ランドローバー・ディスカバリー3(4WD/6AT)【試乗速報】
悩みが増えるかも? 2005.05.10 試乗記 ランドローバー・ディスカバリー3(4WD/6AT) ……789万円 ランドローバーにとってはフォード傘下となって初めてのモデルとなる「ディスカバリー3」が日本に上陸した。「プレミアム性」を向上させたニューモデルの、オン/オフロードでの実力はいかほどのものか、『NAVI』編集委員鈴木真人が速報する。「シティ派SUV」に白旗?
昨年10月にスコットランドの国際試乗会に参加したとき、「ディスカバリー3」のアシンメトリーなリアスタイルを見ていて、日本の軽自動車みたいだな、と思った記憶がある。なにしろ雄大な風景をバックにしているのでスケール感が狂い、ディメンションの似ている背高スタイルの軽に見えてしまったのだ。半年ぶりに再会すると、これはなかなか立派なボディではないか。シンプルな面で構成されたエクステリアは、むしろ「レンジローバー」よりも都会的な趣をたたえている。
「ステップドルーフ」を受け継いだことで、一目でディスカバリーであることは見て取れるのだが、アシンメトリーなリアゲートがモダンな色を強く主張している。そう、先代はここにスペアタイヤが背負われていたのだった。いかにも「ピュアオフローダー」という空気を発散していたのに比べると、ディスカバリー3は「シティ派SUV」の隆盛という現実に白旗を掲げてしまったのかと勘ぐってしまうかもしれない。しかし、ソフトな外見とは裏腹に、このクルマは悪路走破力の面では何も妥協していないのだ。
プロと素人の差を縮小
試乗会ではオフロードコースも用意されていたのだが、それほどハードな設定ではなかったこともあって、まったく汗をかく場面はなかった。きついバンクや洗濯板状の路面があり、前が見えないほどの急坂を上り下りするのだが、普通にアクセルを踏みステアリングをまわすだけで何事もなく走れてしまう。拍子抜けしてしまうほど簡単だ。
ディスカバリー3の大きなウリは、「テレインレスポンス」と呼ばれるシステムだ。ロータリースイッチを操作するだけで、適切な走行モードを選ぶことができる。通常走行、雪面や砂利、泥と轍、砂、岩という5つのプログラムがアイコンで示されていて、状況に合わせて選ぶだけで自動的に最適な制御が行われる。具体的にいうと、エンジンマネージメント、ギアボックス、エアサス、ブレーキ、DSC、デフロック、HDC(ヒルディセント・コントロール)を統合して制御するのだ。オフロードのプロと素人の差は、確実に縮小されることになる。
レンジをしのぐ性能も
オンロードの性能は、もちろん大幅に向上した。今では、オフロード車であることをオンロードでの快適性が低いことの言い訳にすることは許されない。モノコックとボディフレーム構造を融合させたという「インテグレイテッドボディフレーム構造」と、前後ともに採用されたダブルウィッシュボーン式サスペンションによって、オンロードでのハンドリングは目を見張るほど向上した。
また、ジャガーに搭載される4.2リッターエンジンを拡大した4.4リッターV8エンジンのスムーズさも大きな恩恵をもたらしている。しかも定評のあるZF製6段ATが組み合わされることによって、「プレミアム感」を醸し出す乗り味に仕上がっている。
こうなると、フラッグシップのレンジローバーとの位置づけにどう差をつけていくのかが大きな課題となってくる。静粛性やスポーティさでは、レンジをしのいでいるとも言えるのだ。
そして、価格も大幅にアップしたので差は小さくなった。ディスカバリー3は3列シートの7人乗りなので、大人数で移動する機会の多い人は迷わずにすむ。ウッドとレザーでしつらえられた英国の贅の空間を優先するならば、レンジローバーを選べばいい。ディスカバリー3のインテリアは、いくぶんビジネスライクなものだからだ。いやしかし、実はオプションの「ウォールナットフェイシアキット」でインパネを木で覆うことだってできる。プレミアムSUVファンにとっては、悩みが増えてしまったのかもしれない。
(文=NAVI鈴木真人/写真=荒川正幸/2005年5月)

鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
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