トヨタ・マークX 300Gプレミアム(6AT)/250G“Sパッケージ”(6AT)/250G“Lパッケージ”(6AT)【短評(前編)】
ベストセラーの若返り作戦(前編) 2004.12.06 試乗記 トヨタ・マークX 300Gプレミアム(6AT)/250G“Sパッケージ”(6AT)/250G“Lパッケージ”(6AT) セダン市場が低迷著しい。トヨタを代表するセダンのひとつ、マークIIも「マークX(エックス)」と名を改め、新しい歴史を刻み始めた。スポーティセダンを標榜する新型に、自動車ジャーナリストの生方聡が乗った。悩めるセダン
「この新型ではオーナーの平均年齢を下げたいと思っています」――セダンの試乗会に行くと、必ずといっていいほど耳にするセリフである。そう、セダンが抱える共通の悩みがオーナーの高齢化問題だ。
長い伝統を誇るわりに、若い人が運転する光景を目にすることが多い「マークII」といえども、その例に違わない。実際、マークXの先代にあたる9代目マークIIではオーナーの平均年齢が58歳だったという。
トヨタはマークXオーナーの平均年齢を、40代後半から50代前半まで下げようと目論んでいる。しかし、ミニバンの使い勝手のよさや、ステーションワゴンの広さ、SUVの余裕、あるいはハッチバックの高効率などを知ってしまったこの年代をセダンに引き戻すのはなかなか容易ではない。
とはいうものの、セダン回帰への糸口がまるでないわけでもないと思う。たとえば、セダンの持つフォーマルな雰囲気は他のスタイルとは比較にならないし、スポーティな走りは、いまやセダンが得意とする部分である。そこで、平均年齢を下げたいマークXが選んだのが、スポーティ路線というわけだ。
もうひと工夫ほしいエクステリア
マークXはコンサバティブなラクシャリーサルーン「クラウン」とプラットフォームを共用するが、その外観は趣がことなる。マークXの場合は、フロントとリアのオーバーハングを切りつめ、ルーフラインを低く抑えるデザインを採用し、スポーティなイメージとなった。もちろんこういった工夫は、クルマの回転中心から離れた部分の重量を減らすことになるから、実際の走りっぷりにも大きく影響を与えるはずだ。
加えて、フロントバンパーからエンジンフードに流れる立体的なラインや、三連丸目のヘッドランプが精悍なフロントマスクをつくりあげている。カタログ写真では盛り上がりが目立つエンジンフードも、すれ違ったり、ルームミラーに映る姿を見るかぎり違和感はない。
ただ、ヘッドランプやトランクの形状が最近のBMWを思い出させるし、グリルの印象もアウディやVWに近い感じがして……。もうひと工夫ほしい、というのが正直な感想である。
インテリアは意外にすっきりまとめられており、落ち着きある印象を与えている。シフトレバー付近のパネルやトリムの質感は高く、ブラインドのように閉じるエアコンの吹き出し口も高級感を高めている。エレクトロマルチビジョンを取り囲むように配される半透明パネルの“浮いてる”感じには馴染めなかったが……。(後編につづく)
(文=生方聡/写真=高橋信宏/2004年11月)

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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