ポルシェ911アニバーサリーエディション(6MT)【試乗記】
感心と期待 2004.08.04 試乗記 ポルシェ911アニバーサリーエディション(6MT) ……1273万250円 1963年のフランクフルトショーでデビューした「ポルシェ911」の40周年記念モデル「アニバーサリーエディション」。自動車ジャーナリストの河村康彦が雨の箱根で試乗して、感じたこととは?
拡大
|
拡大
|
拡大
|
あくまでさりげない
「なんていいクルマなんだろう!」
ドシャ降りに見舞われた箱根路を、可能なかぎりのアップテンポで駆け抜けていたら、天気とは裏腹に気持ちは段々晴れ晴れとしてきた。そんな心地よい時を味わわせてくれたのは、「ポルシェ911」の「アニバーサリーエディション」。911の生誕40周年を記念した、世界でわずか1963台しか生産されない特別仕様車だ。ぼくが乗ったクルマは、シリアルプレートに「0152」というナンバーが打たれていた。希少な1台だ。
他モデルでは、「カレラGT」にのみ設定されるという「GTシルバーメタリック」に彩られたボディは、「ターボ」「カレラ4S」譲りのワイドフェンダーバージョン。大型インテーク付きフロントバンパーや、「GT3」由来のサイドスカートとポリッシュ仕上げの18インチホイール、そして「40Jahre」ロゴ入りの専用リアエンブレムなど、いくつかのアイテムでドレスアップされる。とはいえ、一見して“それ”とわかるほどの違いはない。
インテリアも、専用アイテムを“さりげなく”採用した。アルミニウムルックのメーターリング、ダッシュボードのトリムストリップ、ボディ同色に塗られたセンターコンソールやパーキングブレーキレバーなどだ。知らなければ知らないですみそう(?)な演出ではあるが、いつもと同じ空間に慣れた911オーナーなら「オッ!」と声をあげそうな品々である。
前出のシリアルナンバーが打たれたプレートも、シフトレバー前方のコンソール部分に、あくまで控えめに貼り付けられる。ドアを開けると目に入る「911」の文字入りスカッフプレートが、専用デザインであることを見抜くファンがいるかもしれない。
飛び道具!?
1速ギアをチョイスし、いつものように気持ち重めのクラッチペダルをエンゲージしながら、アニバーサリーエディションのアクセルペダルを踏み込む。かつての空冷ユニットを偲ばせる、ちょっと“破裂音”的な逞しいエグゾーストノートは、2001年のマイナーチェンジで「バリオカム」を与えられた911の特徴だ。
大きな荷重を受け持つ後輪にエンジントルクが伝えられると、911はなんの神経質さも示さず、スルスルと動き出す。ドライバーの神経細胞内を走る電気信号がそのままクルマへと伝達されたかのような、ポルシェ車ならではのこの瞬間が、ぼくは大好きだ。
2輪駆動にもかかわらず、ウエット路面でアクセルペダルをフルに踏んでも、不安のないトラクションが得られる。「さすが911! RRレイアウトの面目躍如」……と思ったら、実はこのクルマには、さらなる“飛び道具”(!?)が付いていた。
アニバーサリーエディションのスペシャル装備として、駆動側22%、減速側27%のロッキングファクターを持つというLSDが標準装着されるのだ。ちなみに、サスペンションは標準カレラ比で10mmのローダウン仕様である。ステアリング操作に対するダイレクト感は、“いつもの911”に輪をかけてダイレクト。そうでありながら、乗り心地がほとんど損なわれていないのが嬉しい。つまり、18インチシューズを完璧に履きこなしているのだ。
“いいクルマ度”アップ
しばらく走ると、今度は試乗車の心臓が、いわゆる“当たり”の個体ではないか?と思った。回転フィールが全般に軽やかで、特に高回転域にかけての“抜け感”が、普段にも増して優れていたからだ。
が、これにも「秘密」があった。40周年記念車のフラット6は、吸気側カムプロフィールを変更するなどのライトチューンを施し、最大トルクはノーマルと同じ37.7kgm(発生回転数は4250rpmから4800rpmに上昇)ながら、最高出力がプラス25ps(こちら発生回転数は変わらず6800rpm)となる、345psへと高められたのだ。
0-200km/h加速16.5秒、最高速度290km/hのパフォーマンスはGT3に準ずるというが、率直にいって、動力性能はノーマルと大差ない。パーシャルスロットル域なら、「明確には実感できない程度」にとどまる。前述のように、さりげない好フィールを生み出したチューニング、といってよいだろう。911が持つ“いいクルマ度”を、さらに高めたことは間違いない。
「いつ」「どこで」乗っても、改めて感心させられる911。アニバーサリーエディションもその例に漏れない。
だが、996型と呼ばれる現行モデルを新車で乗れるのも、あとすこし。ポルシェ本社は2004年5月、次期911「997型」の公式写真を発表、欧州では7月に発売されたという。ニュー911は、一体どのようにして、かくも完成度の高い996型を凌ぐのだろうか?
