トヨタ・マークX 250G Four(5AT)【ブリーフテスト】
トヨタ・マークX 250G Four(5AT) 2004.12.02 試乗記 ……304万5000円 総合評価……★★★ 2004年11月9日、フルモデルチェンジを果たしたトヨタ「マークX」。生まれ変わった上級セダンはどうなのか。2.5リッター四駆モデルに、別冊『CG』編集室の道田宣和が乗った。
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オジサンを変える?
トヨタの張社長は発表会の会場で記者の質問に答えて、現在17%のセダン比率を25%くらいに高めたいと言った。事実、その後の受注状況は好調で、発売から2週間の時点ですでに1万台を超えたという。セダンの復権は本物か?
「マークII」から「マークX」へ。ついこの前まで日本の保守本流としてオジサンたちに寵愛されたトヨタの上級パーソナルカーは心機一転、ベースをひとまわり大きな新型クラウンと共用しつつ、足腰を鍛えてヨーロッパ車風ツアラーへと変身した。なるほど、第一印象はこれがマークIIの後継車かと疑わせるほどの硬派な乗り心地。脱アメリカンテイストの大きな流れがついに日本の深奥にまで及んだと言うべきだが、この乗り味、果たしてオジサンたちがついてこられるものかどうか?
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
デビューは1968年で、「コロナ・マークII」として誕生した。その後「コロナ」がとれて「マークII」となり、10代目となった今回のフルモデルチェンジで「マークX」と名を改めた。9代目は「プログレ」をベースにしていたが、「マークX」はクラウンと同じアーキテクチャーを採用する。2850mmのホイールベースやエンジン縦置き/後輪駆動、前ダブルウィッシュボーン/後マルチリンクという構成は同じ。それでいて、全長×全幅=4730×1775mmというディメンションは、それぞれ110mmと5mmちいさい。エンジンはV6 2.5/3リッターの4GR-FSE/3GR-FSE型と、チューンまで含めてこれもまったく同一。バリエーションはシンプルで、250G、同Four(4WD)、300G、同プレミアムの4種。あとはそれぞれに「Fパッケージ」「Lパッケージ」「Sパッケージ」が適宜組み合わされる。
(グレード概要)
4WDモデルは3リッターエンジン搭載車には用意されず、四駆が欲しい場合の選択肢はこの「250G Four」のみとなる。センターデフ+電子制御式湿式多板クラッチ機構が採用され、通常時は前30:後70の駆動力配分だが、路面や運転の状況に応じて連続的に制御が行われる。2WDモデルと違い、組み合わされるトランスミッションは5AT。車両重量は通常モデルの60kg増し。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
テスト車はトヨタのプレスカーにしては珍しく一切の注文部品が付いておらず、車載のメモには文字どおり、「オプション価格=ゼロ円」とあった。そのせいもあって、ダッシュボードを前にして座ってみると格別のスッキリ感に包まれているのが好印象だ。頻繁に使うオーディオ(ステアリングスイッチ付き)やエアコンが胸元のレベルで操作できるのもいい。
(前席)……★★★
スペース的には充分だし、たっぷりしたサイズのシートはよく見ると“スエード調ファブリック”が要所要所でパターンを変えてあり、なかなか凝っている。位置の調整は前2席ともオールパワー。ステアリングにはチルト/テレスコピックも備わり、自由度の幅は文句ない。ただし、それでもなお時々姿勢を変えたくなるのはなぜなのか? もしかしたら、RWDにもかかわらず身体とステアリングとペダルの関係が微妙にオフセットしているのかもしれない。
(後席)……★★★★
さすがはクラウン・ベース、「ドライバーズカー」を自称しながら実態はやはりこの部分の改善が最も大きく、後席住人はその恩恵をフルにエンジョイできる。電動フロントシートを奢ったせいでクッションの下に爪先が入らないとか、ちゃんと正座すると頭髪が緩やかに下降している天井後端ぎりぎりになるとか、若干の指摘はできるが、総じてこれまでとは比較にならないくらいの余裕があるのは事実である。
(荷室)……★★★
ゴルフバッグがシューズその他とともにきっちり4セット収まるというのが自慢らしい。そのため、リッドの裏にはわざわざご丁寧に積み方まで書いてある。確かに、広さと奥行きは充分以上。ただし、4WDのせいか床面そのものは思ったより低くないし、VDA法で437リッターの容量も第一級というわけではない。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
動力性能はRWDに比べて60kg重いこのクルマでもまったく不足を感じない。踏めば6500rpmのリミットまで力強く加速する一方、市街地の大人しい走行ではものの40km/h台にして早くもトップの5速(シリーズ唯一の5AT、他グレードはすべて6AT)に入る。つまりパワフルにして柔軟なのだ。ところが、フィーリングとなるとまた話は別。音質は回せば回すほどベーッと濁ってくるし、オートマチックとの関連制御もイマイチなのか手動でシフトダウンすると抵抗を示すかのように瞬間、軽いショックに見舞われる。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
新型になってからのクラウン同様に、いやそれ以上に乗り心地、特に低中速でのそれは硬い。その代わり、まるでヨーロッパ車そのもののように、高速(それもかなりの高速だ)ではフラットで節度ある素晴らしい乗り心地に変化する。問題は硬さがそのまま硬さとして伝わること。今日では控えめなサイズのタイヤを履くにもかかわらず、時としてバネ下のマスが感じられたり、微小な上下動が看取されるからだ。コーナリングは終始安定し、マナーも自然。ただし、電動式のパワーステアリングは切り始めに特有の渋みがあり、そのぶん損をしている。ポテンシャルは高そうなので、今後どう煮詰めていくかが楽しみだ。
(写真=荒川正幸/2004年11月)
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【テストデータ】
報告者:道田宣和(別冊CG編集室)
テスト日:2004年11月18日〜11月24日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2004年型
テスト車の走行距離:1620km
タイヤ:(前)215/60R16 95H(後)同じ(トーヨーPROXES J33)
オプション装備:--
形態:ロードインプレッション
走行形態:市街地(6):高速道路(4)
テスト距離:463km
使用燃料:66.6リッター
参考燃費:6.9km/リッター

道田 宣和
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