レインセンサー付フロントワイパーに加え、フルオートエアコンやキセノンヘッドライトも標準装着となる。これで336万円という本体価格はとても戦略的。同じエンジンを搭載する「アウディA3スポーツバック2.0 TFSI」はつらい立場に追いやられそうだ。
(前席)……★★★★
初代ゴルフGTIに憧れた人なら涙してしまいそうな演出が、ファブリックシートの柄だ。黒をベースに赤とグレーのチェックがなにやら懐かしい雰囲気のこのデザインは、やはり初代ゴルフGTIのシートデザインを再現したもの。オプションのレザーシートもいいが、私なら迷わずファブリックシートを選ぶ。
このスポーツシートは、クッション、バックレストともにサイドサポートが大きく張り出しているが、乗り降りの邪魔になることはなく、それでいて、コーナーを攻めるような場面ではしっかりとドライバーの体をサポートしてくれるのがうれしい。
★が4つなのは、当然付いてくると思っていた「パドルシフト」が付いてなかったから。ステアリングから手を離さずにシフト操作ができるこの装置は、マニュアルシフト時はもちろんのこと、Dレンジで走行中に一時的にシフト操作ができ、エンジンブレーキをかけるような場面では実に重宝するのだ。2005年秋以降はパドルシフトが搭載されるというから、「いますぐDSGのGTIがほしい」というのでなければ、秋まで待つのもひとつの手だ。
(後席)……★★★
日本で販売されるのは、ワンメイクレース用の「ゴルフGTIカップカー」を除き、すべて4ドア仕様になる。2ドアと4ドアの両方が用意されるのが理想だが、需要を考えると4ドアのみのラインアップになるのはやむをえないし、反対に2ドアだけでは困る人も多いだろう。私も“4ドアでよかった派”のひとりだが、おかげでリアの乗り降りがラクなだけでなく、リアへのチャイルドシートの取り付けや子供の乗降も苦にならない。ISOFIX対応チャイルドシートの固定バーも標準で装着されている。
後席は、他のゴルフ同様、大人が乗っても十分なだけのレッグスペースとヘッドルームが確保されている。乗り心地も、家族から文句が出ないレベルを保っているが、加速時の排気音がやや大きめなのが気になる点だ。
(荷室)……★★★
他のグレードと同じように前輪駆動を採用するGTIでは、ラゲッジスペースがリアデフなどによって侵食されることなく、十分なサイズを確保している。リアシートは分割可倒式で、トランクスルー機構も備わっている。
荷室の下には、最近増えてきたパンク修理キットではなく、テンポラリースペアタイヤが収まっている。リアパーセルシェルフの裏にはネットが備わるが、これはGTIと「GTX」だけの装備となる。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★★
2リッターターボとDSGの組み合わせはすでにGTXに搭載ずみだが、その完成度は非常に高い。
シフトレバーをDレンジに入れ、右足をブレーキペダルから離すと、パワートレインからキャビンに一瞬わずかな振動が伝わった後、エンジンはアイドリング回転数を保ったままゆっくりと前進を始める。そのマナーのよさはあきれるほどで、私よりも上手にクラッチをミートするDSGに嫉妬すら覚える。
そこからアクセルペダルを奥まで踏み込むと、1500rpmあたりから豊かなトルクが湧き出すターボエンジンは、一気に回転を上げ、あっというまに6700rpmまで達するや即座に2速へシフトアップ。他の2ペダルマニュアルに見られるシフトアップ時の空走感やシフトショックは皆無である。回転計の針は4800rpmに落ちるが、加速は止まることなくふたたびシフトアップ、気がつくと速度は100km/hに到達していた。
旧型のゴルフGTIに搭載されていた1.8リッターターボもトルク豊かなパワーユニットだったが、この2リッターTFSIのほうが断然スムーズで、しかも高回転域の伸びは段違いに気持ちのイイものである。
静粛性も高く、100km/hを6速2300rpmで巡航中のキャビンは実に平和な空間。ただし、おかげで225/45R17タイヤが発するロードノイズが気になってしまうのだ。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
標準モデルよりもスプリングやダンパー、スタビライザーを強化したGTIのサスペンションは、基本的にはやや硬めの乗り心地であるがガチガチに固められている印象はない。試乗車に装着されるコンチスポーツコンタクト2のおかげもあって、スポーツモデルとしては十分に快適なレベルが確保される。17インチのタイヤとホイールの組み合わせも、ドタバタする感じはない。
高速道路では、路面の状況により細かい上下動を伴うこともあるが、フラット感は十分。きわめて高い直進安定性もゴルフGTIの名に恥じない。目地段差を越えたときのハーシュネスは巧みに遮断するが、首都高速のやや大きめの目地段差ではショックを伝えてくることもあった。
ワインディングロードを走った印象だが、タイトコーナーでは、ノーズの重さも災いして、シャープに向きが変わる軽快感に乏しく、アンダーステアが顔をのぞかせる。その一方で、箱根ターンパイクのように高速コーナーが続く道路では、まさにオンザレールのハンドリングを示し、ロールの安定感も手伝って、コーナーを抜けるスピードは自ずと高まっていった。クイックなハンドリングを期待すると裏切られるが、そもそもGTIが目指したのはハンドリング命のクルマではなく、アウトバーンでのヒエラルキー向上。そのあたりは買う側が理解しておけばいい話だ。
(写真=峰昌宏)
【テストデータ】
報告者:生方聡
テスト日:2005年5月18日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2005年型
テスト車の走行距離:4453km
タイヤ:(前)225/45R17(後)同じ(いずれもコンチネンタル スポーツコンタクト2)
オプション装備:VWマルチメディアステーション(24万6750円)
形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2):高速道路(5):山岳路(3)
テスト距離:246.0km
使用燃料:30.5リッター
参考燃費:8.1km/リッター

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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