メルセデスベンツS500(7AT)【ブリーフテスト】
メルセデスベンツS500(7AT) 2004.10.04 試乗記 ……1176万円 総合評価……★★★ スリーポインテッドスターのフラッグシップにして、多彩なラインナップを誇る「メルセデスベンツSクラス」。7段ATを与えられた「S500」は、街を行く高級車の代表といえるサルーンだが、自動車ジャーナリストの金子浩久はある疑問を感じた。
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“500”の意義
「メルセデスベンツSクラス」のラインナップ中、「S500」は、「S350」と「S430」の上、ロングホイールベースボディの「S500L」と「S600L」の下に位置する。ノーマルボディのSクラスにおいて、日本においてS500は“最高”といえよう。
だが、試乗を終えて、S500を選ぶ理由を、実際のユーザーに訊ねてみたくなった。S350では物足りず、しかし、S500L&S600Lを選ぶほどではないクルマの使い方、乗り方とはどんなものなのか。
もちろん、S500は高級かつ高性能な4ドアセダンとして、なんの不足も不満もない。だが、S500が可能でS350に不可能なこととは、いったいなんだろう? ヨーロッパのように、200km/h近い高速で何時間にもわたって走り続けるような乗り方をすれば、到着時間やドライバーの疲労度に明確な違いがあらわれるはずだ。とはいえ、そんな道路は日本にない。
“とにかく最高のベンツが欲しい”という人には、500万円以上の価格差があるとはいえ、シリーズで唯一V型12気筒を積むS600Lがある。そこまでいかなくとも、100万円弱を追加して、より広くラクシャリーなS500Lを選ぶ手もある。
「ひとりでも多くのお客様のニーズに応える」というメーカーの使命は理解できるのだが、“S500ならでは”の強固な商品性を感じることはできなかった。
繰り返しになるが、Sクラスの有する大型セダンとしての素質の高さは、S350も等しく備えている。最高のものが欲しければS600Lに食指が動くだろう。
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【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
1998年のパリサロンでデビューしたメルセデスベンツのフラッグシップ。2002年11月18日に、グリル、ランプまわりなど、外観を小変更。クルマが危機的状況に陥ってから実際の事故に至るまでのわずかな間に、シートベルトのテンションを高め、必要なら助手席のシート角度を正し、またガラスサンルーフが開いている場合はこれを閉めて横転時に備える「プレセーフ」機能を搭載した。そのほか、「S350」のV6エンジンが3.2から3.7リッターに拡大され、「S600L」では、5.8リッター(NA)に替わって、5.5リッターV12ツインターボが採用された。また、「S430」に「4MATIC」こと4WDモデルが用意された。
2003年11月、5リッターV8を積む「S500」「SL500」(そして「E500」)のトランスミッションに、“市販車では世界初”を謳う7段AT「7G-TRONIC」を採用。多段化により、滑らかなシフトと加速性能の向上が図られた。
(グレード概要)
AMG仕様を除けば、ノーマルボディのSクラスでもっともエライ「S500」。「ナッパレザー」のシート表皮、電動スライディングルーフが標準装着されるなど、一部に上級S600Lと同じ装備が与えられる。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
ありとあらゆる装備が備わるのだが、スイッチ類が多すぎて、煩雑に感じる。BMWの「iDrive」が完璧だとは考えないが、もうすこしスイッチ類を整理できないだろうか。運転と各種操作に応じてスイッチ類を配したとは思えないところもあり、かつてのメルセデスベンツとの違いを感じてしまう。また、スイッチ類に使われている素材が、1000万円を超えるクルマとしてはプラスチック然としすぎている。安っぽいのだ。このぐらい高価なクルマならば、部品の共用化は眼に見えないところだけで済ませて欲しいと思う。
(前席)……★★★
シートポジション調整代が幅広く、同時にノッチがきめ細かいので、あらゆる体型のドライバーの要求に応えられる。だが、ブレーキペダルが著しく右に寄っているので、腰から下が右にヒネられる不自然な運転姿勢をとらされる。右ハンドル化によって、スロットルペダルが左に寄りすぎるという例は何台も知っているが、ブレーキペダルが右過ぎるというのは珍しい。大型ボディで、小型車よりはペダル配置については比較的自由度が大きなはずなのに、どうしたことだろう。
(後席)……★★★★
ボディの大きさから想像されるだけの車内空間はきちんと存在している。頭上も足もとも、後席の乗員がくつろぐのに必要な空間は十二分に確保されている。居眠りしようが、ノートパソコンで仕事をしようが、狭いと感じることはまずないはずだ。ただし、背もたれがリクラインしないことと、時と場合によっては後頭部が直射日光にさらされることが残念だ。運転席から開閉できる電動ブラインドが備わってはいるが、なろうことなら屋根の長さと後席乗員の位置関係を吟味することによって、明るさを確保しつつ頭上周辺を十分な長さの屋根によって覆って欲しい。開放感があるのは好ましいが、高級大型セダンというクルマの性格を考えれば、後席乗員にはもうすこし“護られている”感覚が与えられるといい。
(荷室)……★★★★★
VDA方式で462リッターというトランク容量は、ロングボディ版の“L”モデルをも含めたSクラス各車共通の値だ。大人4人の数日間分の荷物を飲み込むのに十分、開口部も広いので出し入れしやすい。トランクリッドを強く叩きつけなくてもモーターでロックする、標準装備の「クロージングサポーター」も便利だ。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
5リッターV8は306psと46.9kgmのトルクを発生するが、数字どおりの迫力を期待しても肩すかしを喰らう。エンジンは必要なときに必要なだけのパワーを出し、あくまでも縁の下の力持ちに徹していて、出しゃばることはない。
優れているのは、新たに採用された7段ATだ。「ティップシフト」と呼ばれる、メルセデスベンツ特有のシステムは、Dレンジでもシフトレバーを左右にスイングすることによってマニュアルシフトできる。変速は瞬時で、シフトショックも皆無だ。100km/hでのエンジン回転数は、7速では1500rpmとなる。6速では1800rpm、5速では2200rpm。100km/hでの7速と6速の違いは体感でき、燃費の向上が果たされているだろう。しかし、その効能をより大きく享受できるのは、100km/hよりはるか先の速度域ではないだろうか。
(乗り心地+ハンドリング)……★★
S500は、ダンパーの減衰力を「ノーマル」「スポーツ1」「スポーツ2」と3段階に変えることができる。しかし、「スポーツ1」でも舗装の目地を拾い、「スポーツ2」では明らかに硬すぎるように感じた。目地や繋ぎ目を越えると、ビシッ、バチッという反応が返ってくる。強いていえば「ノーマル」がもっとも快適だったが、他の要因でベストの乗り心地は感じることができなかった。
他の要因というのは、ダンパーの硬さや路面、速度の如何を問わず、つねに床とボディがブルブル、ワナワナ震えることだ。タイヤの上下動が振動となってボディに伝わり、常に揺すられている。剛性に関する数値的なスペックはともかく、かつてのメルセデスベンツが誇った強固なボディ剛性を感じることができず、残念だ。
(写真=清水健太/2004年10月)
【テストデータ】
報告者:金子浩久
テスト日:2004年4月15日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2003年型
テスト車の走行距離:9643km
タイヤ:(前)225/60R16(後)同じ(いずれもコンチネンタル ContiTouringContact)
オプション装備:--
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2):高速道路(5):山岳路(3)
テスト距離:--
使用燃料:--
参考燃費:--

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