BMW 120 i (6AT)【試乗記】
FRのアドバンテージ 2004.10.01 試乗記 BMW 120 i (6AT) ……474万2300円 ヨーロッパにおける“コンパクトセグメント”は、代表格「VWゴルフ」をはじめ、「オペル・アストラ」や「プジョー307」といった強豪ひしめく熾烈な市場。そんな激戦区に、“BMW臭さ”全開で投入された「1シリーズ」に、自動車ジャーナリストの生方聡が乗った。まさに“プレミアムコンパクト”
「BMW 1シリーズ」の特徴としてまずあげられるのは、このクラス唯一のフロントエンジン、リアドライブ、いわゆるFRレイアウトを採用したことだ。このセグメントにかぎらず、いまやFRは少数派。であるにもかかわらず、コンパクトクラスにFRを持ち込むとは、BMWもなかなか思い切ったことをするものである。
もちろんそれは、BMWらしさを前面に押し出すための戦略である。
だからBMWが1シリーズに持ち込んだ“BMWの文法”は、FRだけではない。たとえば、日本仕様に装着されるオートマチックは「5シリーズ」と同じ6段タイプだし、フロントに採用されるダブルジョイントのマクファーソンストラットも5シリーズや「7シリーズ」譲り。ここでは触れないけれど、搭載される装備もクラストップレベルである。
このことからも、サイズとシリーズ名は小さいけれど、BMWは1シリーズをたんなるエントリーモデルと位置付けているわけではないことがわかるだろう。事実、バリエーションによっては1シリーズのほうが「3シリーズ」のコンパクトハッチ「ti」より価格が高く、高性能なケースもある。まさに1シリーズは“プレミアムコンパクト”を名乗るにふさわしいクルマなのだ。
ところで日本には、エンジンの排気量/性能が異なる3つのタイプが導入される。1.6リッターエンジンを積む「116i」、2リッターエンジンを積む「118i」と「120i」だ。118iと120iは同じエンジンブロックを用いながら、チューンの違いで、前者は129ps、18.4kgm、後者は150ps、20.4kgmと性能に差がつけられている。価格は116iが288万8000円、118iが324万5000円、120iが366万5000円。価格もまたプレミアムである。
120iを試す
このうち、今回試乗できたのは最上級版の120iのみだった。他のグレードは、2005年1月頃に導入されるという。
1シリーズを生で見るのはこれが初めてだが、丸型4灯式のヘッドランプとキドニーグリル、ロングノーズ/ショートオーバーハングなど、噂どおり、エクステリアは一目でBMWとわかるデザインである。一方、インテリアは素っ気ないほどシンプルだが、スポーティな印象をうまく盛り上げている。
さっそく、オプションのレザーシートが装着された試乗車に乗り込む。フロントウィンドウが低く、天井も低いからやや圧迫感はあるが、そのぶん、クルマと人との一体感が強い。兄貴分と同じリモートコントロールキーをキーホルダーにセットし、スタートボタンを押すと、エンジンが目覚めた。
2リッターで150psという最高出力は、特に驚くほどの数字ではない。とはいえ、走り出してみると、バルブトロニックとダブルVANOSを備えるこのユニットは、低い回転からレブリミットの6500rpm付近まで、豊かなトルクを発揮することがわかった。バランサーシャフトのおかげで回転もスムーズ。5000rpmを超えたあたりからは、ドライバーを鼓舞するかのように、勇ましい排気音がキャビンを包み込む。ただ、高回転域ではトルクの落ち込みがないものの、レブリミットを一気呵成に目指すというタイプではない。
“駆け抜ける歓び”を実感
1シリーズの身のこなしだが、乗り始めてすぐさまFRらしい軽快さを体感できた。乗り心地はやや硬めだが十分快適なレベルであり、ランフラットタイヤによる乗り心地の悪化は最小限に抑えられている。
残念ながら、私が試乗した日は悪天候に見舞われ、ワインディングロードを気持ちよく飛ばすことはできなかったが、ロールを抑え、軽快感溢れるコーナリングマナーの一端を確認することはできた。
一方、雨や横風の強い悪条件下での高速走行では、FFのようなスタビリティは望めず、また、フラット感ももうすこしほしいところだ。
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コンパクトセグメントの活性化
走り以外の部分では、このクラスとしては標準的なサイズのラゲッジスペースが確保されているのは評価できる。
一方、リアシートは、頭上のスペースが不足気味で、ホイールベースが長い割にはレッグルームも十分とはいえない。さらに、中央部のフロアトンネルが盛り上がっているため、リアシートで左右に移動するのが面倒だ。このあたりはFRという駆動系のレイアウトやスポーティなエクステリアデザインによるもので、“どうしてもFR”という人にとっては、これしきの事は我慢できるのだろう。
短時間の試乗だったが、コンパクトカーとしての1シリーズの実力の高さを確認することができた。しかし、新型「VWゴルフ」をはじめ、FRに優るとも劣らないハンドリングを持つFF車がたくさんあることを考えると、FRを採用することが、けっして大きなアドバンテージにならないのも事実。それだけに、実力派揃いのライバルに対して1シリーズが明らかに優位な立場にあるとは思えない。
今後、市場におけるライバルとのバトルが気になるところだが、1シリーズの参入がコンパクトセグメントの活性化に貢献することは、確実である。
(文=生方聡/写真=峰昌宏/2004年9月)

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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