第53回:枯れゆくブナの山、檜洞丸(その2)(矢貫隆)
2004.11.06 クルマで登山第53回:枯れゆくブナの山、檜洞丸(その2)
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■足はもちろん
テーマが大気汚染なのだから、移動の足に使うのは、もちろん「トヨタ・プリウス」である。『webCG』編集部が長期リポート車として使用しているプリウスは、2003年9月にフルモデルチェンジしたもので、スタイリングも大きさも旧型とは大きく違っていて、いざ運転してみると、その走りっぷりもまた、まるで違うものだった。
走り出してすぐに広くなった室内にビックリし、それよりも仰天したのは高速道路に入ってからだった。とにかく直進安定性のよさが、旧型とは比較にならないのである。1997年に発売された旧型のプリウスに対して、僕が抱いていた印象は、“知的なタウンユース”だったのだけれど、現行モデルからは、“タウンユース”という表現を外さなければならないと思った。
というわけで、とにかく僕はプリウスがえらく気に入り、そして“知的な登山者”になった気分に浸りながら東名高速を、一路、御殿場インターへと向かったのだった。
檜洞丸へは、東名道の大井松田インターか御殿場インターを降り、そこから30分ほどの道のりでしかない。東京からは日帰りが簡単にできる山で、しかも周辺には温泉が多くある。日帰り登山で帰りは温泉。もっともお気楽登山が可能な山のひとつと言っていい。
丹沢湖を過ぎれば、あとはもう一本道。僕たちは、ひたすら西丹沢のキャンプ場を目指す。ここがクルマで行ける終点であり、檜洞丸の登山口でもある。
相変わらず小雨は降り続いていたけれど、そして担当編集のA君の表情も相変わらず冴えなかったけれど、僕はうきうきしていた。
雨に濡れたブナの森を歩く。それは僕が何年も前から計画していた憧れの登山のひとつだったからである。(つづく)
(文=矢貫隆/2004年11月)

矢貫 隆
1951年生まれ。長距離トラック運転手、タクシードライバーなど、多数の職業を経て、ノンフィクションライターに。現在『CAR GRAPHIC』誌で「矢貫 隆のニッポンジドウシャ奇譚」を連載中。『自殺―生き残りの証言』(文春文庫)、『刑場に消ゆ』(文藝春秋)、『タクシー運転手が教える秘密の京都』(文藝春秋)など、著書多数。
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