ボルボXC70ブラックサファイア(5AT)【ブリーフテスト】
ボルボXC70ブラックサファイア(5AT) 2004.06.18 試乗記 ……540万7500円 総合評価……★★★★ ボルボのクロスカントリーワゴン「XC70」に、都会的なイメージを狙った特別仕様車「ブラックサファイア」が限定発売された。自動車ジャーナリストの笹目二朗が、装備と走りをチェックする。
![]() |
引けをとらない実力派
この「ブラックサファイア」と呼ばれる200台の限定車には、専用のブラックメタリックのボディカラーのほか、ブラッククローム仕上げの専用アルミホイール、オフブラックの本革シート、ブラックメッシュアルミパネルをもつ内装、バイキセノンヘッドランプ、フォグランプ、スキッドプレート、パワーシート(ドライバー側)、革巻きシフトノブなどの特別装備品を備える。実質72万円のアップに対して10万5000円のエクストラで販売される。これはたしかにお買い得車である。
本格的SUVである「XC90」の登場でやや影の薄くなった感もあるが、「XC70」は実質的な走行内容においては引けをとらない実力派である。外観は他の「V70」とそれほど変わらない。どちらかと言えば地味目の扮装ながら、一番ボルボのエステートらしい魅力を備えている。
さらにこれにはブラックビューティと言えるシックに洗練された内外装が与えられた。ハイパフォーマンスモデルの「V70R」ほど走りの性能を求めないユーザーにとっては、もっとも魅力的なボルボワゴンか。
![]() |
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
ボルボの上級ステーションワゴン「V70」の4WDモデルをベースに、地上最低高を215mmとして、オフロード走破性を高め、クロスカントリー仕様としたのが、「V70XC(クロスカントリー)」。2003年モデルから「XC70」と名称が変えられた。ハルデックス電子制御オール・ホイール・ドライブ+トラクション・コントロールを採用する。エクステリアでは、ボディと色違いのバンパー、サイドプロテクター、オーバーフェンダーが特徴。内装でも、ステッチが目立つ専用シートやコンソール上のハンドグリップなどが与えられる。
(グレード概要)
2004年5月25日に200台限定で発売されたのが「ブラックサファイア」。専用ボディカラーの「ブラックサファイアメタリック」を纏い、ブラッククロームのアルミホイールやブラックメッシュアルミパネルで全身を黒に統一した特別仕様車だ。内装には、オフブラック本革シートや本革巻きシフトノブ、ドライバーズ・パワーシート(8ウェイ)などが奢られる。加えて、通常はオプションのバイキセノンヘッドランプ、フロントフォグランプ、フロントスキッドプレートも標準装備される。
右ハンドル、5段ATのみで、価格ベース比10万5000円高の540万7500円。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)…★★★★
ここまでブラック処理すると厭味の領域に入りやすいが、これはメーター縁の細いリングや綺麗な数字、線、そして盤面のゆるやかな凹凸など洗練された処理により、見やすく落ちつける。「R」より大人のクルマを感じさせる。インパネ全体のつくりも、初期モデルより量産効果により精緻で上質感を増し、より高級に見える。ステアリングオフセットなどなければ星5つ、V70シリーズ中のベストか。
(前席)……★★★★
表皮は革ながらクッションは適度にソフトで、体重の重みにあった接触面積を得られるタイプ。よくフィットするから、思ったより滑りは気にならない。サイズ的にもたっぷりしている。電動調整機構も適切で、自在にポジションを選べる。XC70は元々目線が高く、低いシート位置からも前がよく見える。同じ理由で乗り降りも自然で楽々。
(後席)……★★★★
革の滑り感はリアシート(背面)の方が大きいが、畳めるタイプのシートにしては底付き感はなく腰の納まりはよい。前席よりやや高めに座るため、前も比較的よく見え阻害感はない。Cピラーは立ち気味で邪魔にならないし、Bピラー付け根の太さや敷居の高さなど、思ったほど気にならず乗降性もいい。ヘッドクリアランスも十分。
(荷室)……★★★★
床面積は広大。ここだけみてもボルボのワゴンづくりの歴史を感じる。サスペンションの張り出しもすくなめで、有効に使える。開口部は大きく、ワゴンらしく垂直近いバックドアゆえ、積み荷もきっちり入りそうだ。さらにこの角度ならば雨の時の屋根にもなる。大きなテールランプは後方からよく確認され、ボルボらしい造形をみせる。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★★
数値上のパワーは209psと低めだが、よく考えられたATギア比と相まって十分にパワフルであり事実上不満なし。ライトプレッシャーターボエンジンはNAのように自然な感覚があり、しかもパワフルだから、大排気量に頼らなくてもこの大柄なボディを活発に走らせる。SUVという、並のワゴンより重装備なはずのボディは1700kgとライバル各車より軽く仕上がっている。マニュアルシフトも楽しめるATは上々の出来。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★★
若干高められた姿勢は視界のよさを提供してくれ、狭くタイトな林道などでも取りまわしに苦労することはない。ノーマルのV70ほど車幅を感じない。ストローク感のあるサスペンションながらロールもよくチェックされ、フラットな乗り心地と軽快な操縦性を両立させている。大柄なボディながらスポーティな運転感覚をもつ。
(写真=峰昌宏)
