BMW330i(6AT)【試乗記】
エンジンだけじゃ選べない 2005.05.13 試乗記 BMW330i(6AT) ……776万2750円 7年ぶりにフルモデルチェンジされた、BMWの主力モデル「3シリーズ・セダン」。3リッターモデルの「330i」に、自動車ジャーナリストの生方聡が試乗した。病みつきになるエンジン
いきなり本題にはいるが、この6気筒エンジン、病みつきになるほど気持ちがいい。BMW330iに搭載されるのは、その名のとおり、3リッター、正確には2996ccの排気量を有するストレート6。BMW伝統の心臓部は、新3シリーズへの搭載にあたって、マグネシウム−アルミニウム合金を採用したクランクケースをはじめ、カムシャフト、エグゾーストマニフォルド、シリンダーヘッドカバーといったパーツの軽量化を図るとともに、バルブトロニックやダブルVANOS、3ステージ式共鳴過給吸気システム(DISA)などを採用。最高出力258ps/6600rpm、最大トルク30.6kgm/2500−4000rpmを発生する新世代エンジンに生まれ変わったのである。
その存在を忘れられては困るとばかりにアイドリングからキャビンに侵入してくるエグゾーストノートは、BMW330iがヤル気満々のスポーツサルーンであることを主張しているかのようだ。
さっそくシフトレバーをDレンジに導き、スロットルペダルに載せた右足をわずかに踏み込むと、1550kgのボディは軽くスーっと前に押し出された。大排気量のエンジンらしく、2000rpm前後の低回転ですら力強い印象で、涼しい顔で街乗りするには格好の性格だが、もちろん、このエンジンの見せ場はもっと上の領域にある。
右足にさらに力をこめると、2500rpmを超えたあたりから勢いづいたエンジンはみるみる逞しさを増し、ピークトルクを発生する4000rpmを超えてもなお体感上は衰えを見せず、4500rpmを過ぎて“咆哮”と呼ぶにふさわしい勇ましいサウンドを響かせながら、レブリミットの7200rpmまで一気に吹け上がる。それでいて荒々しさが微塵もないのがBMWのストレート6なのだ。
この官能的なエンジンフィーリングを体験してしまうと、もうスロットルペダルを踏まずにはいられない!
すんなり受け入れられたエクステリア
そんな“武器”をノーズ下に収めているとは思えないほど端正なエクステリアが、個人的には好印象。ことデザインに関しては好き嫌いの問題なので、押しつけがましいことはいえないが、現行の7シリーズに始まった新しいBMWのスタイルに、私はどうしても馴染めなかった。
しかし、新しい3シリーズのエクステリアはBMWらしい表情を保ちながらも、“えぐさ”を抜いた比較的コンサバなスタイルになった。“目立たない”という意見もあるが、ふだんの生活のなかで乗るには、このくらいがちょうどいいのかもしれない。
ただ、1815mmという全幅は素直に受け入れられなかった。確かに後輪駆動、縦置きエンジンというレイアウトを活かして、最小回転半径は5.3mに抑えてはいるが、狭い道を通る際や、狭い駐車スペースにクルマを停めておく場合など、「ちょっといやだなぁ……」と感じる場面は確実に増えると思う。
しっくりしない足まわり
そしてもうひとつ気になったのが、330iの足まわりだ。試乗車はオプションのスポーツサスペンションや、18インチタイヤなどが装着されないノーマルの状態。しなやかな動きのサスペンションには好感が持てるのだが、225/45R17サイズのランフラットタイヤが、路面の荒れをキャビンに伝えるとともに、試乗コースの西湘バイパスではハーシュネスの遮断も不十分だった。
そのまま箱根ターンパイクに進むと、今度はエンジンパワーとタイヤのグリップに対して、足まわりが負けている印象で、コーナーではロールスピードやロールの大きさが目立ってしまう。素直なハンドリングは認められるものの、期待していたほどシャキッとした感じはない。
残念ながらオプションのスポーツサスペンションを試すことはできなかったが、少なくともこのノーマルサスペンションはしっくりしなかった。
いまは熟成待ちか
その点、直列4気筒を搭載する320iはバランスがいい。ありあまるトルクこそないものの、エンジンは十分なパワーを発揮するし、205/55R16タイヤを装着した足まわりは快適さを手に入れている。
330iに搭載されるエンジンの魅力には後ろ髪を引かれるけれど、ノーマルの足まわりのまま乗るのであれば、私ならもう少し熟成を待ちたいところだ。エンジンの魅力よりも、新しい3シリーズの魅力を満喫したいのであれば、320iという選択の方がいいと思う。
(文=生方聡/写真=峰昌宏/2005年5月)

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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