ボルボXC70 2.5T(5AT)【試乗記】
謙虚なクロスカントリー 2002.12.07 試乗記 ボルボXC70 2.5T(5AT) ……576.95万円 215mmのクリアランス、カラードバンパー&モールがワイルドな、ボルボのクロスカントリーモデル「XC70」。AWDシステムが進化した2003年モデルに、webCG記者が北海道は旭川で試乗した。
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呼び名も新たに
ボルボ「V70 AWD」をベースに、ロードクリアランスが160mmから215mmに拡げられ、ブラックバンパー&モールで“ワイルド&タフ”を演出するクロスカントリー風ワゴン「XC70」。2003年モデルに移行したことを受けて、プレス向け試乗会が北海道は旭川を基点に開催された。通常の公道試乗に加え、4WDの性能を試す雪上特設コースが設定された。
「XC70」と聞いて、アレ? っと思った方は、かなりのボルボ通。これまでは「V70 XC」(クロスカントリー)と呼ばれてきたが、2003年モデルからは「XC70」と名前が変えられた。2002年のデトロイトショー、ジュネーブショーでお披露目された、ボルボ初の本格SUV「XC90」と、呼び名を統一するためだろう。広報担当者によれば、XC90がわが国へ導入されるのは、2003年の6月頃になるそうだ。
呼び名も新たなXC70の2003年モデルは、エンジン排気量を2.4リッターから、ストロークを延長して2.5リッターに拡大。排気側のみだった可変バルブタイミング機構を、吸気側にも装着した「ダブルCVVT」を採用し、9psと3.5kgmアップの最高出力209ps/5000rpmと、最大トルク32.6kgm/1500〜4500rpmになった。最大トルクの発生回転数が300rpm引き下げられたことを主要因に、燃費は8.5km/リッターから9.2km/リッター(いずれも10・15モード)に向上。さらに、ターボエンジン(かつ輸入車)ながら「優ー低排出ガス」に認定されたことで、ボルボの2003年モデルは、AWD使用を含む11モデルが「優ー低排出ガス」、その他4モデルが「良ー低排出ガス」をパスしたことになる。リッパだ。
なおグレードは、ベーシックな「XC70」と、シーケンシャルモード付き5AT「ギアトロニック」が備わる、「XC70 2.5T」の2種類が用意される。
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人畜無害な“ワイルド”
新型は、AWD(4WD)システムが従来のビスカスカプリングから、「S60 AWD」と同じ、電子制御多板クラッチを用いる「ハルデックスユニット」に変更された。通常はフロントを駆動し、前輪の空転を感知して後輪にトルクを伝達するのは、従来の方式と変わらない。ところがハルデックスの場合、そのプロセスがわずか0.005秒、60km/hなら8cm移動する間に行われる。しかも、同じハルデックスユニットを用いたAWDシステムながら、先行して搭載されたS60 AWDの2002年型システムと較べて、よりきめ細かいトルク配分が可能になったという。「第2世代に進化した」というのが、ボルボの主張である。もちろん2003年型のS60も、セカンドジェネレーションのAWDシステムを積む。
XC70は、ベース車のV70よりボディサイズが大きく、全長×全幅×全高=4735(+25)×1860(+45)×1560(+90)mm。使い勝手が考慮され、車高は「多くのタワーパーキングに入る」高さに抑えられた。安定性を高めるためトレッドも拡げられ、1610(+90)/1550(+60)mmとなった。濃い青(ボディ色によっては濃い茶)に着色された樹脂バンパー&モールが、頑強な見た目を演出する。が、けっして下品ではない。インテリアも同様、センタートンネル上のアシストグリップや、クロスステッチの入った大ぶりのシートがタフさを主張するが、ボルボらしい人畜無害な“ワイルド”さだ。
試乗は、北海道で2番目の大都市、旭川の中心近くにある旭川グランドホテルからスタート。12月初頭ということでまだそれほど寒くなく(といっても最低気温は-7℃くらい)、大きな道路には雪も氷もない。雪上コースが設定された、旭川から30kmほどのところにある美瑛(びえい)町までは、普通のロードインプレッションとなった。
1500rpmで最大トルクを発生するエンジンは、1.7トンもあるボディを静かに加速させる。100km/h巡航で2200rpmだからエンジン音はほとんど聞こえず、雪上走行向けに装着されたスタッドレスタイヤ、ミシュラン「DRICE」(215/65R16)のロードノイズが響くだけだ。32.6kgmもある余裕のトルクにより、「D」のままでも大らかな気分でクルージングできる。一方、ギアトロニックを使ってシフトダウンすれば、加速もいい。乗り心地は基本的にフラットライドだが、215/65R16と大きなタイヤサイズゆえか、不整地では足がバタバタし、特に後席では乗り心地がちょっと気になった。雪に覆われた畑(だと思う)や遠くに見える十勝岳を眺めながら、美瑛町に入った。
まるでフルタイム4WD
雪上コースは、グライダー滑空場の一角につくられた、全長600mほどの特設コース。直線とパイロンスラロームが設定される。まだ雪が少なく、コース脇には30cmほど積もっているだけである。リポーターと、同行した自動車専門誌『NAVI』の谷山武士編集部員は雪上運転に不慣れだが、これならコースアウトしても大丈夫(?)と判断。こんなチャンスは滅多にないと、コース上を走りまくった。
“電光石火”のトルク伝達をウリにするハルデックスクラッチの効果は高く、発進時にガバっとスロットルを開けても、まるでフルタイム4WDのように4輪が駆動する。いつ4WDに切り替わったのか、全然わからなかった。
走破性も高そうである。左コーナーでツッコミすぎ、路肩の雪に右前輪が埋もれてスタックしたかと焦ったが、余裕あるクリアランスと、4輪を電子制御するトラクションコントロールシステムにより、アクセルペダルを踏むだけで脱出できた。あ〜、ヨカッタ。
EBD付きABSのおかげで、ブレーキングもラクチン。雪上でもペダルを踏むだけで、ちゃんと止まってくれる。スリップを感知しすぎて(?)、ABSが利きっぱなしでズルズル前に……、なんてことはない。ただし、重量が1.7トンもあるためか、絶対的な制動距離はそれなり。車重が90kg軽い、スタッフカーの「S60 AWD」をお借りして試してみたら、ブレーキングもコーナリングも一枚上手だった。もっとも、S60はスタイリッシュサルーンだけに、最低地上高が雪上では不安。ともすると、ボディ下に雪が詰まって閉口した。
SUVやクロスカントリーが、未舗装路すらほとんどない都会を走る現代において、その価値は「過剰な性能をもっている」という、ユーザーの自己満足だろう。XC70もその点は同じだが、性能は余裕たっぷり、見た目は過剰にすぎない。謙虚にクロスカントリーを主張するのが、ボルボらしくて好感がもてた。
(文=webCGオオサワ/写真=清水健太/2002年12月)

大澤 俊博
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