![]() |
【テストデータ】
報告者:笹目二朗
テスト日:2004年6月11日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2004年型
テスト車の走行距離:863km
タイヤ:(前)215/65R16(後)同じ(いずれもピレリ・スコーピオンSTR)
オプション装備:--
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(5):高速道路(5)
テスト距離:239.1km
使用燃料:23.5リッター
参考燃費:10.2km/リッター

笹目 二朗
-
スズキ・エブリイJリミテッド(MR/CVT)【試乗記】 2025.10.18 「スズキ・エブリイ」にアウトドアテイストをグッと高めた特別仕様車「Jリミテッド」が登場。ボディーカラーとデカールで“フツーの軽バン”ではないことは伝わると思うが、果たしてその内部はどうなっているのだろうか。400km余りをドライブした印象をお届けする。
-
ホンダN-ONE e:L(FWD)【試乗記】 2025.10.17 「N-VAN e:」に続き登場したホンダのフル電動軽自動車「N-ONE e:」。ガソリン車の「N-ONE」をベースにしつつも電気自動車ならではのクリーンなイメージを強調した内外装や、ライバルをしのぐ295kmの一充電走行距離が特徴だ。その走りやいかに。
-
スバル・ソルテラET-HS プロトタイプ(4WD)/ソルテラET-SS プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2025.10.15 スバルとトヨタの協業によって生まれた電気自動車「ソルテラ」と「bZ4X」が、デビューから3年を機に大幅改良。スバル版であるソルテラに試乗し、パワーにドライバビリティー、快適性……と、全方位的に進化したという走りを確かめた。
-
トヨタ・スープラRZ(FR/6MT)【試乗記】 2025.10.14 2019年の熱狂がつい先日のことのようだが、5代目「トヨタ・スープラ」が間もなく生産終了を迎える。寂しさはあるものの、最後の最後まできっちり改良の手を入れ、“完成形”に仕上げて送り出すのが今のトヨタらしいところだ。「RZ」の6段MTモデルを試す。
-
BMW R1300GS(6MT)/F900GS(6MT)【試乗記】 2025.10.13 BMWが擁するビッグオフローダー「R1300GS」と「F900GS」に、本領であるオフロードコースで試乗。豪快なジャンプを繰り返し、テールスライドで土ぼこりを巻き上げ、大型アドベンチャーバイクのパイオニアである、BMWの本気に感じ入った。
-
NEW
トヨタ・カローラ クロスGRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】
2025.10.21試乗記「トヨタ・カローラ クロス」のマイナーチェンジに合わせて追加設定された、初のスポーティーグレード「GRスポーツ」に試乗。排気量をアップしたハイブリッドパワートレインや強化されたボディー、そして専用セッティングのリアサスが織りなす走りの印象を報告する。 -
NEW
SUVやミニバンに備わるリアワイパーがセダンに少ないのはなぜ?
2025.10.21あの多田哲哉のクルマQ&ASUVやミニバンではリアウィンドウにワイパーが装着されているのが一般的なのに、セダンでの装着例は非常に少ない。その理由は? トヨタでさまざまな車両を開発してきた多田哲哉さんに聞いた。 -
2025-2026 Winter webCGタイヤセレクション
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>2025-2026 Winterシーズンに注目のタイヤをwebCGが独自にリポート。一年を通して履き替えいらずのオールシーズンタイヤか、それともスノー/アイス性能に磨きをかけ、より進化したスタッドレスタイヤか。最新ラインナップを詳しく紹介する。 -
進化したオールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2」の走りを体感
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>欧州・北米に続き、ネクセンの最新オールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2(エヌブルー4シーズン2)」が日本にも上陸。進化したその性能は、いかなるものなのか。「ルノー・カングー」に装着したオーナーのロングドライブに同行し、リアルな評価を聞いた。 -
ウインターライフが変わる・広がる ダンロップ「シンクロウェザー」の真価
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>あらゆる路面にシンクロし、四季を通して高い性能を発揮する、ダンロップのオールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」。そのウインター性能はどれほどのものか? 横浜、河口湖、八ヶ岳の3拠点生活を送る自動車ヘビーユーザーが、冬の八ヶ岳でその真価に触れた。 -
第321回:私の名前を覚えていますか
2025.10.20カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。24年ぶりに復活したホンダの新型「プレリュード」がリバイバルヒットを飛ばすなか、その陰でひっそりと消えていく2ドアクーペがある。今回はスペシャリティークーペについて、カーマニア的に考察した。