トヨタ・ヴォクシーZ(CVT/4WD)【ブリーフテスト】
トヨタ・ヴォクシーZ(CVT/4WD) 2005.01.18 試乗記 ……353万4300円 総合評価……★★★ 2004年8月にマイナーチェンジを受け、力強いイメージが強調された、トヨタのミニバン「ヴォクシー」。そのスポーティグレードの「Z」に、『NAVI』編集委員の鈴木真人が乗った。「不良」だってミニバンに乗りたい
CMに反町隆史を起用していることでわかるように、「ヴォクシー」は「かっこいいお父さん」が乗るというイメージを打ち出している。兄弟車の「ノア」のCMは山本太郎とはしのえみのコンビだから、それに比べるとファミリーっぽさよりも、父と子という男同士でちょっと不良を気取るのが狙いなのだろう。
ミニバンというと、かつてはお父さんが家族の犠牲になって運転手を引き受けるという情けないシチュエーションが浮かんだ。しかし、いくらクルマ購入時のイニシアティブを母親が握っているからといって、お父さんだっていつまでもへらへら笑ってはいられない。運転するお父さんがかっこよく見られることを意識したモデルが登場するのはいいことである。
ミニバンがこれだけ市民権を得れば、様々なバリエーションが求められるのは必然である。平和な家族愛に満ちた男だけがミニバンに乗るわけでもなく、昔ならばクーペに乗っていたかもしれないドライバーだって7人乗り、8人乗りを選ぶ時代なのだ。その前提には、このジャンルの成熟がある。商用車ベースの「タウンエースノア」「ライトエースノア」の頃は、クルマ好きの目からはどうしたって悲哀を帯びて見えたが、運動性能や乗り心地の面で目覚ましい進歩を遂げたことが「かっこいいお父さんのミニバン」というコンセプトを実現させたのだといえる。
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【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
2001年11月、タウンエース・ノア/ライトエース・ノアの後継として、3列シート8人乗りのミニバン、ヴォクシーとノアが誕生した。商用車をベースとしたFRからFFの新設計プラットフォームに変更され、まったく別のクルマに生まれ変わった。2004年8月にマイナーチェンジを受け、フロントグリルやリアコンビネーションランプなどの意匠を変更。よりスポーティなイメージを強調している。
また、トランスミッションを4段オートマチックからSuper CVT-iに変更し、ナビゲーションシステムと連動するNAVI・AI-SHIFTも設定している。環境面では、「平成17年基準排出ガス50%低減レベル」および「平成22年度燃費基準+5%」を達成している。
ベーシックな「X」とスポーティな「Z」があり、さらに2列シート5人乗りで荷室容量を増やした「TRANS-X」の3グレードがある。それぞれに、FFと4WDが設定されている。エンジンはすべて2リッター直噴の1AZ-FSE型となっている。
(グレード概要)
ディスチャージヘッドランプ、フォグランプを装備し、インテリアではスポーツメーター、メタル調のインパネなどが標準となるスポーティなグレードがZ。フロントグリルはブラックメッシュで、リアスポイラーとマフラーカッターが専用パーツ。シートもトリコットではなく、精悍なイメージの布が使われている。デュアルパワースライドドアは、標準では装備されていない。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
センターにモニターが宙づりになり、その後ろにメーターが覗く意匠は、ちょっとスペースシップっぽい。子供の受けがよさそう。モニターまわりにスイッチ類が集中し、メーターが奥に位置することによって光の影響を受けず視認性が高まるなど、結果的に使い勝手がいい。
テスト車には「ブラインドコーナーモニター」が装備されていて、狭い路地から顔を出すときに左右の状況を確認できるようになっていた。収納スペースは天井から座席の下までちょっとでも隙があれば用意され、とても全部使いこなせないほど。
(前席)……★★
シートはそれほど大きいわけではない。そのおかげで左右の座席の間には広い空間があり、2列目へのアクセスが容易である。乗り込むときはどこかに手をかけて体を持ち上げる必要があるが、運転席からの視界は広くて良好。葉山で海沿いの狭い路地に迷い込んだが、それほどプレッシャーを感じずに運転できた。
(2列目シート)……★★★
「ヴォクシー・シアターシステム」がオプションで装備されていたテスト車では、天井から下がっている9インチモニターを間近に見られる2列目は特等席だ。2:1分割式のシートの肉厚はまあまあといったところで、真ん中の席でなければ不満はない。
(3列目シート)……★★
ヘッドルーム、ニールームの余裕は大きく、閉塞感はない。さすがにシートの薄さは気になるが、荷室が空いていればかなりリクライニングさせることができるのが救いとなる。
(荷室)……★★
フル乗車での荷室容量はミニマム。サードシートを倒し、サイドに跳ね上げると広大な空間ができる。ただし、たたんだシートをフックで固定するには少々コツと力を必要とする。
【ドライブフィール】 運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★
エンジンはまわして音を楽しむ類いのものではないが、CVTの躾けがよいせいか、2リッター4気筒でも非力さは感じない。高速道路ではまったくストレスなく流れに乗って走れた……のは、一人乗車だったからで、8人フル乗車ではやはりつらいだろう。
このZのグレードには7段の「スポーツステアシフトマチック」が付けられていて、ステアリングのボタンでシフトを操作することができる。左右ともにステアリングの表にあるのがシフトダウン、裏がシフトアップになっていて、右がアップ、左がダウンという昨今の方式に慣れているとちょっと戸惑うが、下り坂などでエンジンブレーキを積極的に使いたいときなどには重宝する。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
冬期ということでスタッドレスタイヤを履いていたが、四駆機構も含めてその実力を試す機会はなかった。逆に、街路や高速道路でそれらが格段のマイナス要素を見せることもなかった。コーナリング時に大きなロールを感じることもなく、ミニバンに乗っているという事実を意識する時間はほとんどなかった。悪い路面では足下がバタつくようにも感じられたが、ボディ全体で吸収してしまって座席までは嫌な振動を伝えてこない。2列目はもちろん、3列目でも乗り心地に不満はなかった。
(写真=高橋信宏/2005年1月)
【テストデータ】
報告者:鈴木真人(NAVI編集委員)
テスト日:2004年12月21〜23日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2004年型
テスト車の走行距離:2302km
タイヤ:(前)195/65R15(後)同じ(ブリヂストン・ブリザックREV01)
オプション装備:H∞-TEMS(7万3500円)/VSC&TRC(8万4000円)/音声案内クリアランスソナー(バックソナーレス)(4万2000円)/デュアルパワースライドドア(10万5000円)/前席SRSサイドエアバッグ&前席SRSカーテンシールドエアバッグ(7万3500円)/<ヴォクシー・シアターシステム>G-BOOK対応DVDボイスナビゲーション付ワイドマルチAVステーション+NAVI・AI-SHIFT付(53万1300円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行形態:市街地(6):高速道路(4)
テスト距離:206km
使用燃料:27.85リッター
参考燃費:7.4km/リッター

鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
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