……そんな期待を抱かせるのも、911ならではである。
(文=河村康彦/写真=佐藤俊幸/2004年8月)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
-
レクサスES350h(FF/CVT)/ES350e(FWD)/ES500e(4WD)【海外試乗記】 2026.6.3 「レクサスES」がフルモデルチェンジ。シャシーがFFベースというのは歴代モデルと同じだが、新型ではボディーサイズがググッと拡大。「LS」の6輪ミニバンコンセプトが登場したこともあり、今後のレクサスセダンの総代を担うことになる。北米で乗った印象をリポートする。
-
BSAゴールドスター650(5MT)【レビュー】 2026.6.2 かつて一世を風靡(ふうび)した英国の名門、BSAが復活! 新生第1号モデルである「ゴールドスター650」は、クラシックで優雅なお散歩バイク……と思いきや、ツインカムの大排気量シングルで、ライディングも前のめりに楽しめるマシンに仕上がっていた。
-
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(4WD)【試乗記】 2026.6.1 「ホンダCR-V」がフルモデルチェンジ。新型は適切なボディーサイズと高品質な内外装を持ち、乗れば最新のホンダ車らしい気持ちよさが味わえる。ただし、その月販目標は400台。ちょっと弱気ではあるものの、周辺事情にも考えを巡らせると極めて妥当な数字にも思えてくる。
-
トヨタRAV4 GRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】 2026.5.30 新型「トヨタRAV4」のプラグインハイブリッド車ではEV走行換算距離が約150kmにまで到達。もちろん電池容量の拡大によるところも大きいが、何よりも最新のハイブリッドシステムによる効率向上が効いている。「GRスポーツ」をドライブした印象をリポートする。
-
キャデラック・リリックV(4WD)【試乗記】 2026.5.29 キャデラック初の電気自動車(BEV)「リリック」に、最高出力646PSのハイパフォーマンスモデル「リリックV」が登場。“ブランド史上最速”をうたう豪速SUVだが、実際に乗ってみると、高い動力性能がもたらすゆとりや心地よさにも魅力を感じる一台となっていた。
-
NEW
あの多田哲哉の自動車放談――三菱デリカミニTプレミアム DELIMARUパッケージ編
2026.6.5webCG Movies三菱の軽スーパーハイトワゴン「デリカミニ」が多くの人に支持される理由は、個性的なルックスだけなのか? トヨタでさまざまなクルマを開発してきた多田哲哉さんが、人気の秘密に迫る。 -
NEW
ホンダ・インサイト(FWD)【試乗記】
2026.6.5試乗記「ホンダ・インサイト」が電気自動車(BEV)として復活! ……というよりは中国工場製BEVにその名が与えられて日本にやってきた。さまざまな事情により、国内で販売されるのはわずか3000台のみ。日本人は“限定”に弱いとされるが、果たしてこの場合はどうか。 -
NEW
KTM 990 RC R(6MT)
2026.6.5JAIA輸入二輪車試乗会2026今年も開催された「JAIA輸入二輪車試乗会」より、魅惑のバイクを一挙紹介! 先陣を切るのは、この4月に発売されたばかりの「KTM 990 RC R」だ。オーストリアの雄が放つ最新鋭のスーパースポーツは、意外や“速さ”以外にも見どころの多い一台だった。 -
NEW
空冷の「スポーツスター」が復活!? ハーレーダビッドソンの定番商品はどんなバイクとなるのか
2026.6.5デイリーコラムハーレーダビッドソンが、一度は廃止した空冷の「スポーツスター」の復活を発表! 伝統の一台はなぜ絶版の憂き目にあい、そしてよみがえることとなったのか? ファンに愛される定番車種を刷新する難しさと、新型に課せられた使命、そして課題を考察した。 -
第290回:商用バンで砂漠を行く親子が向かうのは天国か地獄か 『シラート』
2026.6.4読んでますカー、観てますカー失踪した娘を探して親子はモロッコの砂漠へ。砂漠で開催されていたレイブパーティーが最高潮に達した頃、軍隊がやってきて中止させられる。親子が乗るFFの商用バンは次のパーティー会場にたどり着けるのか……。 -
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(前編)
2026.6.4あの多田哲哉の自動車放談ひさびさに日本市場に戻ってきた、ホンダを代表するSUV「CR-V」。最新世代の仕上がりを、トヨタの車両開発者だった多田哲哉さんはどう評価する? まずは、ワインディングロードを走らせた第一印象から。



































